全国の空き家を訪ねて――オランダ人写真家が撮った「もうひとつの日本」

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(CNN) 日本で社会問題になっている全国各地の空き家をオランダ人の女性写真家が撮影し、このほど1冊の本にまとめた。

外国人が「日本」と聞いて連想するのは漫画やメイドカフェ、ネオンのイメージかもしれない。だがオランダ人のフリー写真家、マーン・リンブルフ氏の目を引いたのはそのどれでもなく、空き家が点在する農村部の風景だった。

同氏が5月に発売した本のタイトルは、失われた世界を意味する「The Lost World」。突然の天災で住人が避難したままの民家や、閉鎖されてしまった劇場などの写真が紹介されている。

日本は世界の中でも人口の高齢化が進んだ国として知られる。若者たちは職を求めて都会へ移り、農村部の維持管理は難しさを増している。さらに地震や台風、福島第一原子力発電所のような事故が原因で、多くの土地が荒廃していく。

政府は2014年に出した報告書の中で、このままのペースだと全国で900前後の村や町が消滅すると警告した。

一部の地方は深刻な空き家問題を解決しようと、民家を無料で譲り渡しているが、それで空き家問題が解決するわけではない。

イタリアなどで外国人に対して安価に提供される空き家にはよく査証(ビザ)や滞在許可証が付いているが、日本の場合はそうもいかない。外国人は日本語を話せなかったり、車が使えなかったりするケースも多く、そうなると空き家を修繕しながら住みたいという希望者を見つけるのは難しい。

オランダ中部ユトレヒト在住のリンブルフ氏は、恋人の男性とともに日本を訪れ、毎回3週間ずつ滞在してきた。観光客はほとんど足を踏み入れないような場所を、レンタカーでめぐった。

リンブルフ氏は日本の農村部と「恋に落ちた」と話している。行く先々の村で、住民から「なぜこんな所にいるの」「最寄りの観光地はここから35キロ。よろしければ地図を描きましょうか」と声を掛けられた。日本のもうひとつの面を見るのは本当に楽しかったと、同氏は振り返る。

小さい村を回り始めてみると、そこには必ずといっていいほど空き家や廃墟があった。

リンブルフ氏が日本に親しみを感じる理由のひとつは、生まれ故郷のオランダを思い出すからだという。どちらの国も外国人に冷たく、必ずしも歓迎ムードではないといわれるが、同氏の意見は違う。どちらの国でも、自分がそこの人々に本気で関心を示せば、相手は心を開いてくれるという。

もちろん田舎ならどこも同じというわけではなく、その違いは空き家に表れている。北海道では多くの人が家を出る前、戸締りや雨漏り防止の作業に時間を費やした跡がみられるのに対し、住人があわただしく避難した福島のような例では、茶わんが出ていたりテレビがコンセントにつながったままだったりする。

かつて劇場だった建物はお気に入りのひとつだ。舞台装置や衣装、照明もそのままで、役者たちは今昼休みを取っているだけ、いつ戻ってきてもおかしくないと思わせる。

小さな家の壁に飾られた家族の写真を見て、ここの住人に一体何が起きたのだろう、どうして出て行かなければならなかったのだろうと、思いにふけってしまうこともある。

訪問先には十分に敬意を払っているつもりだ。10代のころから数えて、これまでに計10回ほど日本を訪れてきた。「The Lost World」は単なる写真集ではなく、同氏が敬愛する日本という国へのオマージュだ。

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