上海からニューヨークまでわずか2時間? 中国が極超音速旅客機の開発競争に参戦

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ヴァージン・ギャラクティックは2020年に最初の試験飛行を成功させた

ヴァージン・ギャラクティックは2020年に最初の試験飛行を成功させた

コンサルティング大手アクセンチュアのグローバル航空宇宙・防衛産業の幹部、ジョン・H・シュミット氏は、CNNに対し、「宇宙旅行はまだ新しい分野で、億万長者向けだ」としたうえで、「宇宙旅行のコストが劇的に下がり、富裕層を超えた幅広い層の手に届くまでには、かなりの時間がかかるだろう」との見方を示した。

中国が極超音速旅客機の開発に向け準備

そこで登場するのが、新たな市場機会を特定して規模を拡大し、消費者価格の引き下げにたけている中国である。

中国には、衛星技術、月・火星着陸、惑星間航行、深宇宙探査など、さまざまな取り組みを支援する国家主導のロードマップが存在し、すでに宇宙分野で重要な役割を担っている。

国務院新聞弁公室が発表した白書によると、中国は宇宙経済の目標を強化するための計画を描いており、その中には人間の高速輸送も含まれている。

例えば18年3月、中国は長さ265メートルの風洞を開発中であることを明らかにした。開発は中国科学院の高温ガス動力国家重点実験室が進めており、この風洞は最大マッハ25(時速約3万625キロメートル)で飛行する極超音速機模型の試験を行うことが可能という。

シュミット氏は「極超音速機実現の兆しが見えているかもしれないが、まだごく初期の段階にある。大きな課題のひとつは、この分野では希少なスキルが求められるということだ。各国政府は研究や試験的なプロジェクトに投資して可能性を探り、極超音速機の製造技術を開発中だ」と述べた。

極超音速機による商業旅行の実現性

米航空宇宙局(NASA)は昨年、極超音速機による商業飛行に関する2つの大規模な市場調査の結果を発表した。

1つ目は、NASAの支援を受けてデロイトが行った調査で、超音速による商業飛行の実現可能性を定量化し、巡航マッハ数(2.0~5.5)、乗客数(20、50、100)、飛行距離(約4600~1万6600キロメートル)という主要3変数のあらゆる組み合わせについて、ビジネスケースをモデル化した。

この調査では、高速輸送に対する持続可能な需要は十分にあり、「需要は、定期航空旅客輸送(航空会社のサービス)とプライベートジェット事業(チャーターサービス、ジェットカードまたは会員制モデルを含む)から生まれる可能性が高い」と結論づけた。

分析によると、定期航空輸送サービスの市場への入り口としては大洋を横断する世界の「ドル箱」路線が有力であり、ニューヨーク―ロンドン、マイアミ―サンパウロ、ニューヨーク―パリ、ロサンゼルス―シドニー、シドニー―シンガポールが、超音速フライトにおける最も有望な都市の組み合わせだという。

この報告書では、年間225万人の乗客と165億ドルの収益の可能性を含む90の大洋横断ルートが、対応可能な市場として割り出された。また、航空会社の観点から、「価格が1億4600万ドル以下の高速航空機は、航空会社にとっても個人にとっても魅力的である」と指摘している。

2つ目は、ブライステックとSAICと共同で行ったNASAに関する調査で、マッハ2からマッハ7の速度で将来の需要とビジネスモデルを作り、60年までのプレミアム航空旅行需要を予測。フライト時間を短縮するための支払い意欲を、乗客の所得や資産レベル別に評価した。その結果、300以上の都市の組み合わせにおいて、高速の商業飛行および一般飛行が可能であることが分かった。

時間が最も重要

英国の航空宇宙メーカー、リアクション・エンジンズのアダム・ディッセル社長は「問題は、1日にどれだけ多くの人が喜んでファーストクラスの正規料金を払うのかということだ。3~4倍の速さで移動するために、乗客は2倍の料金を喜んで支払うのだろうか。この比率は重要だ」と話す。

同社は高速機と宇宙船向けに、水素を燃料とする新しい方式のエンジン「複合予冷空気呼吸ロケットエンジン(SABRE)」を開発し、世界の極超音速エコシステムにおいて重要な役割を果たしている。

SABREは、ジェットエンジンの燃料効率とロケットエンジンのパワーと高速性を併せ持つ独特なエンジンで、滑走路から離陸して音速の5倍まで加速できる極超音速機向けに設計されている。

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