その名も「北米のアマゾン」、フロリダの秘境を訪ねる

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フロリダパンサーは絶滅の脅威にさらされている/Alamy

フロリダパンサーは絶滅の脅威にさらされている/Alamy

「北米のアマゾン」の由来

27年間、ファカハッチーで公園専属の生物学者として勤務するマイク・オーウェン氏は、公園内のランや他の熱帯着生植物(他の植物の上に根を張って育つ植物)について幅広い研究を行った後、「北米のアマゾン」というキャッチフレーズを思い付いた。

ファカハッチーに生育する植物の原産地は、アマゾンから中米の熱帯地方、カリブ海地域、そして南フロリダに至る広範囲に分布している。熱帯着生植物が多く生息する最北端の地であることから、オーウェン氏はファカハッチーを「北米のアマゾン」と名付けたという。

またファカハッチーは、47種ものランが生育していることから「北米のランの都」とも呼ばれる。ランの中でも特に有名なのがゴーストオーキッド(幽霊ラン)だ。

ファカハッチーの湿地帯に咲くゴーストオーキッドの花/Rhona Wise/AFP/Getty Images
ファカハッチーの湿地帯に咲くゴーストオーキッドの花/Rhona Wise/AFP/Getty Images

ランを間近で観賞

小ぶりで「幽霊のように白い」ゴーストオーキッドの花は長さ約7.6センチ、幅約5センチの大きさになるが、花が咲いていない時は緑色の根が木に絡み付いているだけなので、発見が非常に難しい。しかし花が咲くと、その自然な美しさと繊細さに目を奪われる。

1977年に発生した異常な寒気の影響で、南フロリダに生育するゴーストオーキッドの大半が枯れた上に、密採者らによってかなりの数が摘み取られた。

オーウェン氏によると、93年以降、ストランドで約500輪のゴーストオーキッドが発見されているという。1本のランが花を咲かせるまでに最長20年かかることもあり、中には複数の花を咲かせるものもある。科学者たちは現在も、ゴーストオーキッドの完全なライフサイクルの解明に取り組んでいる。

ストランドが提供する湿地散策やトラムツアーに参加すると、さまざまな種類のランを間近で見ることができるが、残念ながらゴーストオーキッドが咲いている場所には連れて行ってもらえない。

ゴーストオーキッドはその商業的価値の高さから現在も密採の懸念があり、ストランドではその生育場所を厳重に保護している。

水に体を浸すアリゲーター/Jeff Greenberg/Universal Images Group Editorial/Getty Images
水に体を浸すアリゲーター/Jeff Greenberg/Universal Images Group Editorial/Getty Images

アリゲーターが担う重要な役割

ファカハッチーでパンサーやゴーストオーキッドよりも遭遇する可能性が高いのがアリゲーターだ。

ファカハッチー・ストランドは、いわば浅い、直線状の水路で、長さ約8キロ、幅が約30キロあるが、最も重要なのは60~150センチほどの深さがあることだ。そのおかげで雨季に流れ込んだ水がたまる。「シートフロー」と呼ばれるこの地域全体の水の動きが土地を水で満たし、独特の生態系を作り出す。それにより、外来植物の繁栄が可能になる。

フロリダを訪れる人の大半は、この地域は「平坦」な土地と考えているが、とても平坦だからこそ、人間が感知できないわずか数センチの地面の上昇がこの生態系を可能にする、とオーウェン氏は説明する。

そして、このプロセスにおいて極めて重要な役割を果たしているのがアリゲーターだという。

毎年春になると、アリゲーターたちは沼地の湖の中で動き回り、泥や水を使って体を冷やしたり、蚊に刺されるのを防ぐ。このアリゲーターたちの行動により、湖の深さが通常30~60センチ深くなり、より多くの水がたまるようになる。

その結果、地面が豊富に水分を含んだ状態が持続し、その環境に適した植物が生育し、鳥類を含むあらゆる種類の生物のための新たな生息環境を作り出す。

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