IBMスピンオフ企業、名前は「Kyndryl」 疑問符つく社名の仲間入り

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IBMのスピンオフ企業「Kyndryl」は、奇妙な社名の新たな事例となりそうだ/CNN

IBMのスピンオフ企業「Kyndryl」は、奇妙な社名の新たな事例となりそうだ/CNN

ニューヨーク(CNN Business) 「史上最悪級の名前を持つ企業」の殿堂に新たなメンバーが加わった。その名も「Kyndryl」。

これは、米IBMが中核事業から分離するITサービス部門の現実の名前だ。

分離の影響を受ける従業員9万人は近く、IBMで働いているとはもう言えなくなり(IBMはおそらく最も伝統的で曖昧<あいまい>さのない企業名のひとつだろう)、代わりにKyndrylと言うことになる。Kyndrylは複数の語の一部を組み合わせて作る「かばん語」で、現時点で意味や発音ははっきりしない。

IBMによると、「Kyn」は血縁関係を表す「Kinship(キンシップ)」、「dryl」は植物の巻きひげを表す「tendril(テンドリル)」から来ており、「新たな成長や、当社が常に人類の進歩に向けて取り組んでいるという考えを想起させる」はずだという。

とはいえ、説明したところで事態は悪くなるばかりだ。IBMの論理を基に「キンドリル」という発音だろうと推測することはできるものの、一見恣意(しい)的にYを母音として使っているため、長母音のIと解釈して「カインドライル」と発音する余地も出てくる。

Kyndrylは失敗するブランド名、あるいは少なくとも広く笑われるブランド名の仲間入りをしそうな雰囲気が確かにある。ただ、この分野の専門家からは、あまり笑いものにすべきではないとの声も上がっている。

「新しい社名を考案するのは簡単ではない」。こう語るのは、米コロンビア大のマーケティング教授でグローバル・ブランド・リーダーシップ・センターの所長を務めるベルント・シュミット氏だ。「いい社名の多くは既に使われており、法律で保護されている」

同氏は、最初は奇妙に見えるかもしれない社名でも、やがて消費者に受け入れられる場合があると説明。その例として、「ハーゲンダッツ」は全く意味がない完全な造語だと指摘する。ベル・アトランティックとGTEの2000年の合併で誕生したベライゾンの社名も造語で、最初は眉をひそめる向きもあったが、今や改めて気にする人も少ない確固たるブランドになっている。

ただ、米企業史には疑問符のつくブランディング上の判断が多々あり、消費者を困惑させてきた。命名後すぐに失敗したものも多い。以下に挙げるのは、CNN Businessがまとめたユニークな企業名の一部だ。

トロンク:2016年にトリビューン・パブリッシングに付けられた社名。伝統的なメディア企業が自社を「コンテンツキュレーションおよびマネタイゼーション企業」と位置付ける取り組みの一環だった。こうした流行語と同じく社名も長持ちせず、2018年にトリビューンの名前に戻った。

オース:ベライゾンが米ヤフー(当時買収したばかり)とAOL(当時すでに所有)の資産を保有する目的で設立した子会社の名前。この名前は19年にベライゾン・メディアに変更された。

次に挙げるのは、おそらく変更前の社名ほどの知名度はないが、今なお残っている社名だ。

アルトリア:多角化を目指していたタバコ大手フィリップ・モリスが2002年に採用した社名。

アルタバ:ヤフーの各種事業が売却された後に残った会社の社名。

アカデミ:議論の多い民間軍事企業ブラックウォーターが2度目のリブランディングを図って付けた社名。ブラックウォーターは2007年にイラク撤退を余儀なくされ、09年にいったんXeの社名を試した後、11年にアカデミに改称した。

ステランティス:フィアット・クライスラーと仏PSAグループ(これ自体、プジョーのメーカーに付けられた比較的新しい名前だ)による今年の合併で誕生した企業で、今回のリストの中では新顔といえる。造語の社名は傘下ブランドに比べて知名度こそ低いが、どちらか一方のブランド名を社名に選んで政治的対立が生じる事態は回避した。

ミスを認めて、元の社名に回帰する企業もある。USスチールはマラソン・オイルの買収時にUSXに改称し、再び分離した際にUSスチールに戻した。

フェデラル・エクスプレスは米運送会社の創業時の社名だった。事業領域の広範化を試みた際、社名をティッカーシンボルのFDXに変更したものの、人口に膾炙(かいしゃ)している愛称のフェデックスに戻した。

アルファベットにも同様の現象が起きるかもしれない。グーグルは2015年、同社が最も知名度の高いブランド「グーグル」以上の存在になったことを反映するため、持ち株会社の名称をアルファベットに変更した。ただ、アルファベットは実在する単語ではあるものの、既にグーグルという言葉が広まっていたことから、一般の人に受け入れられるのは難しかった。

シュミット氏は「グーグルは言語の一部になった」と指摘。「すっかり定着しているので、人々がいまだにこの社名を使いたがるのも無理はない」と話す。

同氏によると、最終的には、企業名の成否は企業そのものの成否に左右される部分が大きい。グーグルがBingを圧倒したのは、グーグルという名称がBingよりはるかに優れていたからではなく、実際の製品が市場で勝利したからだ。

「ブランドの成否を最終決定するのは製品だ」と同氏は話し、「社名はほぼお飾りだ。もしグーグルが失敗していたら、今ごろ私たちはこの名前をばかにしていただろう」と語っている。

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