悪名高い黒死病の病原体、何世紀にもわたり生き延びる仕組みが明らかに
「疫病の燃え尽き」
数理モデルは、これが何世紀も前の人類にどのように作用し、腺ペストの発生から約100年後に「疫病の燃え尽き」を引き起こしたかを示唆している。
パンデミックの初期段階では、感染は急速に進み、ネズミと人間の両方にすぐに死が訪れた。その後、徐々に密集していたネズミの個体群が減少すると、選択圧によってpla遺伝子のコピー数が少ない、致死性の低いペスト菌株が出現するようになった。この新しい株に感染したネズミは、病原体を運ぶ時間がやや長くなり、感染させるネズミや人間が増える可能性があった。
しかしこれらの弱い菌株は、最終的に勢いを失い、絶滅した。現代では、ベトナムの標本からわずか3例を発見したのみだ。1例は人間、2例はクマネズミだったという。
ペストのパンデミックが持つ珍しい特徴の一つは持続性だ。ペスト菌がどのように感染パターンを変化させ、長きにわたり生き延びてきたかを理解することで、新型コロナウイルスのような現代のパンデミックの適応パターンを解明できる可能性があるとシドゥ氏は指摘する。「2020年や21年ほど流行してはいないものの、病原体は潜み、今も進化を続けながら残っている」