野生のチンパンジーがハンセン病に感染、初めて確認
(CNN) 野生下のチンパンジーで史上初めて、ハンセン病が確認されたとする研究論文が、13日付の英科学誌ネイチャーで発表され、専門家らを驚かせている。
論文によると、チンパンジーのハンセン病感染例が発見されたのは、アフリカ西部に位置するギニアビサウおよびコートジボワール。またアフリカ大陸において人間以外の動物の感染例が発見されたのも初めてだという。
ハンセン病は人間の神経や皮膚、呼吸器官に深刻な症状を与え得る感染症で、手足の感覚の喪失や失明、皮膚の病変やこぶの進行をもたらす可能性がある。
今回の研究で科学者らは2015年~19年、チンパンジーの行動を研究するためにカメラを仕掛けた。科学者らが映像を調べると、チンパンジーの雄と雌の各2頭から「ハンセン病に似た深刻な皮膚の病変」を発見。人間の場合と同様、症状は時間を経るにつれて進行したという。
論文の共著者の一人で、英エクセター大学で保全科学分野の講師を務めるキンバリー・ホッキングズ氏は14日、CNNの取材に対して「顔面にこぶや病変のあるチンパンジーの映像を最初に目にした際、人間におけるハンセン病の症状とあまりに似ていたため、これはハンセン病だとすぐに思った」と話した。
ハンセン病は以前から、英国に生息するキタリスや米大陸に生息するアルマジロなど、野生下の動物でも確認されてきた。だがホッキングズ氏は、「チンパンジーは非常によく研究されているため、チンパンジーに突然(ハンセン病の症状が)出現」したのを目にして大きな衝撃を受けたという。
野生下のチンパンジーがハンセン病に感染した経緯や、狩猟や生息地の喪失などですでに危機にさらされているチンパンジーにハンセン病が与える影響について、さらなる研究が行われると同氏は述べている。
また「人間におけるハンセン病の治療は、特に早期に診断された場合、比較的容易」だが、野生下のチンパンジーに対するハンセン病の治療については、「難問となり得る」と指摘。「この特定の個体群のように、人間に慣れていない動物の場合、抗生物質の投与は非常に難しい。動物のハンセン病治療への制約があり、チンパンジーに矢を投げることの倫理的な意味についても考慮する必要がある。それゆえ治療は複雑な問題だ」と説明した。