日本のプラ包装文化、レジ袋有料化で終焉の兆し?

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コンビニなどで売られている個包装のバナナ/CNN

コンビニなどで売られている個包装のバナナ/CNN

東京(CNN) 1本のバナナ。ゆで卵。チョコチップクッキー。日本全国のコンビニエンスストアで目にするこれらの商品には共通点がある。どれも決まって、きっちりとプラスチック包装を施したうえで売られているのだ。

そうするのが当たり前になってから、数十年が経つ。

店舗側としては、商品がプラスチック包装されていないとサプライチェーンにおける食品の安全性基準を保証するのが難しくなるのではないかという懸念がある。コンビニ全国チェーンのローソンの広報担当者はそう説明する。

ただ日本がプラスチックに深く依存している事例は、商品の個包装にとどまらない。

全世界で年間5400億枚使用されるプラスチック製買い物袋(レジ袋)のうち、約300億枚は日本の消費者が使っている。日本の人口は英国の2倍だが、レジ袋を使う量は17倍に上る。米国については、両国をはるかにしのぐ1000億枚を毎年使用していると推計される。

割れないように1つずつプラスチック容器に入れられたゆで卵/CNN
割れないように1つずつプラスチック容器に入れられたゆで卵/CNN

2018年の国連の報告によると、日本は国民1人当たりの一般ごみの排出量で大半の先進国を下回る一方、プラスチックごみの排出量では米国に次ぐ世界2位となっている。

日本国内では1991年のリサイクル法施行以来、プラスチックごみ削減の取り組みが続く。同法は、容器や包装をリサイクルする責任が企業にあると規定している。

しかし他国が使い捨てプラスチックとの戦いを数年単位で繰り広げる中にあって、日本の施策は緩やかなものにとどまっているのが実情だ。

それでも状況は変わろうとしているのかもしれない。今月、政府はレジ袋を有料化し、1枚につき3~5円の支払いを義務付ける制度を導入した。英国と米国ですでに見られる動きに沿った形だ。

これはつまり、日本がようやくプラスチックとの深い関係に区切りをつけようとする、その前兆なのだろうか?

7月1日以降、スーパーやデパート、コンビニではレジ袋が有料となった/The Asahi Shimbun/Getty Images
7月1日以降、スーパーやデパート、コンビニではレジ袋が有料となった/The Asahi Shimbun/Getty Images

プラスチックのパワー

日本人のプラスチックに対する強い執着は、1960~70年代にさかのぼる。そう語るのは、ニュージーランド・ワイカト大学の教授で日本の消費に関する市場情報サイトの編集者を務めるロイ・ラーク氏だ。当時、日本は世界の工場と目されていたが、経済の急成長に伴い、国としてのイメージチェンジを図ろうとしていた。安価な製品のメーカーから、高級品を扱う小売店へのステップアップを望んでいたわけだ。

製造業各社は容器包装に一段の注意を払い、質の高い製品を求める消費者にアピールした。そうした基準は小売業者によって強化された。彼らは現在もなお、買い物客が手の込んだ包装の方を好むと確信している。

「大手小売業者が考える自らの役割とは、メーカーと消費者との間に立って確かな品質のものを届けることにある。従って、一定の基準に満たないシンプルすぎる包装は決して受け入れられない」(ラーク氏)

包装へのこだわりは食料品にも広がる。そこには見た目に加え、衛生面に対する意識も反映されている。

1993年、人類学者のジョイ・ヘンドリー氏は日本とその他の社会の包装文化を比較した著作の中で、プラスチックで食べ物を包むことを好む特性について、日本の文化に固有の部分だと論じた。それは「おもてなし」という言葉にも表れる、消費者サービスの伝統に根ざしたものだという。

安い商品でもプラスチック包装することで高級感が出ると、ヘンドリー氏は指摘する。その結果、店舗に対し、より良質で行き届いたサービスを提供しているという印象が生まれるのだ。

リデュース、リユース、リサイクル?

日本はプラスチックを大量に消費しているかもしれないが、リサイクルも同時に促進することで、志の高い市民としての役割を果たしている。環境問題の専門家で東北大学教授の劉庭秀氏はそう指摘する。

「リデュース(ごみを減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再生利用する)」という、国民的なスローガンまで存在する。

ごみ出しの日は生ごみ、プラスチックごみ、ビン・カンなどの種類によって分けられているほか、多くの自治体がウェブサイト上にリサイクルに関する詳細な指針を掲載している。たとえば千葉市はペットボトルのふた専用の回収箱を設置し、注射器やコンピューターを廃棄したい人のためのホットラインも開設している。

株式会社市川環境エンジニアリングの施設でプラスチックごみを処理する作業員/Nicolas Datiche/LightRocket/Getty Images
株式会社市川環境エンジニアリングの施設でプラスチックごみを処理する作業員/Nicolas Datiche/LightRocket/Getty Images

ごみ問題の解決に向け、高い次元で取り組んでいるように見える日本だが、実際のところ国内のリサイクルシステムはプラスチックごみのあまりの量に圧倒されてしまっている。

日本の年間のプラスチックごみ排出量はざっと900万トン。プラスチック循環利用協会が示す公式のリサイクル率は84%と高いように思えるが、これを額面通りに受け取ることはできないと国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの広報担当、城野千里氏は指摘する。

同氏によると、プラスチックごみをきちんと分別して捨てれば新たな製品として再生利用されると人々は思い込んでいるが、ほとんどのプラスチックごみはそうならない。再生利用するには質が低すぎるうえに、量も多すぎるためだ。

プラスチック循環利用協会は2018年の報告書でこうしたプラスチックごみについて、埋め立て処理される分もあるが半分以上の56%は焼却され、その際生じるエネルギーを発電などに利用していると述べた。この工程は「サーマルリサイクル」として知られているが、二酸化炭素も同時に排出されるので環境には悪いと城野氏は説明する。

地域レベルの取り組み

地域レベルでは、プラスチックの使用を削減する取り組みが一定の成果を上げる事例もみられる。

人口1490人の徳島県上勝町では、2003年から「ゼロ・ウェイスト運動」を展開。プラスチック、紙、生ごみ、ガラスといったごみを45種類に分別し、資源化・再利用を可能にする体制を整えた。

こうした取り組みの結果、自治体のまとめによると昨年家庭から出たごみ301トンのリサイクル率はおよそ80.7%。経済協力開発機構(OECD)が集計した全国平均の20%をはるかに上回った。

缶を圧縮した薄板を積み上げる上勝町の住民/KAZUHIRO NOGI/AFP/AFP via Getty Images
缶を圧縮した薄板を積み上げる上勝町の住民/KAZUHIRO NOGI/AFP/AFP via Getty Images

また京都府亀岡市は18年、日本の市で初めて、将来的に使い捨てプラスチックの使用を禁止する方針を打ち出した。市議会の広報担当者によれば、30年までに使用を終了する見通しだという。同市ではこのほか市内の小売店に対し、来年1月から顧客へのプラスチック製レジ袋の提供を有償無償問わず禁止とする計画だ。

今後の展望

全国的なレジ袋の有料化は、日本のプラスチック依存を低減するうえで重要な動きと言えるが、ワイカト大のラーク氏は料金が安すぎて十分な効果が得られない可能性があると警告する。

「客が手で持ち運べないほど買い物をすれば、とりわけコンビニではレジ袋を買ってしまうのではないか。袋が10円以上するなら話は別だろうが」(ラーク氏)

株式会社市川環境エンジニアリングの施設で圧縮されたプラスチックごみ/Nicolas Datiche/LightRocket/Getty Images
株式会社市川環境エンジニアリングの施設で圧縮されたプラスチックごみ/Nicolas Datiche/LightRocket/Getty Images

一方、東北大の劉教授は「使い捨て社会から環境にやさしい社会」への転換が今ほど求められているときはないと強調。ますます多くの日本人が、繰り返し使えるボトルやバッグを選択するようになってきていると述べた。

グリーンピース・ジャパンの城野氏は、顧客の方からレジ袋はいらないと明言すれば、企業も従来の販売の手法を変えていくだろうと予測する。また米や豆類を顧客の持参する容器に合わせて量り売りするスーパーマーケットに言及しつつ、過去の日本の習慣を振り返ることも提案した。

「昔は使い捨てのプラスチック包装などなかった。野菜などは新聞紙で包み、買い物かごや風呂敷を活用していた。風呂敷は何度でも使うことができる」「私の家族は、調理鍋をもって豆腐屋さんに行ったものだ。その中に豆腐を入れてもらって帰ってくる。そういうことを思い出してみる必要がある」(城野氏)

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