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中国EV大手BYD、メキシコで工場建設を検討 米市場参入への足掛かりとなるか

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輸送船「BYDエクスプローラーNO.1」への積み込みを待つ車両/STR/AFP/Getty Images

輸送船「BYDエクスプローラーNO.1」への積み込みを待つ車両/STR/AFP/Getty Images

新工場は何年も前から計画されていたようだが、建設時期はとりわけ時宜にかなっていると専門家らは指摘する。なぜならBYDは、欧州で生産することによって、EUが中国からの輸入自動車にかける10%の関税を回避できるからだ。またEUは現在、中国のEVメーカーが同国政府から補助を受けていたかに関する調査を実施しており、その結果次第ではBYDに追加関税が課される可能性もある。

この調査は昨年9月に欧州委員会が発表。同委員会は、中国から輸入されるEVの価格がいかに「人為的に低く抑えられている」のかを解明しようとしている。

EUの関税は調査終了後に引き上げられる見通しだが、BYDは追加関税の支払いを回避できる可能性が高いとシュミット氏は述べている。

上海を拠点とする戦略コンサルティング会社オートモビリティーの創設者兼CEO、ビル・ルッソ氏も同様の見解を示した。

ルッソ氏は、メーカーの生産国ではなく原産国(この場合は中国)を対象とする新たな規則が策定されない限り、BYDのハンガリー工場は関税の支払いを免れるはずだと指摘した。

メキシコでも同様の状況が予想される。BYDは現在、米国で乗用車を販売しておらず、中国製の自動車には27.5%の高額な輸入関税が課せられている。

BYDがバスや乗用車を販売するメキシコに生産拠点を整えれば、状況はすぐに変わる可能性がある。

20年に「北米自由貿易協定(NAFTA)」に代わる貿易協定として発効された「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」によると、関税を回避するには各乗用車の75%を北米で生産する必要がある。

よってUSMCAの加盟国であるメキシコは、中国の自動車メーカーにとってより魅力的な国となっているのだ。

リー氏は、メキシコは「北米への生産・輸出の入口」として機能し得るとして、「米国政府は、メキシコが裏口を作ることは好まないだろう」と語っている。

メキシコは人件費や輸送費が安いというメリットのほか、テスラが新工場を建設しているため、BYDは同国を強固な拠点と見なしている。マスク氏はかつて嘲笑していたBYDの競争力を認めており、今ではテスラがBYDの顧客の1社として、同社製バッテリーの供給を受けている。

BYDとって、これは単なる最終製品戦略ではないとリー氏は言う。「このほか、『我々は中南米市場でバッテリーを販売する計画だ。当社最大の顧客の1社が、そこにギガファクトリーを建設中なので、我々が彼らのすぐ隣にいるのは理にかなっている』という狙いもある」と同氏は述べた。

昨年9月、BYDの李柯・執行副社長は、メキシコのニュースメディア「エル・ソル・デ・メキシコ」に対し、市場の反応次第だが、同社はメキシコに工場を建設することを視野に入れていると語った。

「需要が高いと判断すれば、ここで車両を生産することを検討する」(李氏)

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