金価格、一時史上最高値 利下げ期待や地政学的緊張で
ロンドン(CNN) 金価格が4日の取引で一時、史上最高値となる1オンス=2135ドル(約31万円4000円)を付けた。投資家の間で高まる利下げ期待やドル安、地政学的な緊張が追い風となった。
これまでの最高値は2020年8月に付けた1オンス=2072ドルだった。
投資家の間ではこのところ、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極利上げを通じたインフレ抑制に成功し、早ければ来年3月にも利下げを開始する可能性があるとの見方が強まっている。
金利上昇は米国債などの資産の利回りを押し上げ、投資家を引きつける。
しかし、金利が低下したり、今回のケースように低下が見込まれたりする場合には国債需要は減退し、金利が付かない金の魅力が相対的に高まる。
基準となる10年物米国債の利回りは10月半ば、16年ぶりの水準となる5%に達したものの、その後下落に転じ、4日時点で4.3%となっている。
取引プラットフォーム「サクデン・ファイナンシャル」のトップ、ダリア・エファノバ氏は4日のメモで、「引き締めサイクル終了への期待が織り込まれ、長期の利回りが低下した」と指摘。「これにより、利回りの付かない資産である金にとって有利な環境が生まれている」と述べた。
より長期的に見れば、金の上昇には別の要因も絡んでいる。米金融大手JPモルガンのジェレミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、世界がここ数十年で最も危険な時期を迎えている可能性があると指摘した。
金はそれ自体に価値を持つ希少な有形資産であることから、投資家は通常、資金の安全な避難先とみなす。金価格は年初来10%上昇している。
金の生産者でつくる団体ワールド・ゴールド・カウンシルのマーケット・ストラテジスト、ジョン・リード氏は「地政学的リスクの環境が変化したように見える」と説明。「ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとガザ地区で起きている惨事のみならず、米中間の貿易摩擦、南シナ海情勢を巡る懸念、台湾に対する中国の出方を巡る懸念」が背景にあるとの見方を示した。