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利益と道義の間で揺れる多国籍企業、中国の人権問題めぐり

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中国のメディアやネットで欧米ブランドの不買運動が呼び掛けられた/Kevin Frayer/Getty Images

中国のメディアやネットで欧米ブランドの不買運動が呼び掛けられた/Kevin Frayer/Getty Images

米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問で、中国の専門家であるボニー・グレイザー氏は「中国には巨大な経済的影響力がある」と語る。

グレイザー氏は「中国は常に、特定のセクターや業界、あるいは特定の企業に損害を与える一方、自分たちは一切犠牲を払わない方法でこの影響力を行使する」と述べ、一例として中国とオーストラリアの間の緊張関係を挙げた。

オーストラリアでは、中国へのワイン、牛肉、木材などの輸出が法外な関税などにより打撃を被る一方、中国の景気回復にとって重要な産業は重い「懲罰」を免れた。

グレイザー氏は中国の有名な格言を引用し、中国は「ニワトリを殺してサルを脅す」戦略を取っているとし、「(中国は)他の国々が成り行きを見守っていることを重々承知している」と付け加えた。

また欧米企業は、中国に関しては他者を巻き込まずに行動できるとは限らないことを学びつつあるようだ。中国政府や中国の顧客に向けた欧米企業の声明も、他の観衆を巻き込みながら波紋が広がることが多い。

例えば、NBAはヒューストン・ロケッツのモーリー氏の香港に関する発言について弁解しようとして中国の視聴者たちの怒りを買ったが、影響はそれだけではなかった。NBAコミッショナーのアダム・シルバー氏は、モーリー氏の発言は「表現の自由の行使」と擁護して中国人の視聴者たちを激怒させただけでなく、米国の政治家からはNBAが(中国に対し)強硬な態度を取らなかったとの批判を浴びた。

北京冬季五輪への影響は

欧米と中国の間の緊張は、向こう数カ月の間にさらに高まる可能性もある。中国は2022年に北京冬季五輪を開催する予定だが、すでに数十の人権団体がボイコットを呼びかけ始めている。

APCOワールドワイドのマクレガー氏は、中国も五輪を前に世界を動揺させすぎていることは自覚しているだろうと述べる。いずれにせよ、緊張がピークに達すれば、中国は五輪という大きな舞台で自らの評判を汚す恐れもある。しかし、多くの企業は依然として苦しい状況に置かれたままだ。

「大半の企業は今、静かに身を潜め、この困難な状況うまく切り抜けようとしている」(マクレガー氏)

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