（ＣＮＮ） カリブ海に浮かぶ米領プエルトリコが住民への新型コロナウイルスワクチンの接種率で米国の各州を抑えて首位に立っている。プエルトリコ政府への助言を行っている専門家からは、島中にあるドラッグストアのおかげだとの冗談も出ている。
ハーバード大学公衆衛生大学院のラファエル・イリザリー教授（生物統計学）は冗談半分で、プエルトルコではすべての場所にドラッグストアの「ウォルグリーンズ」があり、どこに行っても、必要なものすべての手に入り、ワクチンも受けられると語った。
プエルトリコはここ数年、多数の死者を出したハリケーンや地震に見舞われたほか、政治的不和や負債の問題に苦しんできた。しかし、ワクチン接種に関しては、米５０州の中で最も接種率の高い州を上回っている。
エール大学医学部の教授で、新型コロナウイルスに関する助言の取りまとめを行っているダニエル・コロン・ラモス氏は、さまざまな緊急事態や苦境がプエルトリコの人々や指導層、科学者、医療従事者に準備を促したと指摘。危機感があり、同氏が一緒に働いた人の多くはそうした状況を二度と起こさないという姿勢を示していたと述べた。
米疾病対策センター（ＣＤＣ）によれば、プエルトリコでは住民３３０万人のうち７３％あまりがワクチン接種を完了した。これは２３０万人以上に相当する。
州兵の運営する接種会場で新型コロナワクチンの接種を受ける高齢者＝２月８日、サンフアン
ワクチン接種の回数でも高い水準を見せており、１０万人あたりの接種数は１５万４５６３回となっている。ＣＤＣによれば、２２日時点で４９０万回の接種が行われた。
一方、米本土では、バーモント州が人口の７０．８％がワクチン接種を終えて接種率をリード。さらに、コネティカット州の同７０．２％、メーン州の同７０％が続く。２２日時点で米国全体でみたワクチン接種完了の割合は５７％あまりとなっている。
ブラウン大学公衆衛生大学院のアシシュ・ジャー博士はプエルトリコの接種率の高さに触れて、「私に言えるのは、プエルトリコではおおよそ、ワクチン接種と政治を結びつけないことによってこれを実現した」と指摘。本土の政界に目を向けることなく、すべての党派が積極的にワクチン接種を支持し、ほとんどの場合、政治的自認とワクチン接種が混合することはなかったと述べた。
ジャー博士は、プエルトリコについて米本土より貧しいだけでなく、２１州よりも人口が多いと指摘した。博士によれば、プエルトリコはバーモント州の約５倍の人口を抱える。国勢調査局によれば、２０１８年のプエルトリコの貧困率は約４３％で、米全体の１３％を上回っている。