中国の産業スパイ、その長い歴史

中国には長い産業スパイの歴史があるという

2014.07.20 Sun posted at 17:30 JST

香港(CNNMoney) 米司法省は5月、米国企業にハッキングし企業秘密を盗み出したとして、中国軍当局者5人を起訴したが、これに対して、中国政府は「根拠のない言いがかりであり、隠された意図がある」と反発。サイバー攻撃を巡って両国の間で緊張が高まっている。

もっとも、事情に通じた関係者にとっては意外な事態ではない。中国は長年にわたり、世界で最も活発な産業スパイ活動を展開してきた国の1つだからだ。

米情報セキュリティー企業マンディアントの創業者ケビン・マンディア氏は、中国のスパイ活動が広範囲にわたっている点を指摘。「起訴対象となっているのは、知的財産の奪取だ。これは企業秘密の盗難であり、経済スパイ行為だ」と警鐘を鳴らす。

歴史を振り返ると、中国の産業スパイ行為の端緒の一つとなったのは、故トウ小平氏らによって進められてきた近代化政策だ。研究開発に本来必要な時間をかけることなく、技術習得を加速させようとしたのである。

こうしたスパイ行為の対象となる産業は多岐にわたる。今回の起訴では、太陽光パネルの製造業者、鉄・アルミニウム製造業者、原子力発電所の設計会社が近年、新たに狙われていることが明らかになった。

雇われているのは専門のスパイだけでなく、こうしたやり方に賛同する学生や民間の技術者も多い。

対策として米下院では2006年、経済スパイ法を可決した。この法律に基づきこれまで数人が告発されているが、なかでも有名なのが09年に有罪判決を受けた米国籍の江波(ジアン・ボー)元技術者だ。米航空大手ボーイング社の元技術者であり、米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル・プログラムにも関わっていた同氏は、膨大な機密書類を持ち出しその一部を中国当局者に渡したとされ、懲役15年の判決を受けた。

知人で米国籍の中国人エンジニアも、米国の船舶や潜水艦に関する情報を中国当局に渡したとして、懲役24年を宣告されている。

さらにアイオワ州では昨年、品種改良により干ばつや害虫に対する耐性を高めたトウモロコシの種を盗もうとした罪で、中国人6人が起訴された。

こうした中、オバマ政権は軍事スパイ行為と経済スパイ行為を区別しようとしている。米国のスパイ活動はあくまで安全保障のためであり、米企業とは情報を共有していないとの論法だ。

中国側からの反論も

ホワイトハウスのカーニー報道官は「我々は起訴された中国人のようなスパイ活動は行っていない。これがすべてだ」と述べている。

今回のサイバー攻撃事件は、マンディアント社が昨年、ハッカー集団を中国軍当局者と特定し上海の活動拠点を割り出して以来、大きな注目を集めていた。上海を本拠地とするこのハッカー集団は61398部隊と呼ばれる中国軍の秘密部門であり、司法省の起訴状でも名指しされている。

この事件を巡っては、オバマ米大統領も習近平(シーチンピン)国家主席に問題提起してきた。ただ、エドワード・スノーデン元中央情報局(CIA)職員により、米政府機関が中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の通信を監視していたことが暴露された後だけに、米国側の主張は説得力を欠いたものにならざるをえない。

起訴を受けて中国外務省は声明を発表、「米国が高度なテクノロジーやインフラを駆使して長期にわたり機密情報を盗み取り、外国の政治家、企業、個人を盗聴してきたことはよく知られている」と反論し、米国の偽善を指摘した。

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