農業従事者の抗議デモ、欧州全域で噴出 その理由は

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ギリシャ・テッサロニキの国際農産物フェア会場に大挙して押し寄せたトラクター/Sakis Mitrolidis/AFP via Getty Images

ギリシャ・テッサロニキの国際農産物フェア会場に大挙して押し寄せたトラクター/Sakis Mitrolidis/AFP via Getty Images

抗議を静める方策は?

EUレベルでは、農業従事者らは1月31日に一定の譲歩を勝ち取った。農業従事者らの土地利用に関する規定の延期が発表されたからだ。この規定は農業従事者らに対し、土壌の健康や生物多様性の促進のため一部の土地の作付けを行わないよう義務づける内容。

政府レベルではドイツが先月、ディーゼル燃料補助の縮小計画を部分的に撤回。農業用車両を対象にした税控除は維持し、ディーゼル燃料費用の税控除の縮小は向こう3年で段階的に進めるとした。ただ農業従事者の多くは、縮小の完全な撤回を求めている。

ギリシャは農業用ディーゼル燃料に対する特別な税還付を1年間延長すると発表。壊滅的な洪水で打撃を受けた農業従事者らの要求に応じた形だ。

伊ノバラでの農業従事者の抗議デモに参加するトラクター/Stefano Guidi/Getty Images
伊ノバラでの農業従事者の抗議デモに参加するトラクター/Stefano Guidi/Getty Images

フランスも先週、農業従事者らの抗議デモを念頭に一連の措置を発表した。アタル新首相は、「食の主権」を守ることを約束し、同国並びにEUのルールを尊重しない食料品輸入に対するチェックを強化する方針を示した。不公平な競争から農業従事者らを守る取り組みだとしている。

また畜産農家への割り当てとして、今年から1億5000万ユーロ(約240億円)を支給することも明らかにした。割り当ては恒久的に継続する意向だという。

フランス政府の講じた措置には効果があったようだ。二つの主要な農業組合の呼びかけに応じて、一部の道路封鎖は解除された。ただそれ以外の地域では、抗議デモが依然として続いている。

次に何が起きるか?

各国政府は譲歩したものの、一部の農業従事者はそれらが不十分だとし、抗議行動の継続を呼びかけている。

6月の欧州議会選挙を前に、EUへの反発が起きていることも抗議デモへの追い風になっている。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は50年までのネットゼロ(温室効果ガスの実質排出ゼロ) を域内の目標に掲げるが、自身の所属する中道右派政党からは環境関連の法制度の中身を緩和するよう圧力を受けている。

オランダとの国境に近いベルギーのアレントンクで道路を塞ぐ両国の農業従事者/Rob Engelaar/ANP/AFP via Getty Images
オランダとの国境に近いベルギーのアレントンクで道路を塞ぐ両国の農業従事者/Rob Engelaar/ANP/AFP via Getty Images

選挙での躍進を望む欧州の極右政党は、農業従事者の不満を利用して自分たちの政治的影響力の拡大を図るかもしれない。

ドイツでは既にそのような事態が起きている。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は抗議デモに関与し、農業従事者らとの連帯を表明した。

農業従事者の抗議デモが単に路上の占拠以上の現象を巻き起こした先例は既に存在する。

昨年3月、オランダのポピュリスト政党「農民市民運動党(BBB)」は農村の怒りを追い風に、選挙で大勝。政府の環境政策に反対する大規模抗議デモから生まれた同党が、今やオランダ議会上院の第1党に君臨している。

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