「とにかく生き残ること」、ワグネル元兵士が振り返るウクライナ東部戦線の恐怖

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ウクライナで死亡したワグネル戦闘員の葬儀で、棺をロシア国旗で包む士官候補生ら/Igor Russak/Reuters

ウクライナで死亡したワグネル戦闘員の葬儀で、棺をロシア国旗で包む士官候補生ら/Igor Russak/Reuters

自由と引き換えに

2人の元兵士はワグネルに徴集された経緯を詳しく語った。昨年8月と9月、2人が収容されている刑務所にワグネルの指導者エフゲニー・プリゴジン氏がヘリコプターでやって来て、6カ月の契約と引き換えに恩赦を与えると提案した。

2人のうち1人は故殺で有罪判決を受け、10年の服役期間が残っていた。

「このまま刑務所で10~11年過ごすよりも、6カ月のほうがましだと考えた……とにかく人生をやり直したかった」と元兵士は言った。

その当時、プリゴジン氏は本腰を入れてロシアの刑務所から兵をかき集めていた。西側の諜報(ちょうほう)関係者や受刑囚支援グループの推計によると、4万~5万人の囚人が徴集されたとみられる。

今月9日、プリゴジン氏は囚人の徴集活動を終了すると述べたが、理由は明らかにしなかった。

「所属していた部隊では金のために戦う者は一握りで、大半は長い刑期を務めていたことが理由だった」と元兵士の1人は言った。「だが、刑期が残り12日しかなかったのに参加した者もいた」

「全員中庭に並べられ、プリゴジンが選抜していった」「お偉いさんから、罪状や刑期に関係なく刑務所から誰でも連れていく権限を与えられたと(プリゴジン氏は)言っていた。理想的な候補者は殺人犯と強盗犯だ」(ワグネル元兵士)

選考プロセスはいたって初歩的で、年配の囚人は数メートル行進できることを示すだけで良かったという。「ほとんど全員が採用された」

「頭のおかしな奴もいた……武器を手にしても扱いが分からないような、クレージーな連中だ」とも付け加えた。

刑期が何年も残る囚人にとって、この提案は魅力的だった。

元兵士の1人は、「自由と引き換えにウクライナで6カ月、ナチと戦わなくてはならなかった。一方で賃金やローンの返済、犯罪歴の抹消が約束された」と語った。

ロシアのプーチン大統領は、「非ナチ化」という根拠のない言い分を再三繰り返し、ウクライナ侵攻を正当化している。

2人によると、プリゴジン氏の訪問からほどなく、数百人の受刑囚がバスや飛行機でロシアのロストフ州にある訓練所に送られた。

1人の話では、麻薬や酒は固く禁じられていた。指揮官の中にはワグネルの一員としてアフリカやシリアで戦ったという者もいた。

訓練は短期間で、基礎的なものだった――まもなく命じられることになる、恐ろしい攻撃に備えた銃の扱い方だ。2人によれば、契約内容とは異なる任務の準備をさせられていたのは明らかだった。

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