若者の重症者や死者が増加、変異ウイルスやパーティーが関係か ブラジル

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担架で患者を運ぶ医療従事者ら=11日、ブラジル・サンパウロ郊外のサントアンドレ/Alexandre Schneider/Getty Images South America/Getty Images

担架で患者を運ぶ医療従事者ら=11日、ブラジル・サンパウロ郊外のサントアンドレ/Alexandre Schneider/Getty Images South America/Getty Images

ブラジル・サンパウロ(CNN) ブラジル・リオデジャネイロの病院で死亡した28歳のグラシアニ・ダシルバさんは、発症してからわずか10日で息を引き取った。家族が看取(みと)ることはできなかった。

母親のマリア・ダパーニャさんは言う。「娘がこんなことになるとは思ってもみなかった」「あまりに早すぎた。ウイルスは私たちにお別れも言わせてくれなかった」

ダシルバさんは4歳の息子を残して昨年6月、新型コロナウイルスのために死亡した。当時、若者の死亡はまだ比較的まれだった。新型コロナウイルスが最初に流行した時点で、発症して死亡するのはほとんどが高齢者だった。

今年に入ってブラジルは最悪の事態に陥りつつあり、1日当たりの死者や症例数は過去最多を更新し続けている。

そうした中で憂慮すべきパターンが浮上した。複数の医師がCNNの取材に対し、重症化して死亡する若者が増えているようだと語った。

今回の流行ではブラジル全土の病院で、集中治療室(ICU)に入院する若者がかつてなく増えている。

リオデジャネイロの公立病院でICUに勤務する医師は「それ以外は健康な30~50歳の患者が大半を占める」「今回の波はそれが大きな違いだ」と話す。

CNNは1月中旬以来、ブラジル7州の病院でICUに勤務する10人あまりの医師や看護師に取材。それぞれが、ICUの入院患者は若い世代がかつてなく増えていると証言した。

アマゾン地域マナウスの公立病院近くで取材に応じた医師は「重症者の数は第1波の時よりもずっと多い」「容体ははるかに深刻だ」と打ち明けた。

ブラジル保健省が発表した新型コロナウイルスの死者に関する統計をAFP通信が分析した結果、過去3カ月あまりの死者は30~59歳の層が約27%を占めることが判明。12月までの数字に比べて7ポイント増えていた。

一方で、死者に占める60歳以上の割合は7ポイント減少した。

サンパウロの保健当局によると、ICUへの入院を必要とする若い世代の患者は60%を占め、以前に比べて増えている。

サンパウロの病院に勤務するベテラン医師は「30代の死はあまりに痛ましい」「まだ人生はこれからなのに、前途を新型コロナに奪われる」と肩を落とした。

若者の発症や死亡が増えた時期は、ブラジルで変異ウイルスが増加した時期と一致している。

ブラジルで発生したとされる変異株の「P.1」は感染力が強く、最新の研究によれば最大で2.2倍に上った。

国立衛生研究所がまとめたブラジル8州の3月4日の統計によれば、6州で確認された新型コロナの症例のうち半数以上が、ブラジル国内や英国、南アフリカなどで確認された変異株に関係していた。

複数の医師は、患者の年齢層の変化にはP.1変異株が何らかの形で関係しているのではないかとが推測しているが、具体的な影響は分かっていない。

「そうした新しい変異株の方が致死性が高い可能性もある。だがそれを科学的に裏付けるデータはない」とブラジルの専門家は説明し、「ただ、P.1変異株の方が感染性が高く、それがこの第2波に大きく影響していることは分かっている」とした。

専門家は、新年を祝うパーティーやカーニバルの祝日でパーティーが増えた影響も指摘する。単純にパーティーに参加した若者の感染が増えた可能性もある。

インターネットには違法な集まりの動画があふれ、当局はブラジル全土で罰金を科したり毎週末ごとにパーティーの摘発を行ったりしている。

ワクチン接種は計画に遅れが出ているものの、高齢者優先で徐々に実施されつつある。高齢者のワクチン接種が増えるほど、若い世代の感染者や死者の比率が一層増えるかもしれないと専門家は予想している。

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