スーダンに取り残された米国民、生死をかけた自力退避 米政府に憤り

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危機的状況のスーダンから自力退避を強いられた米国民から米政府への憤りの声が上がる/Marwan Ali/AP

危機的状況のスーダンから自力退避を強いられた米国民から米政府への憤りの声が上がる/Marwan Ali/AP

(CNN) スーダンで危機的な状況が続く中、同国に取り残された米国民は米政府に見捨てられたと感じて憤りを募らせ、危険を冒して自力で脱出しなければならない状況に追い込まれている。

「自国民の健康と安全に対する米国の精彩を欠く対応に強いショックを受け、憤りを感じている」。そう語るムナ・ダウドさんの両親は、ポートスーダン経由でスーダンを脱出してサウジアラビアに入ったという。

各国が相次いで自国民を退避させる中で、米政府は民間人を退避させられる状況にはないと言い続けてきた。米政府職員は全員が軍の作戦によって退避を済ませた。米当局者は、米国民と「緊密な連絡」を取り、スーダンからの出国を「積極的に支援している」と説明する。

しかしCNNの取材に応じた人たちは、自分たちの家族を含めて「数十人」の米国民がスーダンからの退避を望んでいるにもかかわらず、国軍と準軍事組織RSFの衝突が起きて以来、米国務省の支援はほぼ皆無だと訴えた。

この戦闘で米国民2人を含む数百人が死亡し、数千人が負傷。自宅に閉じ込められた人たちは食料や水も医薬品も電気も不足して、人道危機的状況に陥っている。

スーダンに取り残された米国民は、いつ、どうやってスーダンを脱出するかに関して、ほとんど何の助言もないまま「生きるか死ぬかの決断」を迫られたと家族は証言する。

「正直言って、国務省は完全に役立たずだった」。両親がハルツームからエジプトを目指しているというイマドさんはCNNにそう語った。

「国務省が何らかの助言をしてくれると期待したが、助言は形だけにすぎず、避難しろというだけで重要な情報は何も提供されなかった」(イマドさん)

ダウドさんも「何とかしてポートスーダンへ行けば、そこからはサウジが手助けしてくれるとだけ伝えられた」と振り返る。

米国民に対してスーダンからの出国を促したという米当局者の説明に異議を唱える人も多かった。警戒レベルは2021年6月、「レベル4:渡航禁止」に引き上げられ、米国務省は一貫して「米政府の支援に頼らない退避計画」を立てるよう、米国民に促していた。しかし最近になって米国民の退避を促す勧告は出されていない。

スーダンに米国民の親類が数人いるというメズン・スルファブさんは、父親の妻に米国籍がなかったため移民ビザを取得しようとしており、おじは葬儀でスーダンを訪れていたと説明した。

「あれは自分たちを守るための口実にすぎない」とイマドさんは言い、自身が12月に訪れた時は、スーダンは戦争状態には陥っていなかったと指摘。「今にも全面的な内戦状態に陥ると分かっていたら、絶対に両親を行かせなかった」と話す。

スーダンにいる米国民のほとんどが二重国籍者で、出国を望んでいないという米政府の説明にもイマドさんは異議を唱え、「二重国籍者も国民だ」と強調した。

ダウドさんは、いずれも米国籍を持つ父(69)と母(66)について、バスを使ったハルツームからポートスーダンへの移動は「恐怖の9時間」だったと振り返る。

「両親は道路脇で待ってバスを見つけなければならなかった」とダウドさん。バスはRSFの兵士によって3回止められ、1度は検問所で父親がスーダン軍の兵士と思われて銃を突き付けられたという。

「男性全員がバスを降りるよう指示され、捜索されて事情を聴かれた」。父親はずっと銃を突きつけられていたといい、「母は、父が連行または射殺されるかもしれないと思った。幸いなことに、父は解放してもらえた」

ポートスーダンにたどり着いたダウドさんの両親は、どれくらい待てばサウジアラビアのジェッダ行きのフェリーに乗船できるのか分からなかったという。米国務省からは、そこまで行けば領事館員が米国民を支援すると伝えられていた。

一方、エジプト経由でスーダンを脱出しようとした米国民は、国境地帯で人道危機的状況が深まっていると証言した。

スルファブさんによると、米国籍の親類は、米外交官が撤収した後、自分たちも退避を決意してエチオピアやエジプトを目指した。しかしエジプトへ向かった父親とは、その後連絡が取れていない。

全員が米国籍を持つスルファブさんのいとことその子どもたちは、エジプトへ入国するまでに3日間待たされた。一行は食料も水も医薬品もないまま砂漠に取り残された状態になり、トイレなどの施設もなかったという。

「喉を乾かした子どもたちや女性たちがいる。米国民であろうがなかろうが、これは人道危機だ」「助けようとする人がいなければ、いずれ死んでしまうだろう」とスルファブさんは訴える。

イマドさんは、74歳の父と66歳の母にとってエジプトへの移動は「とてつもなく厳しかった」と語る。衝突が起きてから最初の数日間、父母は離れた場所にいて、父親は3時間半歩いて母親と再会したという。

イマドさんによると、23日にアラブ首長国連邦とトルコが組織した退避車列に加われると米国務省から連絡があったのは、わずか2時間前だった。米国民が加わるためには自家用車が必要だったが、ほとんどの人はポートスーダンまで運転できる自家用車を持っていなかった。

「ほかの国がバスを確保して自国民を退避させ、何百人もの自国民を出国させる計画を立てることができたのに、外交官70人を脱出させながらなぜ我々が置き去りにされるのか理解できない」とイマドさんは憤る。

イマドさんの両親は何度も試みた末にバス停まで送ってくれる車を手配して、ハルツームの「砲撃や爆撃」をくぐり抜けながらバス停にたどり着き、6時間待ってようやく座席を確保できたという。

乗車料金は通常であれば1人50ドル(約6680円)前後だが、今回は600ドルかかった。

イマドさんは26日夕、36時間かかってエジプトとの国境にたどり着いた両親は、まだ国境を越えることができていないと語った。父親が持っているパスポートは期限切れだったが、有効なパスポートのコピーを持っており、米国務省に連絡を取ったところ、自分たちの前にも同じような状況の人たちがいると告げられ、順番に対応するので明日、連絡して状況を確認してほしいと指示されたという。

「両親は2人とも健康問題を抱える高齢者だ。水も食べ物もない。バスは行ってしまったので、国境前の道路にいて、入国させてもらうのを待っている」とイマドさん。

イマドさんの妻のリーラさんも「現地で人道支援がないことはショックだった」「気温37度の炎天下の砂漠。24時間前に爆撃や銃撃を逃れてきたのに、食料も水もない国境でもし死者が出れば、社会として恥ずべきことになる」と話し、「米国民の集団避難やスーダン国民の実質的な支援を行わないのであれば、少なくとも国境で必需品を提供してほしい」と訴えた。

在ハルツーム米大使館は25日、米国民向けの勧告を出し、エジプトやエチオピアの国境を目指す場合は食料と水、医薬品を携行するよう呼びかけた。

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