行動しないことを選んだトランプ氏 米議会襲撃、公聴会8日目のポイント

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米連邦議会襲撃事件を調査する特別委員会による今夏最後の公聴会が開かれた/Tasos Katopodis/Getty Images

米連邦議会襲撃事件を調査する特別委員会による今夏最後の公聴会が開かれた/Tasos Katopodis/Getty Images

(CNN) 昨年1月6日に発生した米連邦議会襲撃事件を調査する下院特別委員会による今夏最後の公聴会が21日に開かれた。新たな証拠から、当時のトランプ大統領が3時間にわたって暴動を公然と非難せず、暴徒らを解散させようともしていなかった実態が浮き彫りになった。

今夏8日目となる公聴会では、事件の中の「187分間」に焦点が当たった。これはトランプ氏が支持者らに議事堂へ行進するよう伝えてから、最終的に「家へ帰る」よう求めるまでの時間を指す。

公聴会には当時のホワイトハウスのスタッフで事件直後に退職したマシュー・ポッティンジャー氏とサラ・マシューズ氏が証人として出席した。

主な要点を以下に挙げる。

トランプ氏は行動しないことを選択

特別委員会は21日の公聴会を利用し、トランプ氏がどのような経緯で行動を起こせなかったのかのみならず、あえて行動を起こさなかったことも示した。この間同氏は、暴力的な襲撃が議事堂に対して展開されるのを目の当たりにしていた。

当時のホワイトハウス内の状況を直接知る複数の証人は委員会に対し、トランプ氏が一度たりとも自身の法執行機関や国家安全保障当局者らに電話をかけなかったと証言した。この時、議事堂への襲撃が行われていたにもかかわらず、同氏はこうした当局者の誰にも連絡を取らなかったという。これまで未公開だった動画による証言で明らかになった。

委員会が確認したところによると、法執行機関の高官や軍幹部、ペンス副大統領(当時)のスタッフなどから何度も聞き取りを行ったものの、誰一人として当日トランプ氏から連絡を受けた人物はいなかったという。

委員会はこれらの証言を利用し、事件への介入を拒否するトランプ氏の姿勢が職務怠慢に当たると主張する。

ホワイトハウスの副報道官だったマシューズ氏は、「私にとって、あの日トランプ氏が行動を起こさず、暴徒を解散させるのを拒んだこと、さらに暴力に対する非難も拒否したことは到底擁護できない」と述べた。

この証言は、同日紹介された他の証拠とも合致する。例えば襲撃翌日の1月7日に録画されたトランプ氏の演説で編集によりカットされた部分には、同氏が用意された演説の内容を変更しようとする様子が映っている。この映像の中でトランプ氏は、側近に向かって「大統領選が終わったとは言いたくない」と告げていた。

また米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、非公開の場で撮影された宣誓証言動画の中で、襲撃発生時にトランプ氏から何の連絡もなかったことに愕然(がくぜん)としていると語った。その上で、トランプ氏のこうした不作為は、結果的に軍の指揮権を持つ最高司令官としての職務を放棄していることになるとの見方を示唆した。

ペンス氏の警護隊が感じた危険

当時議事堂内のペンス氏を避難させようとしていた同氏の警護隊がどれだけの危険を感じていたかについて、音声と映像の生々しい記録が明らかになった。

ペンス氏は大統領選の結果を覆そうとするトランプ氏の取り組みに同調するのを拒否。それを受けて議事堂に押し寄せた暴徒らからはペンス氏を縛り首にするよう求める声も上がっていた。

証人を務めた国家安全保障会議のある当局者によれば、ペンス氏の警護隊は当時の状況から命を落としかねないとの不安に陥った。現場では叫び声や、家族に別れを告げろという声などが聞こえていたという。

調査委員会が21日に初めて公開した動画は、防犯カメラの映像やペンス氏の警護隊の音声をつなぎ合わせたもの。これにより、当時暴徒らがペンス氏とその警護隊にどれほど接近していたかが明確になった。

共和党議員を(再度)追及する委員会

委員会は、以前公開された米下院共和党トップのマッカーシー院内総務の音声記録を流した。その中でマッカーシー氏は、1月6日の襲撃後にトランプ氏と交わした会話に言及。さらにトランプ氏に辞任するよう助言しようか考えていたと明らかにした。

またトランプ氏の娘婿のジャレド・クシュナー氏は宣誓証言の動画の一部で、1月6日にマッカーシー氏と電話で話したと説明。議事堂で暴力が繰り広げられる中、マッカーシー氏は「おびえていた」と述べた。

さらに共和党のジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州選出)に関して、委員会はよく知られた写真を紹介した。この写真には、選挙結果に異議を唱える上院での取り組みを主導した同議員が、議事堂外で暴徒らに向かって拳を突き上げる様子が写っている。撮影されたのは1月6日の午前だ。

その直後、委員会が流した動画には上院の議場から走って逃げ出すホーリー議員の姿が映っていた。強く印象付けるためか、この動画はもう1度、スローで再生された。

ハチンソン氏の証言にさらなる裏付け

委員会は今回の公聴会で新たな証拠を提示し、ホワイトハウスの元関係者カシディー・ハチンソン氏による衝撃的な証言の裏付けを行った。カシディー氏は襲撃当時のトランプ氏について、議事堂へ連れて行くことはできないと自身に告げたシークレットサービス(大統領警護隊)隊員と怒りのこもったやり取りを交わしていたと公言していた。

委員会は新たに2人の関係者から得た情報が部分的にハチンソン氏の証言を裏付けると説明。1人はホワイトハウスの元職員で、国家安全保障関連の役職を担っていた人物だという。

氏名は伏せられたものの、委員会によればこの当局者は、トランプ氏の次席補佐官だったトニー・オルナート氏からハチンソン氏が証言したのと同じ話を聞いたという。ハチンソン氏もトランプ氏の「激高」の話はオルナート氏から聞いたと証言していた。

2人目の関係者は、退職した首都警察の巡査部長マーク・ロビンソン氏。当日、トランプ氏の車列に加わっていたロビンソン氏は、車列の責任者だったシークレットサービスの隊員がトランプ氏について、自らの護衛とのやり取りで「熱くなった」と話していたと証言した。内容は議事堂に向かうことに関するものだったという。

トランプ氏の車列には100回以上加わっているが、1月6日以前にそうした種類のやり取りは聞いたことがなかったと、ロビンソン氏は付け加えた。

未公開の映像、写真、音声

公聴会ではこれまで誰も見たことのない映像や写真、音声が公開され、当時の恐怖が18カ月を経た現在によみがえることとなった。

トランプ氏による1月6日と7日のビデオメッセージから編集でカットされた部分には、暴徒らを非難するのに苦慮するトランプ氏の姿が映っている。

また議事堂内で、マコネル上院院内総務やペロシ下院議長らが当時のミラー国防長官代行に電話をかける映像や写真も公開された。マコネル氏やペロシ氏は、ミラー氏が州兵を出動させて秩序を回復すると確認するのを求めている。そうすれば選挙人団による選挙結果の認証手続きを再開できるからだ。

公聴会は9月に再開

特別委員会は8月、夏季休暇に入り、公聴会は9月から再開する。

委員会のリズ・チェイニー副委員長は、8月中も多方面から浮上する情報を追求すると説明。各議員もそれぞれの調査を継続中だと発言している。

ベニー・トンプソン委員長は「我々には新たな情報が日々入り続けている」と述べた。

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