独出版大手、中国の検閲受け入れ 「天安門」など検索ヒットせず
香港(CNNMoney) 学術関連の出版大手、独シュプリンガー・ネイチャーが、中国当局にとって扱いの難しい題材に関する中国本土からの検索に対し、アクセスを遮断していたことが3日までに分かった。
この出来事については、英紙フィナンシャル・タイムズが先に報じていた。中国当局による検閲の受け入れについては、英国のケンブリッジ大学出版局が8月、これを認めたため、非難を浴び、その後、撤回する事態となっていた。
シュプリンガー・ネイチャーが手掛ける中国の政治学関連の雑誌についてネット上で検索を行う際、中国本土では多くの研究論文が見られないという。ブロックされるキーワードは「チベット」や「台湾」「天安門」など。ただ、香港で検索を行うとみることができるという。
例えば、北京で天安門を検索しても結果は0件だ。同じ検索を香港で行うと92件がヒットする。一見問題がなさそうな題材についてもブロックされることがある。中国の国家主席である「習近平」は、中国本土の検索結果にはなにも出てこない。香港だと78件ヒットする。
そのほかの検閲されている題材は「文化大革命」や「香港」、公職追放された政治家の「薄熙来」、天安門事件が起きた「6月4日」など。
シュプリンガー・ネイチャーの広報担当はCNNMoneyの取材に対し、コンテンツにフィルターをかけていることについては、中国の法律を順守するためと説明。こうした決断については、非常に残念に思っているとしながら、そうしない場合には、全てのコンテンツが遮断されるという本当の危機があったと述べた。同社の試算によれば、影響を受けている学術関連のコンテンツは約1%だという。
ただ、中国研究の専門家からは今回の決定を批判する声が上がっている。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院のスティーブ・ツァン教授は、「これは学術出版社としての(シュプリンガー・ネイチャーの)名声と地位を大きく傷つけるものだ」と指摘。学問の自由を脅かす決定で、学会はこれを受け入れるべきではないと述べた。
中国では、インターネットへのアクセスは当局によって厳しく管理されている。グーグルやフェイスブック、ツイッターなどは中国では利用できない。欧米のニュースサイトの一部についても見ることができない。