（ＣＮＮ） 美容整形は、明らかに普及しているにもかかわらず、富裕層や著名人の間では長らくタブーとされてきた。施術について公に語るごく少数のスターたちは大抵、激しく飛び交う臆測や外見の変化を問いただされるプレッシャーに屈している。
それでも、セレブは、侵襲性の低い施術について共有したり（アリアナ・グランデは唇にフィラーを入れ、ボトックスをしていたことを認めている）、医学的な正当性を主張したり（ザック・エフロンはあごのラインが変わったことについてけがが原因だったと語った）、あるいは後悔をにじませながら自身の判断について断りを入れたり（ベラ・ハディッドは「元の鼻のままにしておけばよかった」と吐露した）することは多々ある。
「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」に出演するカイリー・ジェンナーが今週、ＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）で豊胸手術の詳細を明かしたとき、ファンを驚かせたのは、その詳しさだけでなく、ジェンナーの喜びに満ちた口調と、あっけらかんとした様子だった。
今年のメットガラでのカイリー・ジェンナー/Taylor Hill/Getty Images
コンテンツクリエーターのレイチェル・リーリーから届いた直接のリクエスト（リーリーは動画で「豊胸手術を受けた時、何をお願いしたのか、興味を持っている私たちにどうか教えて」と頼み込んでいた）に対し、ジェンナーは意外にもインプラントの正確なサイズや種類、位置、さらには担当したビバリーヒルズの外科医の名前すら明かした。
ジェンナーは「４４５ｃｃ、中くらいのボリューム、半分は筋肉の下に！！！！！シリコン！！！ガース・フィッシャー！！！役に立つといいな（笑）」と書き込んだのだ（このコメントは後に削除されている）。
ジェンナーの率直さはＳＮＳ上だけでなく、複数のファッション誌からも称賛された。ハーパーズ バザー誌は「整形手術の透明性における新時代」を告げ、同誌の美容ディレクター、ジェナ・ローゼンスタイン氏は、セレブの秘密主義が「評判の良い信頼できる美容外科医の名前を隠蔽（いんぺい）している」と主張した。
すべてをさらけ出すＳＮＳの時代において、他の多くのスターも、施術内容だけでなく、誰が施術をしたのかも公表している。ケリー・リパはボトックス注射を受けながら皮膚科医の名前を叫んだし、エイミー・シューマーは産後に脂肪吸引手術を執刀した医師に公の場で感謝を伝えた。
娘のキム・カーダシアンと写るカイリーの母親、クリス・ジェンナー。先ごろ顔の整形について公表した/Piroschka Van De Wouw/Reuters
良くも悪くも、ジェンナーの率直な公表は、整形手術のタブーをさらに打ち砕いた。しかし一部の人々は、ジェンナーの発言について侵襲的な手術を軽々しく推奨していると批判する。こうした施術は病気や感染症につながる恐れがあり、リンパ腫の一種であるＢＩＡ－ＡＬＣＬとの関連性もあるとされる。米国では豊胸手術が増えており、２０００年の２１万２５００件から２３年には３０万件以上に増加した。一方で豊胸インプラントの除去も同様に増加しており、２３年だけで９％増加した。
実際、ジェンナーは以前、インプラント手術を受けたことを後悔していると明かしている。２３年に出演したカーダシアン家のエピソードでジェンナーは「私の胸は美しかった。まさにゴージャス。完璧なサイズで、すべてが完璧だった」と話し、１８年の出産前に受けた豊胸手術について「どう考えても、最初から受けなければよかったと思っている」と口にした。
米公共ラジオＮＰＲの元韓国支局長エリース・ヒュー氏によると、ジェンナーの最近の公表は「身体改造がいかに当たり前のものになったか」を反映しているという。
「現代において、身体改造についてオープンに話すことは、私にとって全く理にかなっている。なぜなら、見た目の良さは社会的・経済的資本につながるという、より大きな文化の一部であり、『努力する』とは、従来の規範に合うように外見を変えるべく努力することを意味すると理解しているからだ」（ヒュー氏）
ただし、ジェンナーの透明性は、非現実的な、つまり多くの女性にとって手の届かない美の基準を強化することになるかもしれないともヒュー氏は指摘する。「美の強制は被害者を伴う。外見を自分の価値として内面化するよう教え込まれ、ハイパー資本主義においては、特定の医師に診てもらったり、シリコンを購入したりすることで、外見を選択と資源の問題として位置づけてしまう。お金があれば私たちが（誤って）価値と同一視している外見を買うことができると考えるようになる」
ヒュー氏は「胸がぴったりでなかったり、どうにも『フィット』しない体型を問題視することにもなる」と言う。「豊胸手術の『方法』を教えるカイリーは、美容業界が、私たちの体について作り出した問題を『解決』するための市場を作り出す方法の一部なのだ」
◇
原文タイトル：Is Kylie Jenner’s surgery revelation a setback for beauty standards?（抄訳）
