OPINION

ガザ紛争巡る米国の認識、世界の転換点に 軍事専門家が考察

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イスラエルによる空爆の最中、ガザ南部ラファの東側から立ち上る煙/AFP/Getty Images/File

イスラエルによる空爆の最中、ガザ南部ラファの東側から立ち上る煙/AFP/Getty Images/File

(CNN) イスラム組織ハマスがイスラエル南部を攻撃した昨年10月7日以降、軍事専門家のジョン・スペンサー氏はイスラエル国防軍(IDF)によるハマスとの戦闘を注意深く観察してきた。パレスチナ自治区ガザ地区に2度赴き、冬の間は記者としてIDFに従軍もした。

スペンサー氏はCNNの取材に答え、ハマスの部隊を速やかに無力化できる軍隊がその能力を国際社会によって抑え込まれているのを目の当たりにしたと説明。その上で、米国にはガザの惨状について一定の責任があるように思えるとの見方を示した。米国がイスラエルの作戦を遅らせる措置を取り、戦闘に勝利する能力に制限をかけているためだという。同氏によれば、米国がそうした制限を自国の軍事作戦に課したことはない。その制限の結果、戦闘は長期化し、パレスチナ人の死傷者と苦難を増やし続けているという。

ジョン・スペンサー氏/Courtesy John Spencer
ジョン・スペンサー氏/Courtesy John Spencer

スペンサー氏のこのような評価は、歩兵として25年間軍務に就いた経験を基に下したものだ。この間、イラクにも2度従軍している。現在同氏は米陸軍士官学校の現代戦争研究所(MWI)で、都市型戦闘に関する研究の責任者を務める。自らの経験と研究を踏まえ、イスラエル軍による軍事行動の分析と、米軍の作戦との比較検討を行っている。

米国によるイスラエルへの圧力は、ガザ南部の都市ラファにおいて頂点に達した。ラファはハマスにとって最後の大規模拠点とされ、エジプトとの境界をまたいで武器を密輸する重要な場所とも目される。しかし米国は現在、ラファで使用される懸念があるとして特定の武器の供与を控えている。IDFによる同市への大規模攻撃を阻止する取り組みの一環だ。報道によればその他の武器は相当量の売却を準備しているが、一方では供与の制限も行っている。米国は大掛かりな地上侵攻が実施されればガザの民間人がさらに死亡し、苦難が深まると警鐘を鳴らす。ラファにはこれまでガザの民間人数十万人が避難している。

スペンサー氏はこうしたやり方を取り上げ、米国が意図しない形でハマスの勝利に向けた道を敷いていると異議を唱える。「戦争は地獄だ」と認める同氏だが、同時に戦争は人間性の本質に深く染みついたものだとも指摘。民主主義国が攻撃される場合、否応なく訪れるであろうそうした事態に対し、各国は戦争に踏み切らざるを得ない。その際には迅速に勝利できる方策を駆使し、永続的な平和を目指さなくてはならないと説く。

以下に掲載する見解はスペンサー氏個人のものだ。同氏とのやり取りの内容は、分かりやすくするために編集、要約している。

CNN:イスラエルについて、ラファへの地上侵攻を行わずにハマスを倒せると思うか?

スペンサー:昨年10月8日以降、複数の米高位当局者が、地上侵攻を行ってもハマスを壊滅する目標は果たせないと示唆している。人質の帰還や境界の保全といった目標についても同様だと。都市型戦闘の専門家としては、そうした見方に強く反対する。実際のところ、ラファには人質並びにハマスの残りの戦力と指導層が存在していると考えられる。彼らのロケット砲や武器生産などあらゆる能力がそこにある。IDFは地上から入って行かざるを得ないだろう。こういったものは地中深く埋められているからだ。ハマスが作ったトンネルの中に。

ハマスの司令部があるとされるトンネルの中で写真に収まるイスラエル軍の兵士/JACK GUEZ/AFP/Getty Images/File
ハマスの司令部があるとされるトンネルの中で写真に収まるイスラエル軍の兵士/JACK GUEZ/AFP/Getty Images/File

ハマスがラファで生き延びれば、彼らの勝利だ。ガザ地区の片隅に押し込められるとしても関係ない。ハマスの指導部が生き延びれば、彼らは戦闘に勝利したことになる。イスラエルを攻撃しても生き延びたと主張することができるからだ。その後彼らは態勢を立て直し、将来どんな支配勢力がガザに侵入してこようとこれを撃退し続けることができる。いずれはイスラエルに対して攻撃を仕掛けることも可能だ。その場合はイランとその代理勢力も、自分たちの戦略を正当化するだろう。イスラエルを攻撃し、同盟国間でのイスラエルの立場を弱体化する戦略の効果を認め、それを繰り返すことになる。

CNN:米国は以前、ハマス掃討の任務を支持していた。現在は、ハマスがガザで存続可能だと認めているということか? あなたの言葉を借りれば、戦闘で勝利すると。それは代償が、つまりパレスチナの民間人の死や破壊が高く付きすぎるのが理由か?

スペンサー:彼らは直接そう言わないかもしれないが、行動を見れば現時点でハマスが権力を維持していると認める以外、妥当な選択肢がないのが分かる。これは我々の歴史にとって本当に大きな転換点だ。私が考えているのは法の支配に従う我々西側社会の歴史だが、もし我々がハマスについて、人間の盾を使って生き延びることができると本当に口にするなら、勝利への代償が高すぎるとの理由でそう言うのなら、それは極めて大きな転換点になる。イスラエルとパレスチナにおいて暴力及び和平の欠如を続ける上で最も見込みのある方法は、ハマスを権力の座に居座らせることだ。

当然、ここから和平への道筋を見いだすのは難しいが、この点は強い確信を持って断言できる。ハマスがこの戦闘を生き延びるのを許せば、それこそが中東での暴力を存続させる最も確実な手段になる。

CNN:しかし、イスラエルが地上侵攻してハマスを駆逐したガザの一部地域でさえも、たとえばガザ北部がそうだが、見たところハマスは再結集して戦闘を継続している。つまり米国が課す制約の有無にかかわらず、イスラエルがハマスに対して成功を収められるかどうかについてはある程度の疑問符が浮かぶのではないか?

スペンサー:いや。私はそうは考えない。イスラエルが自分たちのやり方で何らかの成功を収めたのかどうか評価するのであれば、昨年10月7日時点のハマスを対象とすべきであって現在の彼らではない。私見ながらIDFのやり方は軍事組織としてのハマスを破壊する上でこれまでのところ極めて効果的だ。あらゆる定義からそう言える。多くの敵の編隊を破壊し、再構成を不可能にした。これらの敵は効果的な部隊を再編し、攻撃なり防御なりの任務に就くことができていない。敵が現時点で制圧する地域の規模はどうか。拘束している人質の数も減っている。IDFは成功のために、4万人を超えるハマスの正規メンバー全員を殺害する必要はない。彼らがすべきなのは組織化されたハマスの部隊を破壊し、戦闘能力を排除し、指導部を壊滅することだ。

依然として小規模のハマスの主体がガザ北部に存在する事実は明らかに警戒すべきであり、今後の展開を非常に困難にするだろう。多くの火種が今なお現地に残っている状況だからだ。私は2003年のイラク侵攻に参加した。我々がイラクの軍事能力を十分に破壊すると、イラク軍の大半は制服を脱ぎ、米国が軍を解散させる前に立ち去った。その後、事態が思わしくなくなると、彼らは当然ながら反体制派の一部になった。しかしだからと言って、我々の任務に効果がなかったという話にはならない。彼らの統治権力を排除し、軍隊そのものを消し去ったのだから。

CNN:イスラエルが攻勢に出れば、かえってより多くの武装組織が作られてハマスに加わり、イスラエルと戦うことになるのではないか? 逆効果ではないのか?

スペンサー:その恐れはある。間違いなく。この点で私はデビッド・ペトレイアス退役陸軍大将に同意する。ペトレイアス氏によれば、10~20年後にはさらに多くのテロリストが生まれる可能性がある。現段階ではもちろん、ハマスを壊滅させなくてはならない。しかし絶対的に重要なのは、その後何をするかだ。アフガニスタンで成功に至らなかったのは、戦闘によって(イスラム主義勢力)タリバンを排除しようとしたからではない。テロリストとその統治機構を壊滅した後の戦略が、アフガニスタン人にとって良い結果をもたらさなかったことが理由だ。イスラエルが戦後どのような行動に出るかで、最終的に同国は一つのイデオロギーに対する非常に長い戦いに敗北することになるかもしれない。

戦争は、敗れた側の人々に不満を抱かせる。それにより彼らが過激化する可能性は実際にある。しかし現在、存亡に関わる脅威もしくは世界戦争の危機に直面している状況で、そうしたことは考慮の対象にならない。必要なのは、現時点で自分に危害を加えようとしている相手側の軍隊を直ちに壊滅することだ。実際このような事態に陥っているからには、境界にいる敵の部隊にひたすらこちらを攻撃させておく方がいい。住民は、敵を壊滅しようという私の意見になかなか賛同しないだろうから。

良い比較対象となるのがナチズムだ。米国には第2次世界大戦中、ドイツ人の一段の過激化を懸念する余地はなく、彼らの打倒を最優先にしなくてはならなかった。終戦後、彼らを非過激化する取り組みが可能になった。もちろん、ナチズムのイデオロギーは今なお生きている。イデオロギーを根絶することは不可能だから。それでもその牙は抜かれた。まずはナチス政権に対する軍事的勝利を果たしたからこそできたことだ。

CNN:では、これがIDFにとって勝てる戦闘だと考えているのか?

スペンサー氏:100%そうだ。ただ現時点ではハマスにとっても相当に勝利が可能な戦闘だ。なぜなら戦争というものは、軍事能力だけでは決まらないから。それは意志の戦いに他ならない。そしてもしハマスが生き残れるのであれば、彼らは自分たちの戦闘戦略を獲得すると共に、昨年10月7日の時点を上回る政治権力を手にする。ハマスは見事に立ち回り、大規模かつ残忍な攻撃をイスラエルに加える方法を見いだしたと認識される。戦闘を生き延び、さらに政治的勝利をも収める手段を突き止めたと見なされるだろう。政治的勝利にはイスラエルと西側世界、とりわけ米国との同盟関係の弱体化が含まれる。そしてハマスはこのような新たに加わった権力を駆使して再建と攻撃を行い、かねて表明した大掛かりな戦略を達成しようとするだろう。その戦略とはイスラエルの破壊と、全ユダヤ人の死だ。

CNN:あなたは別の場でこう発言している。IDFはここまで、パレスチナの民間人多数を危険な状況から脱出させることに成功していると。しかし民間人は危険から逃げようとする中で殺害されており、どこにも安全な場所がないと訴えている。この場合、イスラエルが効果的に民間人をラファから脱出させられるという主張はどれくらい正確なのだろうか?

スペンサー:民間人が避難中危険な状況に陥るのは、ハマスに原因がある。指定された安全地帯近くで戦闘が発生しているのはハマスのせいだ。ラファ北方に位置する地中海沿岸部のマワシが人道地域に選ばれたのは、ハマスがトンネル内や都市部に築いた防衛線から離れているためだった。それでもハマスはマワシや他の人道地域から依然としてロケット砲を発射している。だから人々は、どこにも安全な場所がないと口にする。ここに課題の持つ複雑さが表れている。

民間人にとって完全に安全な場所はないという状況は、戦争につきものだ。そして現実として、エジプトはこう言った。つまり、ガザからの難民が自国の監視下で境界を越えることはないと。当然ながら、エジプトがパレスチナ人の入国を望まない理由は複雑だ。シナイ半島にある人道キャンプに入れることにさえ難色を示す背景には、イスラム教徒のテロ組織に絡む自国の歴史も含まれる。また社会と経済にかかる負担や、ガザでの戦闘でイスラエル側の目的を支持していると見なされる代償も念頭にある。

イスラエルによる攻撃で破壊されたガザ北部のシファ病院/Dawoud Abo Alkas/Anadolu/Getty Images/File
イスラエルによる攻撃で破壊されたガザ北部のシファ病院/Dawoud Abo Alkas/Anadolu/Getty Images/File

自国の南部への入境を難民に認めていないとしてイスラエルを批判することもできるが、そうした措置にはまた独特の困難が生じる。彼らはまさにイスラエル南部を破壊し、イスラエル人の現地住民を立ち退かせた敵の政治機構の一部だからだ。もし敵が安全地帯で作戦を遂行するなら、病院や学校で行っているように作戦を実施するなら、それについても話をしたいが、最良の対策は当該の状況に置かれた民間人にとって可能な限り安全な場所を作り出すことだ。

CNN:ハマスが病院や学校を利用していることについて話したいと?

スペンサー氏:そうだ。これは善意が悪い結果をもたらすという格好の事例だ。もちろん、交戦中の当事者らに対して病院は戦闘で使用するべきではなく、保護されるべきだと告げるのは正しいことだ。しかし戦闘に関する法規に従わない戦闘員たちは、保護下にある全ての施設に突入してしまった。ハマスはあらゆる戦闘関連の法規を取り上げて分析し、法的に守られている施設だという理由で自分たちがそれらを占拠する環境を作り上げた。従ってテロ組織を自認する敵との戦闘では、従来型の軍隊が大変不利な立場に追い込まれる。世界が注視する状況では特にそうだ。

ハマスは私が見た中で、これを工業的な水準で行った最初の武装勢力だ。米軍が複数の病院を完全に爆撃したのは、戦っているISIS(=過激派組織イラク・シリア・イスラム国)が病院の中にいたからだった。しかしハマスがやっているのは、保護対象のあらゆる施設を軍事施設に作り替えることだ。そうした施設への武力行使を制限せざるを得ないイスラエルの事情を熟知しているからだけでなく、施設への攻撃を想定しただけで世界がイスラエルを非難することも理解しているからだ。当然イスラエルはハマスと同類だなどと国際社会に思われたくないので、ハマスがそこに付けこもうとするのは予想の範囲内となる。

私はハマスが全ての学校、国連施設、病院の地下にトンネルを建設していると指摘してきたが、今そうではないことが明らかになっている。彼らは自分たちのトンネルを作り、その上に学校を建てている。これは文字通り、保護を追求する我々の取り組みの副作用であり、より多くの人々を危険に晒(さら)してしまっている。

CNN:病院や学校の下にハマスがトンネルを建設していることがどうやって分かるのか? IDFが発表する情報や使用する数字については多くの疑問の声が上がっている。こうした情報について信頼できると考える理由は?

スペンサー:ハマスのものよりはIDFの情報を信頼するが、私はこの戦闘中に実際にガザを訪れている。トンネルがあるモスク(イスラム教礼拝所)や学校の近くにも行った。同行したIDFがモスクから伸びるトンネルを発見していた。例を挙げればそういうことだ。また、ハマスがモスクを武器の保管など軍事目的に使用していることも立証されている。私が依拠しているのは自ら調べた内容であり、順法精神や高い道徳性を備えた社会と軍隊に対する信頼だ。

CNN:イラク戦争への参加に言及した。イスラエルの行動を米軍の戦闘とどのように比較するか? つまりアフガニスタンでの(国際テロ組織) アルカイダ、イラク・モスルでのISISに対する米軍と比べてどうか。これまでのイスラエルの行動は国際法を守ったものなのか、それとも戦争犯罪を犯しているのか。

スペンサー:民間人が戦争で傷つくのを阻止する戦術について語りたいのであれば、米軍が駆使するのはスピードと勢い、圧倒的な力となる。我々がパナマやアフガニスタン、イラクでやったのはそれだ。戦争の相手に対しては権力を取り除き、軍隊の壊滅を狙う。迅速に達成できれば、戦争を長引かせずに済む。問題は国際社会が、イスラエルを現行の枠組みに押し込んだことだ。そこではより時間のかかる入念な避難を、全ての地域で事前に行うとしている。

大変に強い自信を持って言えることだが、イスラエルは米軍が都市型戦闘の歴史の中で実施してきたあらゆることを行っている。さらには我々がこれまで見たことのない措置も講じ、民間人の危害を低減する技術を実践している。過去30年の間に開発してきたこれらの技術で、ハマスの戦術に対抗している。

CNN:次のような意見もある。たとえイスラエルが民間人保護について、米国と同じ基準を全般的には守っているとしても、イラクとアフガニスタンで起きたことは恐怖であり、米国は両国の民間人を守ることに成功したとは言えない。従って今回もその基準を用いるなら、それはイスラエルが同じ轍(てつ)を踏むのを促すことになってしまう。

スペンサー:戦争は地獄だ。私も同意する。人々の意見は分かるが、現状起きていることを見てほしい。こんな事態が合法と言えるのか? 仮に合法であったとしても止めるべきだ。戦争史の学者として発言すると、戦争は地獄だ。そして仮に前へ進むことなく、任務を完遂しないのであれば、実際のところ当該の戦闘が生み出すよりも格段に多くの苦難を人々にもたらすことになる。これはほとんど戦争の哲学の域に達する議論だが、戦争は決して起こしてはならない。その通りだろう。戦争は決して起こしてはならないが、人類の歴史はそうなっていない。

私は軍人として、戦時の法規が守られるのを強く望む。戦争は阻止してもらいたいし、民間人が標的になるのも望まない。米軍がイラクとアフガニスタンで民間人を標的にしたという証拠は皆無だ。そこに議論の余地はない。だが過去はどうか? 間違いなくあった。たとえば東京大空襲がそうだ。巻き添え被害に関する現在の我が国の計算は、当時と大きく異なるものになっている。過去へ後退するべきではない。

だから法は守られてほしいが、問題はこうした議論がイスラエルのガザに対する戦闘への非難や認識、そこから生じる副作用について本当に危険な部分を占めているということだ。それが米国のような民主主義国の将来にとって何を意味するか。もし次の戦争で(起きないに越したことはないが、一部大国の台頭に対し生き残るための戦争が勃発したと仮定して)、我々が民間人を苦しめるべきではないと発言するとどうなるか。仮に第2次大戦中にソーシャルメディアがあったら、我々は現在のような世界には暮らしていないかもしれない。勝ったのは日本とドイツの方だったかもしれない。敵対する民主主義国が日独に抵抗する代償には支払うだけの価値がないと考えたなら、そうした結果になっていた可能性もある。

イスラエルに関する自分たちの発言がこのような予期しない結果を生むことを、人々は理解していないと思う。イスラエルは法に従っていないと主張するグループがいる。それを示す証拠は何もない。今度は別のグループがこう言う。法を守っているかいないかはどうでもいい。人道上の苦難が度を超えているのだから、イスラエルは攻撃を止めなくてはならない。思うにその意味するところは、代償が高すぎるのだからハマスに勝たせなくてはならないということだろう。私はこう言いたい。あなた方の善意こそが、今後さらに大きな苦難をもたらすのだと。あなた方は実際には、この戦闘を止めようとすることでより多くの戦闘を推奨しているのだと。

CNN:同じようなシナリオの中で、米国ならどういった行動を取ったと考えるか?

スペンサー:圧倒的かつ即時の対応に動き、可能な限り迅速に戦闘を終わらせようとしたと確信する。自国民の帰国やロケット砲の使用を恒久的に阻止するといった目標の達成も念頭に置いただろう。米国の歴史や戦争史を振り返れば、我が国が敵を圧倒する対応に出るはずだということが分かる。

破壊の規模は膨大なものになるだろうし、そこでは自国を守る価値についての計算もなされるだろう。一方で現在米国がイスラエルの戦闘に対して求めるやり方は、結果的に戦いを長引かせ、より大規模な破壊を引き起こしているというのが私の主張だ。もっと圧倒的で迅速な戦い方をしていれば、破壊の規模はより小さくて済んだだろう。そしてそのようなリスクは、米国がイスラエルに実施するよう迫る可能性のある一段と限定的な作戦にも付いて回る。米国が求めるのはそうした作戦で、ラファへの地上侵攻ではないかもしれない。

歴史と計量学を踏まえて言えることだが、ゆっくり事を進めれば、敵は防御により多くの時間をかけられる。こちらの計画を阻止し、奇襲の成功を防ぐための時間も増える。我々は、世界においてと同様、ガザで起きている破壊にも部分的に責任を負っている。

CNN:それはどういうことか?

スペンサー:世界はイスラエルに対し、地上侵攻が始まった時点で次のように発言しているからだ。何をしているのか? 合法かそうでないかはどうでもいい。こんなことは続けられない。別の方法を見つける必要がある、と。米国は持ち前の影響力を発揮してこう言った。いいか、成果を出すための行動だということは分かる。それでも違うやり方を探さなくてはならない。

だからIDFは戦術を変更した。部隊の数を削減し、軍事目標への爆撃の数も減らした。より入念に作戦を遂行し、時間をかけた。戦術的な作戦の停止が増え、民間人がいるという理由で攻撃を避ける地域も拡大した。戦闘はまさに家屋ごと、地区ごと、トンネルごとに繰り広げられ、戦いそのものを長引かせている。

そうした中で、ガザにおける人道上の苦難並びに人道支援供給の逼迫(ひっぱく)は、その度合いを増している。暴力はより長期にわたって持続し、ハマスも依然として存在する。だからガザで起きている破壊は、部分的に我々の落ち度だとも言える。責任の一端は我々にもある。

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