うまくいっている夫婦の多くが実は「サイレント離婚」、兆候は明らか
(CNN) 「サイレント離婚」という言葉をご存じだろうか。米フロリダ州タンパとジャクソンビルにあるメンタルヘルスクリニックのメンタルヘルスカウンセラー、ステファニー・モア氏によると、サイレント離婚とは、夫婦がもはやお互いへの愛着を感じていないにもかかわらず、経済面などの理由で同居を続ける状態を指す。
「法的には別れていないものの、感情的・精神的、そして一定程度まで肉体的にも、配偶者と確実に隔絶している場合をサイレント離婚という」(モア氏)
モア氏は「これは本当に個人的な、いわば一人で経験するものだ。紙に書いたり、すべてを共有したりするものではない。だからこそ孤独を感じることもある」と付け加えた。
結婚には努力が必要だというのはよく言われることだ。「結婚生活に真剣に取り組まなければ、二人の気持ちにずれが生じ、感情的な断絶につながりかねない」とモア氏は警鐘を鳴らす。
サイレント離婚の兆候
夫婦として共通の目標を持てなくなり、パートナーと共に自分が「成長し、発展している」と思えなくなることは、サイレント離婚に陥っているか、あるいはそこに向かっている兆候の一つだという。
例えば、休暇を別々に取るようになったり、誕生日などの社交行事に一緒に行かなくなったりする。
もう一つの兆候は、パートナーとの性的な親密さが長期間にわたり欠如していることだ。性的な関係がなくなる場合もあれば、それ以外にも以前は当たり前だった接触がなくなった場合もあてはまる。
ニューヨーク市で臨床ソーシャルワーカーとして働くリサ・ラベル氏は、自身のクリニックで「うまくいっている夫婦」の多くがサイレント離婚の状態にあると話す。
見かけ上はうまくいっているように見えるこうした夫婦でも実際には感情的な断絶が存在するといい、「夫婦がサイレント離婚寸前、あるいは実際にそうなっている時によく見られる最初の危険信号の一つは、恋人というよりルームメートのように感じることだ。夫婦やパートナーではなく、母親や父親であることに重点が置かれている」とラベル氏は説明する。
どの夫婦でもある程度は孤立を感じることはあるかもしれないが、こうした問題についての話し合いを避けていると、事態は深刻化し、立て直すことができなくなる。
性的な親密さの欠如は、問題の明らかな兆候だ。一方で、サイレント離婚を「睡眠離婚」と混同しないことが重要だとラベル氏は指摘する。睡眠離婚とは、夫婦の一方がいびきをかく場合や、その他の健康上の問題、あるいは快適性の問題で別々に寝ることを指す。
穏やかさに隠された代償
ラベル氏によると、サイレント離婚は一種の関係緩和のように感じられることもある。それまで見られていた夫婦げんかが突然なくなるからだ。
しかし、ジョージア州マリエッタにあるサミッツ・エッジ・カウンセリングのカウンセラー、ジャスティン・ホー氏は、口論には目的があると述べている。
うまくいっていないように思えるかもしれないが、けんかは多くの場合、その瞬間の意見の不一致や認識の違いを反映しており、お互いがパートナーに状況を理解してもらおうとしているとホー氏は説明する。
夫婦によっては、けんかが依然としてつながっていたいという気持ちを表している。サイレント離婚に陥った夫婦は関心がないため、もはやけんかをしない場合があるという。「こういう夫婦は、夕食は何にするかといった具体的なことは話すものの、重要なことや気まずいことは話さなくなる」「弱みを見せられないからだ」(ラベル氏)
憤りは徐々に蓄積
ホー氏によると、サイレント離婚の状態になった夫婦は、感情的な別れを経験し、孤立感、孤独感、そして憤りといった感情を持つ可能性がある。
「時間が経つにつれ、こうした気持ちは蓄積され、経験し対処するのがとても難しい感情になる」「それがうつ病や不安症に発展することも多い。さまざまな形で現れる」(ホー氏)
子どもがいる夫婦の場合、子どもは何が起きているのかを目のあたりにしているため、二次的な悪影響も考慮する必要がある。サイレント離婚は、当事者だけでなく子どもたちのニーズも満たすことができなくなることがあるという。
「子どもたちは、期待したり頼りにしたりできる、仲のよい親のイメージがないため、どちらかの側に立たなければならないと感じたり、そうした関係の中でないがしろにされていると感じたりするかもしれない」とホー氏は懸念を示す。
サイレント離婚から立ち直る
自分がサイレント離婚に陥っているかもしれないと気づいたら、パートナーとじっくり話し合ってみるといい。
ホー氏は「『あなたも同じことに気づいてる?』と聞いてみてほしい。そして、その瞬間に、本当にお互いの気持ちが通じ合うよう努めてほしい」と呼び掛ける。こうした会話は気まずいかもしれないが、関係を修復したいと思えるかどうかを見極める機会になる。
ラベル氏は「子育てや金銭、義理の家族に関する憤り、こうした問題が覆い隠され、話し合われないと、通常、少なくともどちらかが相手に憤りを持ち始め、あまり努力しようとしなくなる」と指摘。憤りを放置すればするほど、対処は難しくなるため、だからこそ、セラピーや支援を受けることが助けになると同氏は強調する。
「セラピーは関係を修復するためのものだと思われがちだが、その本質は、夫婦が言葉に出さない、あるいは気まずい会話をすることで、関係について、より情報に基づいた決断ができるよう支援することだ」(ラベル氏)