世界初の生体ロボット、「生殖」が可能に 米研究チーム

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生体ロボット「ゼノボット」は「生殖」が可能だとする論文が発表された/Douglas Blackiston/Sam Kriegman

生体ロボット「ゼノボット」は「生殖」が可能だとする論文が発表された/Douglas Blackiston/Sam Kriegman

ゼノボットは当初は球形で、約3000の細胞から作られていた。ボンガード氏らはゼノボットの複製が可能なことを突き止めたが、こうした複製は特定の状況下でまれにしか発生しない。ゼノボットが使った複製プロセスは「キネティック・レプリケーション」と呼ばれ、分子レベルで起きることが知られているものの、細胞全体や生物のレベルで以前に観察されたことはないという。

研究チームは人工知能(AI)の助けを借りて、ゼノボットがこの種の複製をより効果的に行えるよう数十億種類の形状を試した。最終的にスーパーコンピューターが考案したのは、1980年代のビデオゲームに登場する「パックマン」に似たC字形だ。この形であればペトリ皿の中の小さな幹細胞を発見して、口の内側の部分で数百個の細胞を集めることができる。数日後、細胞の集まりが新たなゼノボットになった。

「AIがこうしたマシンをプログラムする方法は、我々が通常考えるコードの書き方とは異なる。形を整えたり刻んだりして、このパックマンのような形状をたどり着いた」とボンガード氏。「本質的には形状がプログラムだと言える」と話す。

C字形の親(中央上)が大きな幹細胞の集まったかたまりを回転させる。このかたまりが新しいゼノボットに成熟する/Douglas Blackiston & Sam Kriegman
C字形の親(中央上)が大きな幹細胞の集まったかたまりを回転させる。これが新しいゼノボットに成熟する/Douglas Blackiston & Sam Kriegman

ゼノボットは40年代のコンピューターのようなごく初期の技術であり、今のところ実用的な用途はない。しかし研究者によると、こうした分子生物学とAIの組み合わせは、潜在的に人体や環境内の様々なタスクに活用できる可能性がある。海洋マイクロプラスチックの収集や植物の根系(植物の地下部全体)の調査、再生医療などに使われる可能性もあるという。

自己複製するバイオテクノロジーの出現に懸念の声も上がりそうだが、研究者らによると、ゼノボットは生分解が可能で、倫理の専門家によって規制されているため、研究室内に閉じ込めておき簡単に消滅させることができたという。

この研究は軍用技術の開発を監督する国防高等研究計画局(DARPA)が一部の資金を拠出した。研究結果は査読付きの科学誌「米科学アカデミー紀要」に11月29日に発表された。

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