HIV感染から幹細胞治療なしで完治か、2例目の報告 30歳女性
(CNN) エイズウイルス(HIV)に感染した後、通常の治療を受けずに自力で完治したとみられる症例が、新たに報告された。同様の例は過去に1人だけ見つかっている。
マサチューセッツ総合病院、マサチューセッツ工科大学(MIT)およびハーバード大学のラゴン研究所の研究者、シュー・ユー博士などが率いる国際共同チームが15日、米内科学会の専門誌に発表した。
患者はアルゼンチン出身の30歳の女性。2013年に初めてHIV感染の診断を受けた。8年後の現在、増殖できる形のウイルスは体内のどこにも見つからず、完治したとみられる。
研究チームは17年から20年にかけて採取されたこの女性の血液サンプルを分析した。女性は20年3月に出産したため、胎盤の組織も採取することができた。
女性は19年まで抗レトロウイルス療法を受けたことがない。同年妊娠し、妊娠第2期と第3期の6カ月間にテノホビル、エムトリシタビン、ラルテグラビルの薬を使用したが、HIV非感染の赤ちゃんを出産後にこの療法を停止した。
研究者が血液や組織の細胞数十億個を調べたところ、HIVに感染したこん跡はみられたものの、複製可能な完全なウイルスは見当たらなかった。機能しないプロウイルス(複製の一環で宿主細胞の遺伝物質に組み込まれるウイルスの一形態)が7個見つかっただけだった。
HIVに感染し、骨髄移植を受けて完全に治癒(ちゆ)した患者は、これまでに2人確認されている。一方で幹細胞移植などの治療を受けず、自力で完治したとされる患者は、これまでロリーン・ウィレンバーグさん(67)という女性だけだった。
完治例とみられる人物がより多く見つかることで、HIV感染の完治につながる免疫の仕組みの発見が進むとユー博士は期待を寄せる。
女性の体がウイルスを退治したメカニズムは明確になっていないが、チームは複数の免疫システムの組み合わせが作用したとの見方を示す。「細胞障害性T細胞(CTL)」や自然免疫が関与した可能性が高いと、ユー博士は指摘している。