謎の巨大クレーター、シベリアのツンドラ地帯に出現 気候変動が原因か

ツンドラ地帯に出現した巨大クレーターを上空から撮影/ Evgeny Chuvilin

ツンドラ地帯に出現した巨大クレーターを上空から撮影/ Evgeny Chuvilin

(CNN) 今夏、シベリアのツンドラ地帯の上空を飛行していたロシアのテレビクルーが、深さ30メートル、幅20メートルの巨大なクレーターを発見した。

この地域では、2013年以来、このクレーターを含めて少なくとも9つのクレーターが発見されているが、科学者らはこの巨大な穴がどのように形成されたかを把握できていない。シベリア北西部ヤマル半島の石油・ガス田付近で最初のクレーターが発見された時には、隕石(いんせき)の衝突、未確認飛行物体(UFO)の着陸、秘密の地下軍事貯蔵施設の崩壊など、さまざまな説が浮上した。

現在、科学者の間では、この巨大な穴は蓄積したメタンガスの爆発と関係していると考えられている。そしてこのメタンガスの蓄積はこの地域の温暖化が原因の可能性もあるが、まだ研究者らが把握できていない点は多い。

今年8月に行われたクレーター調査の様子/Evgeny Chuvilin
今年8月に行われたクレーター調査の様子/Evgeny Chuvilin

謎の解明

スコルコボ科学技術研究所・炭化水素回収センターの主任研究科学者、エフゲニー・チュビリン氏の研究チームは、実際にクレーターの中に入り、それがどのように形成され、その原因となったガスがどこから来たかを調査した。

同研究チームは、2017年にエルクタクレーターと呼ばれるクレーターの現地調査を行い、永久凍土、地表の土、氷のサンプルを採取した。そして、その6カ月後にドローンを使った観測も行った。

チュビリン氏は、これらのクレーターが地質学的に極めて短期間で形成され、あっという間に湖になってしまう点が問題だとし、北極でクレーターを発見できるのは科学者にとってこの上ない幸運、と語った。

今年6月に発表された調査報告書によると、永久凍土の上層部に、地中の深い層と地表に近い部分の両方から発生するガス(主にメタン)が蓄積し、これらのガスの蓄積によって生じる圧力は、凍結した地面の上層部を突き破るほど強力で、土や岩をまき散らし、クレーターを形成するという。

しかし、このクレーター問題の研究はまだ極めて初期の段階にあり、一つ一つの新しいクレーターが新たな研究や発見につながる、とチュビリン氏は言う。

またエルクタクレーターに関して、科学者らが作成した模型によると、同クレーターは干上がった湖の中で形成されたが、恐らくその湖にはアンダーレイク(湖の下の)タリクと呼ばれるものが存在した。これは湖が干上がった後、徐々に凍結し始めた未凍結土壌の地帯で、この中で高まった圧力が最終的に強力な爆発により放出された。つまり、一種の氷火山だ。

岩、氷、水、ガスを巻き込んだこの爆発によりクレーターが形成される。これは北極における人間の活動に対する潜在的脅威であり、われわれはガス、特にメタンが永久凍土の最上層部にどのように蓄積され、どのような条件下で爆発が発生するのかを徹底的に研究する必要がある、とチュビリン氏は指摘する。

エルクタクレーターの中へと下りていく調査員/Anton Sinitsky/Arctic Research Center
エルクタクレーターの中へと下りていく調査員/Anton Sinitsky/Arctic Research Center

猛暑の夏

ロシア科学アカデミー・地球雪氷圏研究所の永久凍土の専門家、マリーナ・レイブマン氏は、かつて、リモートセンシング(遠隔測定)データと現地調査により、ガスの放出によって形成された5つのクレーターを分析した研究チームの一員だった。

同研究チームは、クレーターにはいくつか共通点があることを発見した。特に注目すべきは、爆発前に高さ2~6メートルのマウンド(小さな山)が形成されていた点だ。

レイブマン氏は、2012年、16年、そして今年の夏の猛暑の影響で、これらのマウンドが形成され、破裂したのではないかと考えた。このマウンドは出現し破裂するまでの期間が3~5年と非常に短い。

今年の7月に発表された研究報告書は次のように述べている。

「永久凍土からのメタンの放出は(中略)過去10年間の気温と地温の上昇によって引き起こされた可能性が高い。ガス放出クレーター(GEC)はすべて、異常に暑い夏の後に形成された」

レイブマン氏によると、メタンはクリオペグと呼ばれる未凍結の土壌の層の中に蓄積するという。このクリオペグは、高濃度の塩分を含んでいるため地中氷の層の下でも決して凍結しない。そしてクリオペグに蓄積したメタンがトラップの役割を果たす。ガスはその後漏れ出て氷と土壌を変形させ、マウンドを形成する。そして夏の猛暑で気温が上昇すると、マウンドは破裂し、壮大なクレーターが形成される。

レイブマン氏は、クレーターは北極のこの地域特有の現象である可能性が高いと考えた。その理由は、同氏がクレーターの形成に必要と考える特徴、すなわち、地表近くに存在するテーブル形の地中氷、メタンで飽和した連続的な永久凍土層、そして氷の下にある塩類堆積(たいせき)物を含んだ未凍結の土壌、の3つの特徴を持つ地域がこの地域以外にほとんど存在しないためだ。

ウッドウェル気候研究センターの北極プログラム担当ディレクターを務めるスーザン・ナタリ氏もレイブマン氏と同意見だ。人工衛星のデータを利用し、未発見のクレーターの特定・地図作成に取り組むナタリ氏によると、これらの特徴はいずれもアラスカやカナダの北極圏ではまだ発見も報告もされていないという。

クレーターの出現は、北極圏の中でもツンドラ地域に特有の現象である可能性が高いという/Vasily Bogoyavlensky/AFP/Getty Images
クレーターの出現は、北極圏の中でもツンドラ地域に特有の現象である可能性が高いという/Vasily Bogoyavlensky/AFP/Getty Images

気候変動

ロシア科学アカデミー石油・ガス研究所のヴァシリー・ボゴヤヴレンスキー教授は、これらのクレーターが形成された主な原因が気候変動に関連する温暖化であるとの説に懐疑的だ。クレーターが発見されたシベリアのツンドラ地帯の村人や牧畜民らによると、クレーターを形成する爆発の話は彼らのコミュニティーで昔から語られていたという。ボゴヤヴレンスキー氏は、爆発の主な原因は、地中の奥深くから地表に出ようとするガスだと主張する。

しかし、レイブマン氏によると、実験室でいくつかのクレーターから採取したメタンを調べた結果、メタンが地中の奥深くから出てきたとは考えづらいという。

その上でレイブマン氏は、いずれのクレーターも2012年、16年、20年の夏の猛暑の後に出現しており、(クレーターが出現した原因として)極端な気温上昇を除外するのは難しいと付け加えた。

ナタリ氏も、明言するにはさらなるデータが必要としながらも、気候変動がクレーター形成の一因と考えていると述べた。

ナタリ氏は、北極圏で異常に暑い夏が続いたため、「ふた」の役割を果たしていた永久凍土が溶け、その下にたまっていたガスが噴出して爆発を引き起こし、その結果クレーターが形成されたとの見方を示した。

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