イスラム教徒の少数民族数千人、中国当局に抵抗しモスク守る 雲南省

モスクのドームや尖塔の撤去を図る当局に抗議する中国のイスラム教徒、回族の人々/Twitter/@majuismail1122

2023.05.31 Wed posted at 12:46 JST

(CNN) イスラム教徒の少数民族数千人が先週末にかけて、中国南西部にあるモスク(イスラム教礼拝所)を取り囲んだ。彼らは当局がモスクのドームや「ミナレット」と呼ばれる尖塔(せんとう)を取り除こうとしていると主張。そうした試みを阻止する最後の手段として集結した。中国では宗教の自由に対する弾圧が拡大している。

当該のモスクは雲南省の村、納古鎮に住む回族が使用する。モスクに変更を加えるこうした措置は、習近平(シーチンピン)国家主席が広範に進める宗教の「中国化」の一環とみられる。

政策の目的は、外国の影響を受ける宗教を浄化し、中国の伝統文化と独裁的支配により即した形になるよう調整することにある。中国を統治する共産党は、公式には無神論の立場をとる。

近年中国当局は、明白にイスラム教的と分かる建築物を排除するべく、全国1000カ所以上の回族のモスクを対象にモスクの破壊や、ミナレットを倒すといった行為を繰り返してきた。回族の活動家はそう主張する。上記の村のモスクは、破壊の及んでいない最後のモスクの一つだという。


モスク前で警察と住民の衝突が発生/Twitter/@majuismail1122

村は回族と歴史的なつながりが深く、雲南省のイスラム文化の重要拠点となっている。同省は東南アジア諸国と国境を接し、民族的多様性に富む。

モスクの「中国化」に向けた動きは、これまで地元住民からの激しい反発に直面している。

ソーシャルメディアに投稿され、CNNが位置情報を確認した動画には、住民らが暴動鎮圧用の装備をした警官隊と衝突する様子が映っている。警官隊はモスクへの入り口を封鎖し、群衆を盾と警棒で押し返している。

住民らは怒りの叫び声をあげ、一部は水のボトルや煉瓦(れんが)を警官に向かって投げている。

「納家営清真寺」の名称で知られる現地のモスク。その歴史は13世紀に遡る

地元の目撃者1人はCNNの取材に答え「これは我々にとって最後に残されたわずかばかりの尊厳だ」「誰かが自分たちの家に来て、取り壊しを行うようなものだ。そんなことを許すわけにはいかない」と語った。

安全への懸念から匿名で答えたこの情報筋によると、回族の老若男女数千人が27日、モスク周辺に集まった。近くに配備された警官隊1000人以上が彼らを監視していた。

モスクに着くと既に敷地内にクレーンが置かれるなど、強制的な破壊の準備を整えているのが分かったという。

緊張が激化したのは午後1時前後だ。正午の礼拝を行うため信者らがモスクに入ろうとすると、警官隊は群衆を警棒で殴打。これを見た一部住民が反応し、警官隊との衝突につながったという。

破壊に抗議した数十人がその場で逮捕されたと、この目撃者は話す。現在は米国に住み、現地の住民と緊密に連絡を取っている回族の有力な活動家、マー・ジュー氏は、約30人が逮捕されたと述べた。

CNNはこれらの主張を独自に検証できていない。地元警察や自治体、雲南省政府と宗教問題を担当する政府内の部署にもコメントを求めたが返答はない。

数時間に及ぶ膠着(こうちゃく)状態の後、破壊に抗議する人々はモスクになだれ込み、警官隊は退却した。情報筋の証言やネットの動画で明らかになった。

27日夜から28日にかけ、住民は交代でモスクの警護に当たった。当局が戻ってきてドームやミナレットを破壊する恐れがあったからだと、情報筋は説明する。

暴徒鎮圧用の装備を施した警官隊と対峙する住民たち

28日夜、地元の法執行機関は声明を出し、前日に発生した事案を警察が捜査していると発表。事案は「社会秩序を深刻に乱す」もので、「社会に大変な悪影響を及ぼした」とした。

当局はまた、事案を「組織した者及びこれに参加した者」に対し、来月6日までに出頭するよう呼び掛けた。呼びかけに応じれば寛大な処分で済ませるとし、市民全体に対しても積極的な通報を求めた。

29日までに、村は恐怖で覆われたと情報筋は明かす。

多くの区域でインターネットが遮断され、音を立てて飛ぶドローン(無人機)が村を上空から監視している。村内に設置されたスピーカーからは、抗議者の出頭を呼び掛ける当局のメッセージが繰り返し大音量で流れているという。


CNNが位置を確認したオンライン映像のスクリーンショット。武装警察がモスクへの道を行進する様子とみられる/@majuismail1122/Twitter

「我々の悪夢は始まったばかりのように思える」「誰もがおびえている。これから何が起きるのか分からない」と、この情報筋は語った。

CNNが電話で話を聞いたある店舗のオーナーは、「あなた方ジャーナリストはここへ来て、我々の身に何が起きているか報じるべきだ」と述べた。CNNが状況の説明を求めると、オーナーは「分からない」と答えて電話を切った。

中国では2018年にも、寧夏回族自治区の回族住民ら数千人が3日間の座り込みを実施し、当局によるモスクの取り壊しを阻止しようとした。地方政府はモスクの解体を見送ったものの、後にモスクのドームとミナレットを伝統的な中国様式の仏塔に作り替えた。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。