南部戦線のウクライナ軍、複数都市の奪還狙いロシア軍と対峙

ミコライウ州で機関銃を搭載したトラックに乗り移動するウクライナ軍の兵士ら/Anna Kudriavtseva/Reuters/FILE

2022.07.30 Sat posted at 09:00 JST

ウクライナ・ミコライウ(CNN) ウクライナ軍の偵察チームが、同国南部の都市ミコライウに近い村の家屋を拠点に活動している。銃器や軍用のナップザックが壁に沿って並び、寝袋が床に広げてある。容器に入ったスープがストーブの上で温められている。

家から出ると、庭の物置には対戦車ミサイル「ジャベリン」をはじめとする携帯型の対戦車兵器が詰め込まれている。

ポーチで煙草(たばこ)をふかす兵士らは、10キロほど離れた地点に落ちた砲弾の轟音(ごうおん)にもほとんど気づかない。今日ウクライナ南部の戦線で戦うことになっているのは、彼らとは別の部隊だ。

家の持ち主は、2月下旬に戦争が始まった後、ポーランドに逃れた。今は自分たちの村がウクライナ側の手に戻ったと知って喜んでいる。

アンドリー・ピドリスニー中尉は、2カ月前に村からロシア軍を撃退した兵士の一人だ。当初は相手を食い止めるための防御的な作戦を展開していたが、有利な地点を複数見つけたことで攻撃的な作戦の遂行が可能になった。現在は本来の領土を奪還しているという。

ピドリスニー氏が指揮する100人の兵士らは、ロシア軍のいる地点を特定する任務を担う。大抵はドローンで位置を特定し、砲兵に知らせる。砲撃に使用するのは、米国が供与した武器だ。

ロシア軍は現在、南部のこの地域で守勢に回っている。東部では状況が異なり、ウクライナ軍が領域の明け渡しを余儀なくされている。


ただ南部でも戦況が厳しいことに変わりはない。ピドリスニー氏のような兵士らの目的は、戦略的に孤立した小規模地帯を制圧することだ。占領されたウクライナの町々を遠くに眺めるこれらの高台を押さえれば、そこからさらなる戦果を挙げることも可能になる。

ウクライナ南部のロシア占領地域の奪還について、ピドリスニー氏は「今年の終わりまでに達成できるかどうかは分からない」「来年の終わりまでかかるかもしれない」と述べた。

ヘルソン州地方議会の建物の前に止まるロシア軍の車両

西側から供与される武器は概して地上戦用に設計されておらず、ウクライナ軍には前進する部隊のための航空支援も不足している。

南部ではウクライナ軍も多くの損失を被っているが、それらの詳細が明かされるのはまれだ。

ウクライナ南部の戦線はミコライウ近くから始まる。ロシアが支配下に置くヘルソンの北に位置するこの地域は、連日ミサイルやロケット砲の攻撃を受けている。

戦線は南と東にそれぞれ伸び、黒海沿岸から農業地帯を抜けてザポリージャ州まで長々と続いている。両軍はこの戦線を挟んで数カ月間にわたり対峙(たいじ)。ウクライナ軍が「大砲同士のピンポン」と呼ぶ戦いを続けている。

ウクライナ軍は米国供与の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)などを活用し、前線から遠く離れたロシア側の重要な補給基地や指揮所、弾薬集積所を攻撃していると主張。これを裏付けるように、多数の兵士がCNNの取材に対し、ロシア軍の弾薬が著しく減少しているとの見方を示した。

南部の戦線で戦うウクライナ軍のボロディミル・オメルヤン大尉は、こうした敵陣を越えてのピンポイント爆撃について、同軍における戦略の近代化の一環と説明。「ロシア軍の降伏はずっと早まると信じている。とりわけヘルソン州ではそうだ。我々はすでに3本の主要な橋を攻撃した」と述べた。

そのうえで戦果は「日々」挙がっているものの、ウクライナはあえてそれを宣伝していないと説明。「我が軍の司令官が心がけているのは、すでに起きた事象を受けて戦況を語ることだ」と付け加えた。

南部戦線のウクライナ軍、ロシア軍偵察の様子をCNNが取材

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