南シナ海で墜落したF35戦闘機、米海軍が回収急ぐ 中国軍の先回りを警戒

今月19日、米海軍空母「カール・ビンソン」の甲板上で給油するF35C戦闘機/Seaman Leon Vonguyen/US Navy

2022.01.26 Wed posted at 18:35 JST

韓国・ソウル(CNN) 米海軍が南シナ海で、今週墜落した最新型戦闘機の回収作業に乗り出している。だがアナリストらによると、ただでさえ非常に複雑な作業は、中国政府によって念入りに監視されることになるという。

米海軍によるとF35C戦闘機は24日、定例の飛行活動の最中に同海軍の空母「カール・ビンソン」に強行着陸。戦闘機は空母の甲板に衝突した後、海に落下。脱出した操縦士の他、乗組員6人が負傷した。

空母の被害は表層的なものにとどまり、空母および航空団は通常の活動を再開したが、同海軍は、世界有数の係争海域にある海底から、2019年に初めて運用が開始されたばかりの最新鋭戦闘機を引き揚げるという手強い任務に直面することになった。

米海軍は回収計画についてほとんど詳細を明かしていない。第7艦隊の報道官はCNNに対して26日、「空母カールビンソンの艦上における事故に関連したF35C戦闘機のため、米海軍は回収活動の準備を整えている」とのみ答えた。

米海軍は南シナ海のどこで墜落が起きたのかを明かしていない。中国政府は同海域のほぼ全てに当たる330万平方キロの範囲を自国の領域と主張しており、海域内の岩礁や島々を増強して軍事化することにより、自己の主張を強化している。

中国は墜落について正式なコメントをしておらず、国営メディアは「外国メディア」を引用する形でのみ報じている。

米空母「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」からの離陸準備に入る戦闘機

だがアナリストらは、中国はほぼ確実に、墜落したF35C戦闘機を一目見たいと欲していると指摘。米ハワイ州にある米太平洋軍統合情報センター作戦本部長をかつて務めたカール・シュスター氏は、「中国は、潜水艦や深海への潜水用の装置を用いて、徹底的に捜索および調査しようとするだろう」と述べた。

また同氏は、南シナ海の領有権の主張に基づいて中国が、F35C戦闘機の引き上げの権利を主張し得る可能性があると指摘。「民間および沿岸警備隊のリソースを用いて同機を引き揚げることで、環境に害を与える可能性があるもの、もしくは外国の軍事装備品を領海内から回収していると中国が主張することは可能となる」と説明した。

だがシンガポールにあるS・ラジャラトナム国際研究院に所属するコリン・コウ氏は、そうした活動は政治的リスクを生じさせると指摘。

「あからさまにこれに取り掛かると、米国との緊張関係を悪化させる危険を冒すことになる。私は中国政府にそうした欲求があるとは考えていない」としつつ、「だが中国が、米国の引き揚げおよび回収作業などに影を投げかけ、付きまとって監視することは予想できる」と述べた。

シュスター氏は作業において、残骸があると思われる場所に米海軍の一部が展開する可能性が高いと指摘する。F35C戦闘機が南シナ海にどのくらい深く沈んでいるかによるものの、作業は数カ月かかる可能性があるとされる。米国の引き揚げ船が現場へと移動するのに10日から15日を要し、回収には最大で120日かかる可能性があると、同氏は話している。

また、米国は残骸を魚雷などの爆発物で破壊する可能性があるかとの問いに対し、アナリストらはその可能性が低いと話す。

コウ氏は、「諜報(ちょうほう)活動において結果的に掘り出し物となり得るものを、本当に何も残さないのかどうかは疑問だ。そうしたものが海底に散乱した破片の中にあれば、誰であれ能力のある関係当事者が結局は回収することになるのではないか?」と述べた。

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