1日の死者最多を記録、医療崩壊寸前 コロナ禍のブラジル

新型コロナ患者の搬送先へ向かう医療従事者ら=8日、ブラジル・ブラジリアのHRAN病院/Eraldo Peres/AP

2021.03.11 Thu posted at 15:30 JST

(CNN) 南米ブラジルで新型コロナウイルス感染拡大の第2波が全土を覆っている。病院や集中治療室(ICU)は医療崩壊寸前の状態にあり、1日の死者は過去最多を更新し続けている。

同国では新型コロナの変異ウイルスが全土で拡大しているが、ジャイル・ボルソナーロ大統領は強気の姿勢を崩さず、国民の多くはマスク着用や移動制限に従わない状況が続いている。

24時間の死者数は、今月に入って3度にわたり過去最高を更新している。保健省は10日、新たな過去最高となる2286人の死亡を発表。死者の累計は27万人を超え、米国に次いで世界で2番目に多くなっている。

ICUの使用率は26州のうち22州で80%を突破。南部のリオグランデドスル州では103%を超え、患者がベッドの空きを待たされる状態にある。隣のサンタカタリーナ州でも99%を超え、州全体で症例数が急増する中で崩壊寸前にある。

サンタカタリーナ州の州都フロリアノポリスでは、既に定員を超えた病院もある。この病院の看護師長はCNNの電話取材に対し、「使用率は100%を超え、完全に手に負えなくなっている。ICUを待っていた患者の多くは助からなかった」と語った。

医療従事者によると、症例数が最近になって急増した原因は主に、大晦日(おおみそか)ごろから始まってカーニバルの祝日から現在にかけても続くパーティーや人の集まりにある。その多くは自治体や州の規制を無視して開かれた。

先週はリオデジャネイロ市長が市内の飲食店を対象に、営業時間を午前6時から午後5時までに制限すると発表した。それでも数百人が居残り、同市によると5日~6日だけでも規制違反で230件以上の罰金や閉鎖が命じられた。

「ブラジルの医療制度は崩壊寸前だ」。サンパウロのジョアン・ドリア知事はCNNの取材にそう語り、「パンデミックと戦うための国家的な協調がブラジルには存在しない。大統領と州知事が国民に同じメッセージを伝える必要があるのに、残念ながらそうなっていない」と訴えた。

患者を搬送する医療従事者=8日、ブラジル・ブラジリアの病院

ドリア知事は先週末、不要不急の事業所や商店などに2週間の休業を命じていた。これに対してボルソナーロ大統領は、そうした規制はブラジル経済に打撃を与えて自殺者やうつの増加につながると主張する。衛生対策に従わないことを誇りとする大統領は先週のイベントで、農業従事者が「まるで臆病者のように」自宅にとどまることをしなかったとして称賛。「臆するのはもうやめよう。泣き言はもう十分だ。あとどれだけ泣き続けるつもりなのか。我々は問題に立ち向かわなければならない」と力説した。

今週に入って大統領は、国家的なロックダウン(都市封鎖)を宣言する権限は自分にあるが、決して宣言は出さないと強調。「軍が国民に自宅待機を強制することはしない」とした。

同国では、感染力がさらに強いとされる新型コロナウイルスの変異株が感染を広げているが、これを防ぐ手段はほとんどない。

ブラジルと英国の研究チームの調査によると、北部のマナウス州で確認された変異株の「P.1」は最大で2.2倍の感染力をもつ可能性があり、過去に新型コロナウイルスに感染した人でも感染する恐れがある。

P.1は過去の新型コロナウイルス感染による免疫を最大61%の確率で免れる可能性があることが、この調査で示された。

P.1はブラジルの少なくとも6州で広がっているほか、米国、英国、隣国ベネズエラで確認されている。

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