「強姦されても抵抗するな」 潜入取材班が見た女性密航者の現実 CNN EXCLUSIVE

隠しカメラで撮影した人身売買業者の後ろ姿

2018.02.28 Wed posted at 19:18 JST

ナイジェリア・エド州(CNN) アフリカから欧州を目指す密航者らを狙って横行する人身売買。その実態を調べているCNNの女性ジャーナリスト2人がこのほど、アフリカ側の主要拠点となっているナイジェリア南部エド州に入り、密航者を装って潜入取材を決行した。

エド州からは毎年数万人の難民や出稼ぎ労働者が全財産をなげうって欧州へ向かう。しかしCNNが昨年11月に伝えた通り、アフリカ北部のリビアまでたどり着いたところで業者に拘束され、奴隷として競売にかけられるケースが後を絶たない。

奴隷市場の映像などを伝えた独占報道から3カ月。その後の動向を調べようと、ジャーナリスト2人がもう1人のCNNプロデューサーを通し、人身売買業者との接触を試みた。

2人は裕福な女性を装い、ナイジェリアからイタリア経由でロンドンへ渡るために「VIP」待遇の仲介を依頼したいと持ち掛けた。VIP版では特別に、ナイジェリア北部カノでの出迎えやリビアまでの案内というサービスが付く。

2人は身の上を詳しく語らなかったが、業者は金だけが目当てとみられ、ほとんど質問もせずに契約に応じた。プロデューサーが正体を隠して交渉した結果、リビアに到着した時点で1人当たり50万ナイラ(約15万円)の手数料を支払うことになった。

業者は「男児などに比べて女は手数料が高くつく。リビアでみだらなことをされるなど、女を渡航させるのは難しいから」と話していたという。

VIP版のサービスとして、2人にはコンドームが渡された。仲介業者は、自分で用意していなかったのかとあきれ顔で言い、「リビアの男たちには優しくしてもらう必要がある。分かるか」と問い掛けた。分かっている、と答えると、業者は笑って「当然だ。ただでは何も手に入れられないのが人生だ」「女でよかったじゃないか。男は欧州行きのボートに乗るまで半年待たされることもあるが、お前たちのような女なら翌日には乗れるかもしれない」と話した。

ナイジェリア南部から北へ欧州を目指すルートが延びている

業者はさらに「いいか、強姦されたら抵抗しないことだ」と忠告してきた。

国連児童基金(ユニセフ)が昨年、北アフリカからイタリアへのルートをたどった122人の証言を基にまとめた報告書によると、女性と子どもの半数近くが移動中に性的虐待を受けていた。複数の場所で繰り返し被害に遭ったケースが多いという。

契約成立から1日もたたないうちに、2人はエド州の売春宿で業者と待ち合わせた。詳しい説明もないまますぐに地元のバスターミナルへ連れて行かれ、北へ向かう路線バスに乗せられた。公共交通機関は当局の取り締まりを受けにくいという利点があるようだ。

見送る業者の視界からバスが消えたところですぐに2人は降車。待ち受けていたプロデューサーと合流した。そのまま乗っていれば14時間後にはカノに着き、業者がニジェール行きのバスに乗せてくれることになっていた。そこからさらに北上してリビア南部に入る。昨年の取材で、難民たちが競売にかけられていた街だ。

CNNの2人は幸いにもリビアへの旅を免れた。だが契約成立から出発に至る経緯から分かったのは、その旅がいとも簡単に実現してしまうという事実だった。

潜入取材で迫る密航の実態、ナイジェリア

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