ニューヨーク(CNNMoney) 今月7日にフランスで行われた大統領選の決選投票でエマニュエル・マクロン氏の当選が決まると、欧州連合(EU)のトゥスク大統領はツイッターで「偽ニュースの専政ではなく、自由と平等、友愛を選んだフランスの人々におめでとう」と述べた。トゥスク氏は特には言及していないものの、フェイスブックにはこのコメントが心地よく響いたかもしれない。
フランスの大統領選はフェイスブックが進める偽ニュース取り締まりに向けた取り組みにとって、初めての大きな試金石となるとみられていたからだ。
昨年11月に行われた米大統領選の後、偽ニュース拡散を許したことで多くの有権者に影響を与えた可能性があるとして、フェイスブックは多くの批判を浴びた。フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はこうした指摘を否定したものの、フェイスブックはこうした議論の再発防止に向けて時間を費やしてきた。
フランスの大統領選が近づくなか、フェイスブックは偽のアカウント3万件に対して取り締まりを行ったほか、ジャーナリストらと協力して間違った主張を暴く取り組みを進め、偽ニュースを見抜くための方法を示した広告を地元紙に掲載もした。
フェイスブックはこうした取り組みの一部について、米国やドイツ、英国でも実施している。こうしたやり方はフランスでは一定の成功を収めたようだ。
SNS上のコンテンツの追跡や偽ニュース拡散の警告などを行っている「ニュースウィップ」によれば、選挙前の2カ月間に候補者2人に関するソーシャルメディア上で最も閲覧などがされた記事200本のうち偽ニュースのサイトによるものは約10%だった。
米大統領選では、選挙前2カ月間の候補者2人に関する記事上位200本のうち3分の1以上が偽ニュースのサイトによるものだった。
米大統領選では、ローマ法王がドナルド・トランプ氏に対する支持を表明したといった偽のニュースがいくつか広く拡散したが、こうしたことがなかったからといってフランスの大統領選で偽ニュースが蔓延(まんえん)しなかったというわけではない。
非営利組織「ファースト・ドラフト・ニュース」の研究部門の責任者クレア・ワードル氏は「大打撃となるようなものはなかった。しかし、混乱や疑念を生むような種は数多くあった」と指摘する。
ワードル氏によれば、フランスの有権者を標的にした、手が加えられた動画や写真、ミスリードを促すコンテンツがフェイスブック上に散見された。ある意味では、より見抜きにくい問題だ。
ワードル氏は「2週間前に登録されたウェブサイトに書かれたテキストの記事については、見抜くのは比較的簡単だ。手が加えられた写真となると、かなり難しくなる」と語る。
フェイスブックは現在、ニュースの真偽を検証する「ファクト・チェック」を行う団体に対して、読者が警告を行った記事のデータベースの提供をしている。各団体は検証したい記事を選ぶことができる。記事が偽ニュースだと判明すると、フェイスブックはリンクに対して警告を表示する。