先端技術を短期間に習得 「ナノ学位」にIT業界も注目

最先端の技術を短期間で学べる「ナノ学位」が注目を集めている

2016.01.01 Fri posted at 15:21 JST

(CNN) 学位の取得には時間とお金がかかるもの。だが米検索大手グーグルは、わずか6カ月で取得できる「ナノ学位」という仕組みを後押ししている。

ナノ学位は米国に本拠を置くユダシティー社が考案した。「アンドロイド開発」や「データ分析」など、ITの専門分野に特化した形で最先端の技術を学べるオンライン学習コースだ。

提唱者らによれば、ナノ学位は従来の学位よりも短期間で学べ、専門に特化しており、実践的。変化の激しい今日の環境にあっても、容易に最先端の内容を学ぶことができる。世界レベルの教育を安価で簡単に受けられるのが利点だという。

ユダシティーによると、2014年は1万1000人以上がナノ学位の受講登録を行った。同社の国際部門の副社長、クラリッサ・シェン氏は、「企業が高い関心を寄せている。全体的なマクロ経済の傾向をみれば、専門的なスキルへの需要がなくなることはない」と話す。

現行の大学モデルではこうした需要を満たすことができないため、高い技術が求められる職に就けるよう学生を後押しする別の選択肢が生まれるだろうとの考えだ。

ユダシティーはグーグルとの関係が深い。同社の最高経営責任者(CEO)のセバスチャン・スラン氏はかつて、グーグルの研究開発部門「グーグルX」を運営していた。自動運転車プロジェクトを率いたこともある。

従来の大学では対応できない需要に応えられるという

グーグルの開発者訓練部門で上級プログラム・マネジャーを務めるピーター・ルバース氏も、ユダシティーと協力。「教育を民主化し、世界中で受けられるようにする」という同社の目標と緊密に連携してきた。グーグルとしても他社と連携することで、よりスピード感が増すという。

こうした連携により専門家の知見が得られ、グーグルや交流サイト大手フェイスブックのような企業から講師を招聘することもできるようになった。

学費は従来の学位と比べてはるかに安い(月200ドル=約2万4000円)。ユダシティーが投資を拡大しているインドでは、月9800ルピー(約1万8000円)で講義を受けることができる。また、卒業にあたって費用の半分を返金する試みも各国で行われている。大半の学生は6~9カ月でナノ学位を修了するという。

ナノ学位を履修するのに大学の学位は前提とされていない。ただ、個々のプログラムに関連した受講資格を満たす必要はある。例えば、データ分析のコースを受講したい人は、プログラミングの経験をはじめ、記述統計や推計統計学についての高度な理解が求められる。

世界2位の300万人のソフトウエア開発者がいるインドでは、特にナノ学位への関心が高い。ユダシティーはこのほど、インド有数の財団であるタタ・トラスツとの連携を発表。授業をより広く受けられるようにするほか、将来の雇用者と卒業生の橋渡しをする狙いだ。

講義の内容を最先端に保つことも容易だという

インドで人事関連のブログを運営するジャプリート・セシ氏によれば、求職市場での競争が激しさを増すなか、ナノ学位があれば頭ひとつ抜け出すことができる。「履歴書が10枚送られてきて、5番目や6番目の応募者がナノ学位を持っていれば、こうした人はすでに一定の水準に達していることが分かる」と話す。

人事担当者は、スキルの有無やコーディング能力について悩まずにすむという。IT業界はこうした革新の波の先頭を行っており、やがて他の業界も追従するのではないかと見ている。

ユダシティーのナノ学位はすでに有名企業に認められており、マイクロソフトやアクセンチュアといった企業が採用パートナーに名を連ねている。

また、従来の教育ではIT業界の変化のペースについて行くのが難しくなるなか、講義の内容を簡単に最先端に保てる点も重要だという。シェン氏も指摘するように、2年前に主に必要とされていたのはウェブ開発者としての能力だが、現在はモバイル関連の求人ニーズが圧倒的だ。

シェン氏によれば、企業はこうしたニーズを満たすことができる即戦力の重要性を痛感している。「雇用側はみな似たような人材を獲得しようと競争していることに気付いており、すでに変化の必要性を認識している。人材不足が話題になるとき、それを真っ先に痛感するのは企業だ」と話す。

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