虐殺を目撃、音楽フェスの現場を再訪した生存者の思いは

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現場での救命作業にも携わったシュロモ・ゲンスラーさん/Rebecca Wright/CNN

現場での救命作業にも携わったシュロモ・ゲンスラーさん/Rebecca Wright/CNN

「逃げ場はなかった」

寝泊まりしていたテントへ向かう道すがら、サミュエルさんは惨劇が始まった瞬間を回想した。夜明け直後、ハマスのロケット弾がガザ地区から飛んでくる音が聞こえ、サミュエルさんは飛び起きた。すぐに友人を起こすと、テントから出てコンクリートの防空壕(ごう)を探した。

フェスティバル来場者の多くは寝ているか、まだダンスに興じていた。警報が耳に入らなかった、あるいはイスラエルの防空システム「アイアンドーム」があるから大丈夫だと思い気に留めていなかった。

だが、運任せにしたくなかったサミュエルさんと友人は逃げ出した。身を隠せる場所を探していると、突然パラグライダーに乗ったハマス戦闘員の姿が頭上に現れた。戦闘員は着地する間も空から銃を発砲した。

2人はパニック状態になりながら、フェスティバル会場周辺の開けた農地を駆け抜け、背の高い並木の裏にあった側溝にもぐりこんだ。目の前で何が起きているのかを理解し始めると、サミュエルさんは友人を落ち着かせ、叫び声がもれないように友人の口を手で覆った。他にも「息を殺して」木の陰に隠れている人たちがいたとサミュエルさんは続けた。

「ハマスはあちこちからやってきた。(人々には)逃げ場がなかった」(サミュエルさん)

「ハマスは大勢の人たちを連れて指揮官のところへ行き、殺すべきか拉致するか尋ねていた」とサミュエルさん。「すでに死んだ人にも容赦せず銃を撃ち続けた。死んだ後も、銃弾に当たって遺体が飛び跳ねていた」

サミュエルさんによれば、ハマス戦闘員はおおむねアラビア語を話していたが、時折英語も話していた。サミュエルさんが聴き取れた限りでは、ハマス戦闘員はここまでイスラエル内部に侵入できたこと、これほど多くの人々を攻撃できたことに困惑しつつも歓喜していたという。

身を潜めて数時間後、ようやく軍の車列が到着するのが見え、サミュエルさんと友人は意を決して駆けだした。「血だまり」に足を取られながら、逃げ出した。ようやくイスラエル兵の姿が見え、兵士の助けを借りて安全な場所に避難した。

サミュエルさんは後日知ったが、フェスティバルに来ていた別の男性友人も近くのキブツ(農業共同体)で亡くなっていた。その友人は足に被弾し、斬首された姿で発見された。

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