西側供与の戦車、戦場への配備までに時間がかかる理由は
(CNN) スペインのロブレス国防相はこのほど、戦車「レオパルト2」6両がスペインを出発して1週間以内にウクライナに到着すると明らかにした。一方、米国は来月からウクライナ軍兵士に対して戦車「エイブラムス」の運用訓練を開始し、夏の終わりまでにロシアとの戦争に投入できるようにしたい考えだ。
しかし、戦車の搬送や訓練が行われても、北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナに対して供与した戦車がロシアとの戦争で即座に影響を及ぼすことはないと専門家は警告している。
近代的な主力戦車は複雑な兵器だ。外見は堅牢でゴツゴツしているが戦場での有効性の大部分は、その中心部にある高度な電子機器やコンピューターシステムによっている。戦車に搭載されたシステムが標的を発見し、主砲が放たれる。
戦車の保守や修理、必要な部品の供給を行うには、戦車の乗員から、それを支える兵站(へいたん)まで、きめ細やかな訓練が必要だ。兵站は東部の前線から数百キロ、場合によっては数千キロにおよぶこともあるだろう。
英国陸軍の元将校で現在は防衛産業アナリストのニコラス・ドラモンド氏は、ウクライナ軍の兵士を訓練して供与された全ての戦車を支援できるようにする能力は、使用する戦車の種類よりも重要だといえるとの見方を示した。
兵士の訓練に必要な時間に加えて、戦車の保守も必要で、そのためにはサプライチェーン(供給網)の管理も必要だという。
シンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院の客員研究員を務めるドリュー・トンプソン氏は、エイブラムス戦車は米国製のため、兵站は米国まで伸びる非常に長いものとなると指摘する。
戦闘で消耗したり損傷したりした主要な部品は米国製の部品と交換する必要があり、ウクライナやポーランドにある修理工場に搬送しなければならない可能性がある。ポーランドはエイブラムス戦車の独自保有を進めている。
トンプソン氏によれば、米国防総省は難しい兵站の問題を解決することは得意だが、米国とウクライナの双方にとって危険性が高いとの見方を示した。
トンプソン氏は、欧州の13カ国で採用されているレオパルト戦車を欧州にある兵站の拠点から支援するほうが明らかに望ましいと述べた。
ドラモンド氏によれば、レオパルト戦車の数が多いために支援が容易に行える。4000両以上のレオパルト戦車が現役で運用されているため、さまざまな場所から予備部品を容易に入手することができるという。