ANALYSIS

最新空母進水も関係なし、中国で懸念すべき「船」とは

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南シナ海で演習を行う空母「遼寧」など中国の艦船や潜水艦/Li Gang/AP

南シナ海で演習を行う空母「遼寧」など中国の艦船や潜水艦/Li Gang/AP

この潜水艦は非大気依存推進(AIP)を搭載している。すなわち、ディーゼルエンジンの燃焼に必要な空気を取り込むために何度も水面に浮上する必要がなく、バッテリーで稼働できるのだ。

米軍士官のマイケル・ウォーカー氏とオースティン・クルツ氏は18年、米海軍協会が発行する雑誌「Proceedings」の記事で、「バッテリー運転時のAIP搭載潜水艦はほぼ無音で、シャフトベアリングやプロペラ、船体周辺の水流のノイズしか聞こえない」と記した。

米国防総省の報告書によれば、中国はこの非常に静粛性の高い潜水艦に対艦巡航ミサイルを搭載したものを増産しようと励んでいる。

039型を使った攻撃としては、目標船体の船尾または後部に向かって「航跡追尾」魚雷を発射するという方法が考えられる。魚雷は目標船体の航跡を追跡した後、推進部や操縦部の付近で爆発する。

水上艦は音波を頼りに潜水艦や魚雷を探知するため、航跡追尾魚雷はとくに探知が難しい。

中国の潜水艦の進歩が明るみになったが、米海軍は対潜水艦能力で問題を抱えている。

海軍作戦部長を務めるマイケル・ギルデイ大将は5月、対潜水艦防衛システムが「技術的に機能しなかった」ことを理由に、米海軍艦隊でも最新型の沿海域戦闘艦(LCS)9隻の解体を希望していると議会に語った。

山東省の港に停泊したフェリー/Tang Ke/VCG/Getty Images
山東省の港に停泊したフェリー/Tang Ke/VCG/Getty Images

商用フェリー

破壊的な海軍能力を考えるとき、ぱっと商船が頭に思い浮かぶことはまずないだろう。だが、中国の力はまさにここにある。

中国が台湾を侵略するためには、数十万人から成る侵攻部隊を輸送しなければならないだろう。中には100万人以上の兵士が必要になると分析するアナリストもいる。

様々なアナリストや米政府の報告書は、人民解放軍(PLA)海軍の艦隊だけではこの任務を遂行できないと結論づけている。

だが中国には、瞬時に軍用に転用可能な民間輸送船が大量にある。すでにそれを想定して設計されている可能性もあると言われている。

「中国最大の造船会社は15年、軍民共用化の目的で、中国最大級のロールオン・ロールオフ船(RORO船)を建造したと公表した。中国トップの輸送業者のひとつも同様に軍民共用開発を理念に掲げていると言われる」。米海軍の元潜水艦司令官で、現在は米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」で研究員を務めるトーマス・シュガルト氏は21年に軍事ウェブサイト「War on the Rocks」のエッセーでこう書いた。

さらにシュガルト氏は、黄海や南シナ海で運航する民間輸送会社はすでにPLAの補助部隊に編制されていると付け加えた。

シュガルト氏いわく、数字を打ち込んでみたところ驚異的な結果になったという。同氏の推定によれば、民間の輸送船を活用した場合、中国の排水トン数は110万トンも増えることになる。これは中国の強襲揚陸艦をすべて足した数字のほぼ3倍だ。シュガルト氏によれば、仮に香港のRORO船も駆り出された場合、中国はさらに37万トンの海上輸送能力を得ることになる。

武力で台湾を占領するには十分だろうか。

その点はなんとも言い難い。だがシュガルト氏は、ひとつの問いに対する答えは出ていると言う。

「中国軍がどれほどの輸送(船)を抱えているのか。予想よりもはるかに多いことはほぼ間違いない」(シュガルト氏)

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