太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<下> 汚れたサプライチェーン

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新疆の石河子市にあるダクォ・ニュー・エナジーの施設/Colum Murphy/Bloomberg/Getty Images

新疆の石河子市にあるダクォ・ニュー・エナジーの施設/Colum Murphy/Bloomberg/Getty Images

ダクォのヒー氏は研究チームに対し、「新疆内の全サプライヤーに正式な文書を送り、強制労働や児童労働、差別、セクハラ、従業員への不公平な待遇は一切容認しない方針を明示した」と説明。全サプライヤーから、こうした「中国でも違法」な慣行には関与しないと「書面で正式な確認」があったと述べた。

さらに「『強制労働』には非常に明確な定義がある」「ある企業が特定のプログラムに関与したり特定の補助金を受け取っているかどうかだけで、強制労働の有無を判断すべきではないと信じる。特定の組織または個人に対して今回のような主張がなされる場合、違反の明確な証拠が必要となる」としている。

ダクォはCNN Businessからの質問に対しても回答し、ホシャインを含む新疆のサプライヤーに前述の容認しない方針を伝えていると説明するとともに、ホシャインからはシリコンパウダーなど原料全体の約30~35%を仕入れていると言及した。

ダクォ社は世界の4大太陽光パネルメーカーである中国ロンジ・グリーン・エナジー・テクノロジー、ジンコソーラー・ホールディング、トリナ・ソーラー、JAソーラー各社にポリシリコンを販売する契約を結んでいる。

Sources: Solar Energy Industries Association, “In Broad Daylight: Uyghur Forced Labor and the Solar Supply Chain” by Laura Murphy and Nyrola Elimä, Getty Images, Shutterstock
Sources: Solar Energy Industries Association, “In Broad Daylight: Uyghur Forced Labor and the Solar Supply Chain” by Laura Murphy and Nyrola Elimä, Getty Images, Shutterstock

報告書に引用された企業文書によると、ジンコソーラーはダクォの2番目の顧客で、太陽光パネル(あるいは「モジュール」)を構成するインゴットやウェハー、セルのメーカーとして世界最大級の規模を誇る。同社はインゴットやウェハーのうち42%を新疆で生産しているという。

ジンコソーラーのパネルは流通業者を通じて、世界中の住宅や商業施設、電力会社での太陽光プロジェクトに供給される。公式サイトによると、同社の太陽光パネルはたとえば、カリフォルニア州やアリゾナ州の太陽光発電所で使われているという。

ただ、ジンコソーラーの米国部門は、米国で販売・設置される製品に新疆で調達した部品や材料は含まれていないと説明。米国部門の広報はCNN Businessへの声明で、サプライチェーンの監査や調査を行う措置を「継続的に」実施しており、「強制労働は一切容認しない」方針だと述べた。

再生可能エネルギー発電企業のエスパワーはジンコのパネルを使った太陽光発電所を数件所有する。同社もジンコソーラーが実施するサプライヤーに対する資格付与とトレーサビリティー(追跡可能性)の手順により、購入した製品に強制労働のリスクを伴うものはないと繰り返す。

報告書によると、ダクォの他の3主要顧客のうち、新疆に製造工場を持つのはトリナのみ。ただし報告書によると、同社が労働力移転プログラムに関与しているかは不明だという。

ロンジやJAソーラーのように新疆に施設を持たない企業の場合も、新疆で工場を運営しホシャインから原材料を購入するダクォからポリシリコンを調達している以上、「汚染」されている可能性がある。

トリナ、ロンジ、JAソーラー、ジンコソーラーの中国本社に報告書についてCNN Businessがコメントを求めたが、返答はなかった。

前述のエリマ氏は「この地で投資を続けるのは非倫理的だ。収容所のある国とビジネスはできないし、収容所がある地域ではなおさらだ」と語る。

国際的な対応

太陽光パネルは、より環境に優しいエネルギーへの移行を目指すバイデン米大統領の計画にとって要となる。

バイデン氏が提案した2兆ドル規模のインフラ計画には、気候変動につながる炭素排出をしない燃料で2035年までに全電力を生み出すよう、各州に求める条項が含まれる。こうした移行により、太陽光発電や風力発電への支出は少なくとも倍増するとみられている。


欧州も同様の野心を持つ。欧州委員会の「2030年気候目標計画」では、太陽などの代替エネルギー源に依拠することで、温暖化ガスの排出量を1990年の水準から少なくとも55%減らすと表明。中国も2060年までに炭素排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。

太陽エネルギーの採用が加速する今、サプライチェーンに強制労働が含まれないようにするのが急務となっている。

ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は12日の議会証言で、新疆での太陽光パネル生産に強制労働が関わっている疑いをめぐり、バイデン政権が中国に対する制裁を検討していると述べた。

米連邦議会は現在、「ウイグル強制労働防止法」の法案を審議中。同法が成立すれば、輸入企業が強制労働で作られた製品でないことを証明できない限り、新疆からの製品は禁止されることになる。

法案提出以来、太陽光発電の業界団体「太陽エネルギー産業協会(SEIA)」は米国の太陽光企業に対し、新疆からの部品輸入を避けるよう促してきた。そう語るのは同協会の市場戦略部門幹部、ジョン・スマーナウ氏だ。

スマーナウ氏はCNN Businessに対し、「(新疆の)太陽光サプライチェーンとの関連が指摘される強制労働について懸念がある。そのせいで新疆の製品は非常にハイリスクになっている」と説明。「このリスクに対処する唯一の方法は、強制労働は存在しないと示すことだが、そのためには独立した第三者の監査人が必要となる。新疆でそれは不可能だ」と述べた。

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