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ヘンリー王子夫妻が粉々に打ち砕いた「お姫様」幻想

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ヘンリー王子夫妻の発言は女性の生き方に関する強力なメッセージだったとの見方も/Getty Images

ヘンリー王子夫妻の発言は女性の生き方に関する強力なメッセージだったとの見方も/Getty Images

(CNN) 決して耳に心地よいものではなかったメーガン妃の衝撃の告発だが、7日放送の人気司会者オプラ・ウィンフリー氏とのインタビューで語られたその内容は、今後有益なメッセージを送ることにもなりそうだ。我々は耳を傾けた方がいい。お姫様になることが、女性にとってのあこがれではいけないのだ。

カラ・アライモ氏
カラ・アライモ氏

実際のところ、メーガン妃のインタビューによってお姫様への幻想は相当息の根を止められた。ただ勢いこそ衰えつつあるとはいえ、この幻想はいまだに驚くほどのしぶとさを発揮して我々の社会にとどまり続けている。

メーガン妃の発言から生まれたメディアの見出しは、世界が国際女性デー(3月8日)について深く考えるうえでの最も強力なメッセージを提示してくれる。

英ヘンリー王子の母、ダイアナ元妃がチャールズ皇太子と1981年に結婚した時、74カ国に住む7億5000万人がテレビ中継でその様子を見守った。その後のダイアナ妃の物語はほぼ悲劇に彩られている。夫の不貞、つらい離婚、そしてパパラッチに追いかけられた末の36歳での死。こうした顛末(てんまつ)は、世間一般のお姫様のイメージが放つ輝きをいくらか曇らせたに違いない。ハンサムな王子様と結ばれることが――またはただ結婚することが――、無上の幸福を約束するわけではないのだ。

米国の女性は間違いなく、以後こうした現実に目覚め始めた。作家のレベッカ・トレイスター氏が著書で述べているように、2009年、米国の女性は史上初めて独身が過半数を占めるようになった。

しかし、ふさわしい男性と結婚することが幸福や財産、本当の大人になるための道だとする考えは、依然として我々の文化意識の中に根付いている。トレイスター氏によればこうした考えは、潜在的なメッセージとして有名な文学作品の大半に盛り込まれており、それを若い女性が読む。「大草原の小さな家」シリーズや「赤毛のアン」、「ジェーン・エア」といった作品がそうだ。数々のおとぎ話やディズニー映画については言及するまでもない。筆者自身も小さな女の子の母親であり、幼い子どもをこの手のお話に触れさせないようにするのはほとんど不可能だと断言できる。

筆者自らディズニーの本を娘に買い与えたことは一度もないが、我が家はお姫様に関係する本、おもちゃ、衣装であふれかえっている。よその人がプレゼントしてくれるからだ。当然ながら「シンデレラ」、「白雪姫」、「眠れる森の美女」など数えきれないほどのお話に込められた潜在的なメッセージは、今なお我が国の女の子たちにお姫様へのあこがれを抱かせる。いつか魅力的な王子様に助け出され、彼らの王国で幸せに暮らせるのだと。

しかし、メーガン妃がヘンリー王子との結婚について語った内容は、上記の幻想が実際にはどれだけ危険で間違ったものかをこれ以上ないほど見事に明示した。言うまでもなくメーガン妃は、ハンサムな王子との人生を手に入れた。宮殿で住み込みの職員とともに暮らし、本物のドレスや宝石を身につけることができるのだ(筆者の娘の衣装ケースにはそれらのレプリカが入っている)。ところが今、メーガン妃は世界に向けて、そうした生活が言われるほど素晴らしいものではないと打ち明けた。他人に頼って生きていると、自分の声を失ってしまったように感じる。そう語った。

自分の声を取り戻す手段として、メーガン妃は夫の家族からの自立を求めた。ただその決断は世間の怒りを買い、批判が巻き起こった(恐ろしいことに王室の職員からも標的にされたようだ)。さらに、ヘンリー王子が明かしたように、夫妻は家族から「経済的に断ち切られた」。これからはもっと普通の仕事で収入を得なくてはならない。

言い換えれば、王国への鍵はもうない。おとぎ話のような結末は訪れない。しかしそれに代わる現実は、夫妻にとって実際はるかに期待が持てるようにも思える。おとぎ話のような結末ではないにせよ、案外ハッピーエンドをもたらすかもしれない。2人はこうして一緒にいて、王国から遠く離れた場所で、自分たちの家族を育てているのだから。

もちろん、ヘンリー王子の存在は今回の結果と大いに関係があるだろう。世界に向けて、現代における王子と夫の新たなステレオタイプを提示したことは称賛に値する。妻の心の支えになっている様子は、インタビューからも明らかだった。ヘンリー王子はウィンフリー氏に対し、メーガン妃とともにインタビューを受けられて「とてもほっとしているし、幸せだ」と語った。また、母のダイアナ元妃はチャールズ皇太子から支えてもらっていなかったと認めた。メーガン妃と同じような困難に数多く直面していた時、ダイアナ元妃には誰も頼れる人がいなかった。

一定の見解として、男性は自らの責任でパートナーの女性が抱える精神衛生上の困難を理解し、その対処を助けるべきだとされる。世界中であまりにも多くの女性が、そうした困難に長年声も上げず苦しんでいるが、その原因の大部分はメーガン妃が直面している類いの女性嫌悪だ。この見解は一つのメッセージであり、残念ながら男性は今なおこれに耳を傾け、正しく認識する必要が大いにある。その意味で今回のインタビューは素晴らしい出発点になったと言える。

女性の幸せはふさわしい男性を見つけて結婚する――たとえば王子様と――こと、そして自分自身をその人に結び付けることにかかっているという見解は時代遅れになって久しいが、ここへきて、まさに同時代の注目の的であり特権階級(と言わざるを得ない)でもある夫婦によって粉々に打ち砕かれたように思える。それはおそらく利用し得る最も効果的な手段で実行された。というのもインタビューを見ていたのは、ウィンフリー氏の番組に集う膨大な数の視聴者だからだ。

メーガン妃のメッセージは、裕福だったり王室メンバーだったりする人物との結婚が魅力的な人生に続く魔法の道ではないということを示す。むしろそれでやる気をなくしたり、疎外感を味わったり、ふさぎ込んだりする場合だってある。1人の人間として、一段と成長するのとは真逆の状態に陥ってしまう。この場合は妻として、母としての成長も意味する。自分のアイデンティティーを探り、自分の声を見つける。キャリアの追求も含めた、そうした行動が幸福を運んでくるのだ。

このことが最も力強いメッセージとして少女たちの心に届いた、今年の国際女性デーだった。

カラ・アライモ氏はホフストラ大学の准教授で、広報活動に関する研究を専攻する。世界の広報活動や戦略的コミュニケーションを扱った著書もある。オバマ政権下では財務省国際情勢部門の報道官を務めた。記事の内容は同氏個人の見解です。

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