海鮮市場を含む武漢の市場との関係については「市場に由来するものもあれば、市場とは関係ないものもあった」とエンバレク氏は語った。
一部のウイルス学者は以前から、新型コロナウイルスが2019年12月よりずっと前から出回っていた可能性を指摘していた。同ウイルスの変異と思われる株がこれほど多く見つかったことは、その説を裏付ける初の物的証拠になりそうだ。
WHO調査団は先週、武漢で中国の調査団と共同記者会見を行い、調査結果について説明していた。
エンバレク氏によると、中国の科学チームからは、2019年10月~11月にかけての感染が疑われる症例92例についても情報提供を受けた。患者は新型コロナウイルス感染症のような症状を発症し、重症化していた。WHOは今年1月、この92人に抗体検査を要請し、67人が検査に協力したが、全員が陰性だった。新型コロナウイルス感染症患者の抗体が、1年以上先まで残るのかどうかは分かっておらず、さらなる検査が必要だとエンバレク氏は説明している。
92人の症例は湖北省の各地で2カ月の間に分散して発生していた。通常の集団感染のようなクラスターはなく、2カ月の間に間隔を置いて湖北省内各地で少数の感染が起きていた。この92人の症例が新型コロナウイルスと関係があるのかどうか、クラスターが起きなかったことが何を意味するのかは分かっていない。
WHOの調査団は今後数ヶ月の間に再び武漢を訪れ、調査を継続したい意向。ただし調査日程は確定していない。
次回調査では、1回目の調査で入手できなかった生物学的サンプルを緊急に調べたい意向で、「武漢で入手可能な約20万のサンプルが保管されており、新たな調査のために使用できる可能性がある」とエンバレク氏。ただ、こうしたサンプルは非常に小さく法的検査にしか使えない状況で、調査が技術的に難しい可能性もあると言い添えた。
調査に役立つ可能性がありながら、入手できなかった生物学的検査サンプルは他にもあった。「多くのサンプルがその取得の目的に応じて、数カ月もしくは数週間後に破棄された」とエンバレク氏は話している。