「銃暴力は公衆衛生上の危機」 医務総監が初の勧告

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
米医務総監が銃暴力の危機に関して異例の勧告を出した/Westend61/Getty Images via CNN Newsource

米医務総監が銃暴力の危機に関して異例の勧告を出した/Westend61/Getty Images via CNN Newsource

(CNN) 米国の公衆衛生政策を指揮するマーシー医務総監は25日、国内の銃暴力を公衆衛生上の危機と位置付け、緊急の行動が必要だとする勧告を出した。

医務総監が銃暴力と、それが被害者や地域社会、精神衛生にもたらす「重大な結果」に焦点を当てたのは、米国史上初めて。

マーシー氏はCNNとのインタビューで「問題は過去10~20年で悪化し、子どもや10代の青少年では銃暴力が死因のトップになっているほどだ。これを決してニューノーマル(新たな常態)ととらえてはならない」と強調した。

銃規制は国を二分する問題だと認めたうえで、政治の領域から公衆衛生の領域に転じるための勧告だと説明した。

そのうえで、喫煙や自動車事故への対策と同様、銃暴力の流れを変え得る予防、規制措置を列挙している。

同氏は「これは手に負えない問題、解決できない問題ではないかと心配する声も多く聞こえるが、そんなことはない」と主張した。

2022年の暫定データによると、銃関連のけがで死亡した人は、全米で4万8000人あまり。この中には殺人や自殺、過失が含まれ、自殺が56%を占めた。

勧告によれば、米国内での銃に関連する死亡率は増加の一途をたどり、21年に30年来の最大を記録した。その後、殺人による死者は減少に転じたが、自殺者はほぼ横ばいのまま。

銃乱射事件で死亡したケースは、銃に関連する死者全体の1%前後にとどまっている一方、事件の件数は増加傾向にある。

米カイザー・ファミリー財団(KFF)が昨年4月に実施した世論調査によると、自分や家族が過去に銃関連のトラブルを経験したと答えた人は、成人の半数以上を占めた。「銃で直接脅されたことがある」との回答は20%、「親族が銃で死亡した」との回答もそれに近い割合に上った。

マーシー氏によると、銃暴力の影響は特に非白人で目立つ。22年のデータでは、銃による殺人の発生率は全年齢層で黒人が最も高かった。

また、人口の14%を構成する黒人の子どもと青少年が、銃による死者全体の半数を占めていた。

1~19歳の年齢層全体でみると、銃による死者は100万人当たり36.4人。これに対してカナダは6.2人、オーストラリアは1.6人、英国は0.5人にすぎない。

銃関連の過失による子ども、青少年の死者を分析すると、56%が自宅で起きていた。銃の保管方法に問題があることが分かる。詳細が判明しているケースのうち、74%で銃に弾が込められ、76%ではロックをかけずに保管されていた。寝室のスタンドや枕、マットレスの下、ベッド上に置いてあった例が多い。

銃暴力は身体的だけでなく、精神的な被害ももたらす。特に子どもたちの間で恐怖感が強く、多くが学校での銃暴力を心配していると、マーシー氏は指摘する。

一方で銃による自殺を人種別にみると、45歳以上の年齢層では白人、若者では先住民系の発生率が最も高かった。

マーシー氏の勧告は、銃暴力を抑えるための研究費を増額し、データ収集や予防策に予算を集中するよう呼び掛けた。また、銃の保管条件や攻撃的武器の禁止、身元調査や回収策をめぐる法の整備を求め、車や農薬などの製品と同様の規制が必要だと強調している。

マーシー氏の報告を受け、医学界などからは、かつて医務総監が喫煙の危険性を警告した時と同様の影響力を期待する声が上がった。

一方、銃規制に強く抵抗する全米ライフル協会はX(旧ツイッター)上で、「合法的な銃所有者に対してバイデン政権が仕掛けている戦いの延長にすぎない。米国で犯罪の問題を引き起こしているのは犯罪者だ」と反発を示した。

メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「米国の銃問題」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]