帆に巨大なソーラーパネルを搭載した電気クルーズ船、2030年の進水目指す
「シャワーを10分長く使用したり、エアコンをフル稼働させたりすることで、自分がどれだけのエネルギーを消費しているのかをゲストに意識してもらいたい」とラーソンフェッデ氏は述べている。
環境に配慮した海運業
世界の海運業を規制する国連機関の国際海事機関(IMO)によると、世界の温室効果ガス排出量の約3%を海運業が占めている。18年、IMOは50年までに海運業界の温室効果ガス排出量を50%以上削減(08年比)させるという目標を設定した。
こうした動きにより、環境に配慮した帆船が相次いで登場している。大西洋を横断する自動車運搬船「オーシャンバード」や、格納式の帆を持つさまざまな貨物船、オランダの造船所オーシャンコが手掛けるスーパーヨット「ブラックパール」、フランスのアトランティーク造船所が計画する折りたたみ式の帆を搭載したクルーズ船などだ。
だが、これらのほとんどは化石燃料を燃料とするエンジンに頼ることになる。ラーソンフェッデ氏によると、フッティルーテン・ノルウェーが建造予定の船は、安全上の理由から予備エンジンを搭載するものの、アンモニアやメタノール、バイオ燃料などのグリーン燃料で稼働する計画だ。
フッティルーテン・グループは、以前から持続可能な海上輸送をうたっている。フッティルーテン・エクスペディションズは19年、世界初のハイブリッド燃料型クルーズ船を就航させた。現在、残りの探検クルーズ船もハイブリッド燃料型に転換中だという。
「私たちは海や環境に依存している。きれいな海、きれいな港、地元のサプライヤー、これらが我々の商品だ」とフェリンCEO。「海運業界はサステナビリティー(持続可能性)への取り組みが遅すぎるし、野心的ではないと感じている。だから我々は持続可能性を推進し、この分野をけん引していきたいと考えている」と述べた。
フッティルーテン・ノルウェーは今後2年間、提案された技術をテストする。26年に設計を確定し、27年に造船所での建造開始を目指す。最初の船は30年にノルウェー海域に進水予定。同社はその後、すべての船舶を段階的にゼロエミッション船に転換していく計画だ。