デンマークとドイツ、世界最長の沈埋トンネルを建設中

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トンネルの構成部分が組み立てられる作業場の様子。6月8日に屋根が完成した/Femern A/S

トンネルの構成部分が組み立てられる作業場の様子。6月8日に屋根が完成した/Femern A/S

移動時間の短縮

正式名称を「フェーマルン・ベルト固定連絡路」というこのトンネルは、世界最長の鉄道道路併設トンネルでもある。片側2車線の自動車道路(間に作業用通路が設けられる)と2本の鉄道線路で構成される予定だ。

「今はコペンハーゲンからハンブルクまで、電車だと約4時間半かかる」と語るのは、フェーマルンA/Sのイエンス・オーレ・カスルンド技術主任だ。「トンネルが完成すれば、2時間半になる」

「現在はみな飛行機で両都市を移動しているが、将来的には電車を使うほうが便利になる」と同氏は続けた。車での移動も、フェリー乗船の待ち時間が無くなることを考えれば、今より1時間ほど短縮される。

車や鉄道のメリットだけでなく、貨物トラックや貨物列車にもプラスの点があるとカスルンド氏は言う。スウェーデンと中欧を結ぶ陸路が今より160キロメートルも短くなるのだ。

現在デンマーク経由でスカンジナビア半島とドイツを行き来するには、フェリーでフェーマルン・ベルト海峡を越えるか、シェラン島、フュン島、ユトランド半島をつなぐ橋を渡って長い距離を移動するかのいずれかだ。

建設開始

プロジェクトの誕生は2008年にさかのぼる。この年、ドイツとデンマーク間でトンネル建設協定が結ばれた。それから10年あまり、両国で必要な法律が可決され、建設に向けた地質工学上の調査や環境負荷調査が行われた。

デンマーク側では滞りなく進んだが、ドイツではフェリー会社、環境団体、地元自治体など多くの組織が不当競争や環境・騒音問題を理由に、プロジェクト承認に反対する訴えを起こした。

21年秋にはドイツ沖で浚渫作業が始まった/Femern A/S
21年秋にはドイツ沖で浚渫作業が始まった/Femern A/S

20年11月、ドイツ連邦裁判所は訴えを却下した。「建設中の環境モニタリングや騒音、堆積(たいせき)物の流出など、いくつか条件付きでの裁定だったが、我々もある程度予測済みで覚悟はしていた。環境への影響を可能な限り減らす努力はたしかに必要だと思う」とビンセントセン氏も語っている。

現在はデンマーク側に仮設ドックが完成し、プロジェクトはトンネルを収容するトレンチの掘削や構造体を製造する工場の建設など、いくつかの行程が進行中だ。構造体はいずれも全長217メートル(世界最大のコンテナ船のおよそ半分)、幅42メートル、高さ9メートル。重さは7万3000メートルトンで、1万3000頭以上のゾウの体重に匹敵する。

「製造ラインは6つで、工場内には3つの作業場が設けられる。そのうち最初の1つは95%まで完成した」とビンセントセン氏。構造体は深いところで水深約40メートルの海底に設置される見通しで、はしけとクレーンで所定の場所に移動される。位置調整には3年近い時間を要する。

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