スペイン僻地の空港、旅客なくても大わらわ 各社の機材保管でスペース枯渇

旅行需要の激減を受け、スペイン僻地の空港が機材の保管業務で多忙を極めている/JOSE JORDAN/STR/AFP via Getty Images

旅行需要の激減を受け、スペイン僻地の空港が機材の保管業務で多忙を極めている/JOSE JORDAN/STR/AFP via Getty Images

(CNN) 「スペイン有数の忙しい空港は?」と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのはマドリードやバルセロナだ。通常の状況なら、これは正しい答えだろう。

だが、スペインの空港稼働ランキングでは最近、東部アラゴン州のテルエル空港が首位に浮上した。現在が異例の時期であることが浮き彫りになった形だが、テルエル空港自体、典型的な空港ではない。

スペイン東部の高地には風の吹きすさぶ大草原地帯が広がり、忙しい空港が立地するとは想像しにくい。そもそも、この辺りは欧州で最も人口密度の低い地域のひとつだ。

例年スペインを訪れる数千万人の観光客の旅程に、テルエル地方が組み込まれることはめったにない。スペイン人の目からしても、このひなびた人里離れた地域は謎めいたオーラをまとっている。地名を耳にしたことのある人は多いが、実際に訪れた人はほとんどいないという、そんな場所にふさわしい雰囲気だ。

ディープストレージ

新型コロナウイルスの感染拡大や旅行業界への余波を受け、航空業界内でテルエル空港の認知度が高まったことは間違いない。

というのも、テルエル空港の利用者は旅客ではなく、航空機自身だからだ。

乾燥した気候のおかげで国内有数のハムの産地になったテルエルだが、最近はその乾燥により、機材を過剰に保有する航空会社にとっても第一の選択肢となっている。

テルエル空港に駐機する各国航空会社の機材/David Ramos/Getty Images
テルエル空港に駐機する各国航空会社の機材/David Ramos/Getty Images

独航空大手ルフトハンザの広報担当者はCNNの取材に、テルエルの気候は「ディープストレージ」に適していると指摘する。ディープストレージとは、航空機を大規模整備なしで長期保管しておき、後に運航を再開した場合に備え、可能なかぎり良い状態に保っておくことを指す。

テルエル空港に施設を構えるのは、仏航空グループのターマック・アエロセーブだ。航空業界向けに保管や整備、再利用といったサービスを手掛けており、南仏でも同様の施設を2つ運営している。

このうち、ピレネー山脈のフランス側に位置するタルブでは昨年後半、いち早く完全退役したA380型機2機の解体が行われた。2機はいずれもドイツのリース会社の保有機。

旅客需要が落ち込み、旅行業界の先行きにも暗雲が漂うなか、航空会社の間では4発大型機であるA380の退役を前倒しする動きが目立つ。退役機の多くは最終的にテルエルに行き着く。

スペースの枯渇

そうした航空会社の一つ、仏エールフランスは、保有する全224機のうち180機を保管状態に置いている。保管機の大半はパリやトゥールーズにある国内拠点にとどまっているが、一部のA380はテルエルに移された。

テルエルにはルフトハンザも3機のA380を移送していて、エールフランス機と共に保管されることになる。ルフトハンザはまた、保有する全てのA340-600型機をテルエルに送り、今後2~3カ月かけて退役を進める予定。仮に運航を再開する場合でも、少なくとも1~1年半先になるとみられている。

新型コロナの感染拡大に伴う旅行重要の激減を受け、保管対象となる機材の量が大幅に増えた/David Ramos/Getty Images
テルエル空港に駐機する各国航空会社の機材/David Ramos/Getty Images

大型機の相次ぐ到着により、ただでさえ大きな負荷がかかっていたテルエル空港の作業量はいっそう増大する。テルエル空港で一度に保管可能なのは125機までだ。

テルエル空港では過去にも、2015年に当時ロシア第2の航空会社だったトランスアエロ航空が経営破たんした際などに活動量が急増したことがあるものの、フル稼働は今回が初となる。

ターマック・アエロセーブのテルエル責任者、ペドロ・サエス氏は6月17日、CNNの取材に対し、新型コロナ流行前に保管や駐機していた機体は66機だったが、現在はこれに43機を加えた109機を扱っていると明かした。

航空機の整備方法

テルエル空港では現在、2400万ユーロ(約29億円)規模の拡張プロジェクトを計画中。航空機の塗装施設や、A380を2機同時に保管できる大型格納庫も建設する予定だが、今回は間に合わない。

このため空港の管理担当者は、既存スペースの最適な活用方法を模索している。保管機のうち25機を既に未舗装の敷地に移したほか、一時帰休中の従業員も呼び戻した。

テルエル空港の大型格納庫/JOSE JORDAN/STR/AFP via Getty Images
テルエル空港の大型格納庫/JOSE JORDAN/STR/AFP via Getty Images

エールフランスの推計によると、1~3カ月間の「アクティブストレージ」の間、航空機は1機あたり3段階、計150時間あまりの作業が必要となる。

最初の準備段階としては、エンジンや空気孔など重要部分の保護、液体類の排出、主翼や降着装置への潤滑油の注入が行われる。

これに続く繰り返しの点検では、タイヤへの圧力を減らす目的で航空機を定期的に動かしたり、エンジンや電気系を頻繁に再起動したりする。

そして航空機の再就航に当たっては必ず、運航再開前に2日間をかけて保護材の取り外しや追加点検を行う。

人里離れた独特の雰囲気を持つテルエルは、乾燥した風土で知られる/PIERRE-PHILIPPE MARCOU/AFP via Getty Images
人里離れた独特の雰囲気を持つテルエルは、乾燥した風土で知られる/PIERRE-PHILIPPE MARCOU/AFP via Getty Images

テルエルのような空港では移動制限を追い風に稼働率が上昇してきたが、皮肉なことに、それが制限要因にもなっている。

クルーズ業界と同様、航空機を保管先まで飛ばした乗員はそこで足止めされるか、良くても帰路で大変な思いをしそうだ。

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