AIのリスクは現実だが対応可能 ビル・ゲイツ氏が見解
(CNN) 米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が人工知能(AI)のリスクについて、他の業界トップほどは懸念しない姿勢を示した。
ゲイツ氏は11日のブログの中で、AIに関する最大級の懸念として、偽情報が拡散される可能性や雇用が奪われる可能性を挙げた。しかしそうしたリスクは「対応可能」だと述べ、「一大イノベーションがコントロールしなけらばならない新たな脅威をもたらしたのは、今回が初めてではない」「かつてもあった」と指摘した。
ゲイツ氏はAIを、かつて社会の転換をもたらした過去の出来事になぞらえる。例えば車が登場したことで、シートベルトや速度制限、運転免許といった安全対策が必須になった。イノベーションは最初のうちは「多大な動揺」を生じさせるが、社会は「やがて良くなる」と同氏は言う。
AIの急速な進化に対しては業界の有力者が警鐘を鳴らしており、業界を主導する学者や有名人が署名して5月に発表した声明では「AIによる絶滅リスクの軽減は、パンデミック(感染症の世界的大流行)や核戦争といった社会的スケールのリスクと並び、世界的な優先課題としなければならない」と訴えた。
一方ゲイツ氏は、AI絶滅の筋書きについて「パニック」に陥るべきではないとの見解で、今年3月のブログにこう記していた。「マシンが人間を脅威とみなしたり、自分たちの関心は人間とは異なるという結論を出したり、単純に我々のことを気にかけなくなったりすることはあり得るか? 可能性はある。だがこれは過去数カ月のAIの進展前に比べると、差し迫った問題ではなくなった」
11日のブログでは、ディープフェイクやAIが生成する偽情報によって選挙や民主主義が揺らぐ可能性を指摘する一方で、「AIはディープフェイクを創り出すと同時に発見する助けにもなる」として期待を示し、「自分が見たり聞いたりしているものが本物ではないことを誰もが分かるよう」、ディープフェイクの使用や表示に関する法律を明確化する必要があると説いている。
さらに、ハッカー集団や国家がAIを利用すればサイバー攻撃が容易になる可能性があることにも懸念を表明。関連するサイバーセキュリティー対策の開発を促し、各国政府に対しては、AIについても国際原子力機関(IAEA)のような国際機関の創設を検討するよう促した。
ゲイツ氏はさらに、AIによる雇用の喪失や、学習に使われるデータに偏見が入り込むこと、さらには子どもたちの学習に与える影響にも言及している。
「1970~80年代にかけて電子計算機が普及した時のことを思い出す」「生徒たちが基本的な計算方法を学ぶのをやめてしまうことを心配する教師がいた一方で、この新技術を取り入れて、計算の背後にある思考力に照準を合わせる教師もいた」
ゲイツ氏は、移行期に「不安を感じるのは自然なこと」だとした上で、自身は未来に対して楽観的だと言い添え、「新技術によって生じた課題が解決可能なことは、歴史が示している」とした。
その上で、AIを「我々の生涯で目にする中で、最も変革的なイノベーション」と位置付け、「健全な論議は、この技術のメリットおよびリスクについて、誰もが知識を持っているかどうかにかかっている」と記している。