Luxury

首に巻く時計から文字盤も針もない時計まで――ハイブランドが生み出す最新トレンド

2024年のグラミー賞授賞式でテイラー・スウィフトは首に時計を着けて登場した

2024年のグラミー賞授賞式でテイラー・スウィフトは首に時計を着けて登場した/Gilbert Flores/Billboard/Getty Images

ジュネーブ(CNN) ラッカーで仕上げられた光沢のある長方形のケースに、豪華なゴールドチェーンと調和する、ゴールドにはめ込まれた20個のバゲットカットのイエローベリル――。フランスの高級ブランド、シャネルの最新作は、一見すると口紅のように見えるが、これは単なる口紅ではない。クリックすると口紅のケースが開き、真ん中に時計が現れる仕組みだ。

シャネルの「キス ミー」はネックレスにもリップスティックにも見えるが実は時計だ/Chanel
シャネルの「キス ミー」はネックレスにもリップスティックにも見えるが実は時計だ/Chanel

「キス ミー」と名付けられたこの時計は、シャネルが展開するカプセルコレクションの一部であり、4月にジュネーブで開催された時計見本市「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ」で発表された。

美とホロロジー(時計学)の融合をテーマにした同コレクションには、「魅惑的な瞳」を創業者ガブリエル・シャネル自身のコールで縁取られたまなざしと再解釈した魔よけのようなペンダント「プロテクト ミー」や、シャネルが愛したビザンティン様式を取り入れた、ルベライトのカボションと五つのピンクトルマリンがあしらわれたお守りのようなネックレス「ギブ ミー ラック」などがあり、どちらのペンダントも裏返すと時計が現れる。

文字盤と針を特徴とし、手首に着けるためのストラップが付いている従来の腕時計とはほとんど類似性のない時計の制作は、クラシックなスタイルで知られるシャネルにしては意外な動きに見えるかもしれない。

しかしこれは、今拡大しつつあるトレンドの一部であり、その流れはレッドカーペットにも広がっている。昨年のグラミー賞でテイラー・スウィフトが首に巻いていたロレイン・シュワルツによるカスタムメイドのウォッチチョーカーはその好例だ。

競売大手サザビーズの腕時計担当セールスディレクター、マノン・ハジエ氏はCNNとの電話インタビューで「これは時間を身に着ける新たな方法であり、個性と独自性をたたえるものだ」と述べた。

「それが時計だとすぐには分からない」

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ」には、変わった形状や大きさの時計が数多く出品された。

ヴァンクリーフ&アーペルは、特に人気のあるスタイルの一つ「カデナ」の誕生90周年を記念し、新たにダイヤモンドをちりばめたエディションを発表した。

ヴァンクリーフ&アーペルの時計「カデナ」はブレスレットとしても活躍する/Van Cleef & Arpels
ヴァンクリーフ&アーペルの時計「カデナ」はブレスレットとしても活躍する/Van Cleef & Arpels

カデナは、南京錠から着想を得た大胆なデザインが特徴で、シャックルのような留め金を備え、時計というよりもブレスレットのように見える。

「見た瞬間、それが時計だとすぐには分からない。そこがモダンで魅力的なのだ」と語るのは、ヴァンクリーフ&アーペルの研究開発部門の責任者ライナー・ベルナール氏だ。ベルナール氏は、カデナが人々を魅了し続ける理由について、宝石と時計という二つの顔を持っている点を挙げる。

同様に、カルティエの象徴的なパンテール(ヒョウ)が前脚を伸ばし、獲物に飛びかかる姿をデザインし、ダイヤモンドをあしらったブレスレットも、一見すると大胆な装飾品に見える。

カルティエの時計「パンテール」は同ブランドの象徴パンテールが飛びかかろうとする姿をモチーフにしている/Cartier
カルティエの時計「パンテール」は同ブランドの象徴パンテールが飛びかかろうとする姿をモチーフにしている/Cartier

しかしよく見ると、パンテールは、このブレスレットをはめている手首を傾けた時にだけ現れる控えめな文字盤の向かい側に配置されている。

この新作のジュエリーウォッチ「パンテール」には、ゴールド仕様のシンプルなバージョンもあり、いずれも昨年発表された「リフレクション ドゥ カルティエ」のシルエットを踏襲している(このモデルは、パンテールの代わりにミラーフィニッシュを特徴とし、その名が示す通り、鏡に映った時計で時間を読み取る仕組みになっている)。

カルティエの「時計らしくない時計」への欲求は、メンズ部門にも広がっており、その象徴と言えるのが「タンク ア ギシェ」の復刻だ。

カルティエの「タンク ア ギシェ」には文字盤も針もない/Cartier
カルティエの「タンク ア ギシェ」には文字盤も針もない/Cartier

一見ミニマルだが、この新モデルには文字盤も針もない。あるのは時間と分を数字で表示する二つの小さな開口部、すなわち「ギシェ(切符売り場などの窓口を意味するフランス語)」のみだ。クラシックな「タンク」を再解釈したモデルとして1928年に発売されたタンク ア ギシェが、2025年に限定版としてイエローゴールド、ローズゴールド、プラチナのバリエーションで復活する。

ペンダントウォッチ

控えめなデザインを好む人々は、ペンダントウォッチに魅力を感じるかもしれない。

ペンダントウォッチは、「狂騒の20年代(米国の1920年代)」に流行し、当時はローウエストのフリンジドレスを着たボブヘアのフラッパーガールたちのしなやかな体で揺れていたが、ハジエ氏によると、最近、変わった形の時計への関心が高まる中、再び注目を集めているという。

ハジエ氏はこのトレンドの要因としてノスタルジーを挙げるが、時計メーカーが女性顧客とその多様な好みにいっそう注目していることも背景の一つと考えている。

実際、ここ数年、ジャガー・ルクルトや、よりスポーティーなリシャール・ミルまでもが、首からかけるタイプの時計を発表している。

シャネルの「プルミエール」の新作は特に長いチェーンが特徴で、手首に巻くことも、首にかけることもできる/Chanel
シャネルの「プルミエール」の新作は特に長いチェーンが特徴で、手首に巻くことも、首にかけることもできる/Chanel

一方、シャネルが同ブランドを象徴する八角形の文字盤を持つ腕時計「プルミエール」に遊び心を加えた新モデルは、手首だけでなく首にも巻けるようにデザインされたゴールドとレザーのロングチェーンを特徴としている。

原文タイトル:The latest trend in watches might surprise you(抄訳)

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