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ポルシェ70周年、愛されるデザインの誕生秘話を聞く

第2次世界大戦の余じん冷めやらぬ中、ポルシェは同社初の量産車の開発に着手した。「356」は1948年6月8日に初めて公道走行を許可され、現代スポーツカーのあり方を再定義するデザインの流れの端緒となった。

ポルシェ初の自動車誕生から70周年にあたる今年、取材班は新旧のデザイナーに話を聞き、時代を象徴する3つのモデルの設計秘話を自分たちの言葉で語ってもらった。

ピンキー・ライ氏が語るポルシェ996

大半の自動車プロジェクトと同様、996の開発は定期的なモデルチェンジの一環として始まった。ただ、この時は財務面で追い詰められていた。前モデルの993は初年こそ順調だったものの、964からそれほどパワーが向上せず、BMWやアウディとのライバル争いも激しさを増し、売り上げが低迷し始めた。我々は立て直しが必要だった。

まずはビジュアル面でメッセージを打ち出す必要があった。これ以前のモデルチェンジでは前モデルとの違いがほとんど分からない状態だったが、我々としては何か劇的なこと、革命的とすら言えることをやらねばならなかった。

996の開発場面/Courtesy of Porsche
996の開発場面/Courtesy of Porsche

993から大きく変わった点の一つはヘッドライトだ。今でも受け入れがたいと感じる人も中にはいるだろう。常に丸形のヘッドライトを備えていた従来の911とは異なり、より彫刻的なアプローチを採用し、ボンネットの線に合わせた形状にした。

同様に車体についても、前後のバンパーの輪郭を非常になめらかにした。こうした流れるようなラインを全体のデザインに組み込み、車そのものが一つの彫刻であるかのような外観を実現した。インテリアも純粋に幾何学的なものからもっと彫刻的な形状の計器やスイッチへと変わり、全体的に新しい製品となった。

ゆったりした快適な作りにしたいとの考えから、車のプロポーションは若干大きめにした。エンジンを空冷から水冷に切り替え、配管用のスペースを増やす必要もあったため、大きめのサイズの採用は技術面でもちょうど良かった。

996はポルシェで最も商業的に成功した車種の一つとなった/Pinky Lai
996はポルシェで最も商業的に成功した車種の一つとなった/Pinky Lai

私の取り組みに対しては抵抗も大きく、プロジェクトは一時頓挫しかけた。空力調整がうまくいかず、ラップタイムを下げることができなかった。車の安定性を保つためにはダウンフォースを増やす必要があり、風洞にこもって解決策を模索した。

多くの同僚がプロジェクトはお蔵行きだと考えたところで、答えは可動式のリアスポイラーにあると気付いた(こうした調節可能なフィンにより、ダウンフォースの量を変化させることが可能になる)。このアイデアで必要となる予算が増えた。

996はポルシェ史上有数の象徴性と影響力を持つモデルだと思う。今日でも見られる可動式スポイラーや水冷エンジンの端緒となり、デザイン賞も数多く受賞した。

フランス南東部サントロペでのマスコミ発表時には、マイケルジョーダンがホテルの駐車場に入ってきて車を見ていった。彼は、家に帰ったら2台買うと言ってくれた。1台は自分に、そしてもう1台は妻にと。デザインに対するほめ言葉でこれ以上のものはない。

マイケル・マウアー氏が語るポルシェ918スパイダー

我々のデザインの大枠は、環境への責任とスーパースポーツカーとしての性能は必ずしも相いれないものではないことを世界に示すことだった。2000年代後半の当時、環境との関連でスポーツカーブランドの将来をめぐる議論が非常に盛んに行われていた。同時に、フォルクスワーゲンとの経営権をめぐる駆け引きで、ポルシェ自身の先行きも不透明だった。

Courtesy of Porsche
Courtesy of Porsche

開発では未来志向のデザインを追求する一方、ポルシェだと一目で分かる車にしなければならなかった。918にはモダンなデザイン要素を取り入れたが、同時にポルシェの歴史的なレースカーに根ざす要素も見つかるだろう。

私にとって918で最も興味深くユニークな側面は、その後部だ。古いポルシェのレーシングカーを鮮やかに想起させる一方で、非常にモダンでもある。排気筒を他のどの車と異なる位置に配置するという発想はデザイン部門から出たものだが(918スパイダーの排気筒は後部上側から突き出している)、エンジニアの側でも技術的な観点から同じ考えに至った。重量を減らすとともに、パフォーマンスを上げることができ、部門間の協力が最高の形で結実した。

918スパイダーはニュルブルクリンクのレースコースで7分を切る記録を達成/Courtesy of Porsche
918スパイダーはニュルブルクリンクのレースコースで7分を切る記録を達成/Courtesy of Porsche

918スパイダーはコンセプトカーとして出発した。しかしポルシェでは常に、コンセプトにも非常に高い水準での実現可能性を求めている。コンセプトカーはときに際立った特徴を有し、この車種は(2010年ジュネーブモーターショーで)お披露目することになった。何をなすべきかは誰でもわかる。我々はレーサーの精神と責任ある機械屋のプライドを併せ持ち、問題を解決していった。

918はニュルブルクリンクのレースコースで7分を切ることに成功した(公道走行車としては当時の最速記録だった)。ニュルブルクリンクでの記録は常に開発プロセスの一部であり、ポルシェの性能を示すことから非常に重要だ。我々の車はライバルよりも攻撃的に見えないかもしれないが、極めて高性能だ。

ハーム・ラガーイ氏が語るポルシェ997

911の新モデルを設計する機会ともなれば、プロフェッショナルなやり方に徹することになる。ただ、同時に気持ちで取り組む仕事でもあり、心のあり方そのものになってくる。ポルシェの精神と文化をくぐり抜けていれば、それが体に染みついている。

ポルシェ997/Courtesy of Porsche
ポルシェ997/Courtesy of Porsche

997の前モデルである996は売り上げが好調で、開発予算は劇的に変化していた。1990年代初頭に比べ、新たにできることが数多くあった。デザイナーとしては大きな一歩を踏み出さねばという意識になるが、方向性を誤ったり行き過ぎたりすべきではない。ルーフラインは同じであるべきだが、フェンダーやドア、詳細な部分はより自由度が高かった。

ヘッドライト周りは全体的に異なる仕様になった。当初の楕円(だえん)形に回帰することができ、フロントエンドのデザインは一新された。リアエンドの形状や幅、パワーも大きく向上した。

ホイールは幅と直径の両面で大きくなった。各種の技術的な問題が生じないよう外径は同じに保つ必要があったが、リム径を拡大することで、より刺激的なスタイリングを可能にする道が開けた。

997ではタイヤの幅と直径が大きくなった/Courtesy of Porsche
997ではタイヤの幅と直径が大きくなった/Courtesy of Porsche

内装はそこまで興味関心を引かないが、やはり重要であることに変わりはない。以前の911は非常に象徴的ではあるが人間工学にあまり基づいているとは言えず、制御装置の並びもわかりにくかった。5つの計器やエンジンキーが左手の方にあるデザインは911の愛好家からは信仰のような愛され方をしていた。

  
      
パトリック・デンプシーのレーストラックへの愛

もちろん、911の内装の象徴的な部分は踏襲する必要があるが、当時は予算が大幅に増え、デザインを変える機会となっていた。内装を大きく変化させ、新しいコンセプトや人間工学、スタイリング要素を取り入れることができた。細かな部分や材質にもよりお金を投入することができた。

997はデザイン上の哲学を最も緻密に解釈したモデルであり、史上最も重要な911の一つに数えられている。1990年代初頭に会社の業績を好転させることに注力していた我々にとっては、997が商業的にこれほど成功したことは驚きではなかった。

インタビューはCNNのオスカー・オランド記者が聞き取りをした内容を文章の長さや明確性の観点からまとめたものです。

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