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「ゴッホの耳消しゴム」販売中止、英美術館「無神経」と非難の的に

ゴッホの自画像展のギフトショップで売られている一部商品に非難の声が上がっている

ゴッホの自画像展のギフトショップで売られている一部商品に非難の声が上がっている/Tristan Fewings/Getty Images

英ロンドンの美術館が、オランダの巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ展に関連して販売していた土産品の一部を館内のギフトショップから撤去した。同館に対しては、無神経で心の健康の問題を軽く扱いすぎるといった批判の声が高まっていた。

ロンドンのサマセットハウス内にあるコートールド美術館では、「ファン・ゴッホ自画像」展が5月まで開かれている。

ここ数日は、ギフトショップやオンラインストアで販売された一部の商品をめぐって批判の的になっていた。中でも耳の形をした消しゴムは、ゴッホが自分の耳を切り落としたという事実にまつわるものらしい。ゴッホはその後、フランスのサンレミーにあるサンポールドモーソル精神病院で1年を過ごした。

ファン・ゴッホは生涯を通じて心の健康問題に悩まされ、37歳だった1890年、自らに銃口を向けた。

同美術館は14日、CNNに声明を寄せ、「コートールド美術館のショップとオンラインストアで販売していた少数の品目について懸念が浮上した」と認めた。

「コートールドは心の健康の問題を非常に深刻に受け止めている。こうした品目を置くことで、この大切な問題に対する無神経な態度や否定的な態度を示す意図はなかった」。声明はそう記している。

「問題の品目は展示会コレクションのごく一部にすぎない。こうした懸念を考慮して、この品目はストアでの販売を中止する」

同美術館は、具体的にどの品目が売り場から撤去されたのかは明らかにしていない。しかし問題の消しゴムはオンラインショップ経由で購入できなくなった。

英紙メール・オン・サンデーによると、同美術展では「フワフワの泡が好きな苦悩するアーティスト」に最適という触れ込みで、5ポンド(約780円)の石けんも販売されていた。

「20の重要心理状態」に対応する「感情の救急箱」は、今も16ポンド(約2500円)で販売されている。

こうした品目、特に心の健康問題を商品と関連付けた「無神経さ」は、非難の的になっている。

「冗談としての扱い」

芸術運動「スタッキズム」共同創始者のチャールズ・トムソン氏は15日、CNNの取材にこう語った。「今回のケースは些細(ささい)なように見えて明らかに、現代芸術の世界に影響を与えた冷笑主義と商業主義の実例だ。心の健康と心の病気が冗談として――そうではないのに――、あるいはノベルティーとして扱われている」

こうした「無神経な」ギフト販売は、「人々が芸術における尊厳を犠牲にして賢さやトレンディーさを求める」現在の芸術界の姿勢を反映しているとトムソン氏は言う。

スタッキズムは「急進的な芸術運動」を自称する芸術運動として1999年に創設され、「アイデアをもつ現代の具象絵画」に取り組んでいる。

今回の出来事は、精神疾患や心の健康問題に対する社会の現在の姿勢について「多くを物語る」とトムソン氏は指摘、「私たちは今もこれを取り立てて真剣に受け止めていない」と言い添えた。

美術評論家のデービッド・リー氏は、批判的芸術誌を自称する「ジャックドー」の発行人。同氏はメール・オン・サンデー紙の取材に対し、「これが宣伝担当の誰かが仕事帰りのパブで試した悪趣味なユーモアでないとはとても思えない」と語った。

同氏はメキシコの画家フリーダ・カーロを引き合いに出し、カーロが壊疽(えそ)で失った片脚にまつわる土産物の販売が適切だと同美術館は考えるだろうかと問いかけた。

「何といってもこれは、西欧とはいわないまでも、英国の美術史の中心的存在であるはずのコートールド美術館だ。例えば彼らはフリーダ・カーロ展で義足の形の鉛筆を売ろうとするだろうか」(リー氏)

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