OPINION

生まれたのは中国の再教育キャンプ、歴史は繰り返している

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赤ん坊のころの筆者。中国の「再教育キャンプ」を母と出てすぐの1971年春に撮影/courtesy Nury Turkel

赤ん坊のころの筆者。中国の「再教育キャンプ」を母と出てすぐの1971年春に撮影/courtesy Nury Turkel

(CNN) 私は中国の再教育キャンプで生まれた。母が収容されていたその施設は、新疆ウイグル自治区にあった。ウイグルの多くが、東トルキスタンと呼ぶ地域だ。人生の大半の年月、私は母とともに味わった幼少期の身の毛もよだつ体験を忘れようと努めてきた。ところが現状は、そうした過去が繰り返されているように思える。それもすさまじい勢いで。

私が生まれた当時、ウイグル自治区は中国の他の地域と同様、毛沢東の文化大革命の真っただ中にあった。全体主義の熱狂が吹き荒れていた時代だ。共産主義者として適性がないとみなされた者はほぼ全員が暴行を受け、投獄され、あるいは殺害された。信仰を持つ少数民族は特に狙われた。

ヌリー・ターケル氏/Courtesy Oslo Freedom Forum
ヌリー・ターケル氏/Courtesy Oslo Freedom

紅衛兵と呼ばれる毛沢東の熱狂的な支持者が古くからのウイグルの土地にやってきて、専制的な体制による野蛮な政策を押し付けた。紅衛兵は聖典を燃やし、モスク(イスラム教礼拝所)を破壊し、ウイグル語の書物を禁じた。そして母を含む数百万人のウイグルに再教育キャンプ行きを命じ、毛沢東思想を植え付けた。過酷な労働を通じた「改造」も行った。

専制的な手法による大規模な再教育は文化大革命の終焉(しゅうえん)以降、鳴りを潜めたが、強制労働のプログラムは依然として人権侵害の懸念を中国に残していた。その後の数十年にわたる経済改革にもかかわらず、状況は改善しなかった。

あの当時から半世紀余りが経過した現在、中国は熱意も新たにウイグルを標的にしている。米国防総省によると、中国が収容所に拘束したウイグルの人数は最大300万人に上る可能性がある。一方、衛星画像に基づく分析として、CNNは中国が伝統的なウイグルの共同墓地を複数破壊したと報じた。さらに複数のウイグル女性の証言によれば、広範囲にわたる強制不妊プログラムも導入されているという。

こうした体制の下で生きる現実を過去に経験し、今は恐怖に駆られながら上記のような残虐行為が我がウイグルの兄弟、姉妹に襲い掛かるのを目の当たりにしている。そんな私にとって理解するのは難しいが、一体どうすれば西側諸国の関係者は重要な話し合いなり取り組みなりを、あのような体制との間で進めて行くことができるのだろうか。

中国政府がウイグルに対してジェノサイド(集団殺害)を行おうとしているとの複数の報道を国際社会が無視するとしたら、彼らにとってわが民族の命というものは何と軽いのだろう。民主主義国と非政府組織(NGO)はどちらも、これまでよりはるかに多くの行動を起こし、苦しむウイグルを支えなければならない。たとえ中国政府からの反発を買うのが避けられないとしてもだ。

1995年に政治的自由と大学での教育を求めて中国を後にしてからというもの、私は自らに課した使命として、ウイグルにもたらされる恐怖に対し声を上げ続けてきた。その結果、重い代償を支払うことも厭(いと)わなかった。母と父には17年以上会っていない。中国当局は高齢で病を患った両親を出国させず、米国籍を取得した子や孫たちとの再会を阻んでいる。両親にはっきりした理由は伝えられていないが、私が中国政府を批判しているためとみてまず間違いないだろう。

2004年5月、法科大学院の学位授与式で両親と/courtesy Nury Turkel
2004年5月、法科大学院の学位授与式で両親と/courtesy Nury Turkel

弁護士、人権活動家、そして現在は米国際宗教自由委員会(USCIRF)の副委員長として、私は中国並びに全世界における人権と宗教の自由の擁護を長年訴えてきた。そのような立場から、ウイグル自治区で行われている残虐行為への認識の高まりには大変な進展が見られた。ただ何らかの有意義な効果をもたらすためには、世界の主導的な民主主義国がより大胆な戦略を詰め、中国の痛いところを真っ正面から突く必要がある。具体的には輸入禁止と戦略的投資を武器にする。

恐ろしい話だが、西側諸国の利用する製品の多くは、強制収容されたウイグルの人々が中国で作っているものだ。複数の報道によれば、ウイグルの強制労働は世界経済に大きく寄与している。とりわけ太陽光パネルの製造と綿花栽培の産業で果たす役割は大きい。自由な国際秩序の中に、強制労働の入り込む余地などは認められない。

米上院はこの問題で重要な一歩を踏み出し、ウイグル強制労働防止法案を可決。ウイグル産製品の広範囲にわたる輸入禁止に道筋をつけた。同法案の旧版を2020年に可決した下院も、迅速にこれを通さなくてはならない。そうすればバイデン大統領の署名によって法律として成立する。

我々と連携する欧州諸国もまた中国製品にとっての巨大市場であり、上記の流れに続かなくてはならない。米国は同盟国に足並みをそろえるよう促し、このような邪悪な慣行を一掃するべきだ。欧州連合(EU)は現在、適正な調査の手順を策定し、EU域内のサプライチェーン(供給網)における人権侵害に対応しているが、まだ強力なメッセージを発するには至っていない。今後、ウイグルの強制労働で作られた製品については、広範囲での輸入禁止を導入すると明言する必要がある。

欧州はナチズム、ファシズム、共産主義のもたらす極限の恐怖に耐えてきた。だからこそ、ここで行動を起こさなければどんな結果が待っているか理解できるはずだ。今対峙(たいじ)している体制は、少数の集団を根絶やしにしようとしている。EUがあらゆる信頼を勝ち取り、道徳的な指導者となるためには、新彊産製品の輸入禁止が必須だ。

何と言ってもそのような禁止措置は、すでに発効している既存の制裁の多くからさらに踏み込んだ内容であり、大きな効果が期待できる。中国政府によるウイグルの母国での凶悪犯罪が軽減する見通しも立つ。米国による一部の制裁はすでに効果を証明し、中国共産党指導部が最も気にする経済的利益と世間的な体面の2つを徐々に失わせつつある。

綿、トマトといった農産物の輸入禁止を受け、ファッションや食品業界のサプライチェーンは寸断された。またこうした制裁の裏にある強制措置で痛手を被った米国企業は中国で事業を行うリスクについて認識せざるを得ず、一方では米国での行政上、法律上、そして企業の評判に関するリスクにも直面している。加えて制裁の行使を通じて中国を公然と名指ししたことは、同国政府に対する強力なメッセージとなった。人権侵害の加害者が、その名を明かされないままでいるなどということはあってはならない。

とはいえ、こうした禁止措置に踏み切る国々にリスクが全くないわけではない。イタリアは新疆産製品の世界有数の輸入国だが、そのような国にとって新疆とのつながりを断ち切るのは、たとえその意思があるとしても難しいだろう。だからこそ重要なのは、米国のような経済大国や他の民主主義国が投資を行い、中国の強制労働がもたらす製品に代わるものを生み出すことだ。それによって各国は、一段と容易にサプライチェーンを多様化できる。

今年6月、米上院は米国イノベーション競争法を可決した。同法は2500億ドルの資金を充てて米国の科学研究や設計、半導体製造をテコ入れするもの。米国並びに連携する民主主義国は類似の立法を検討し、製造業を拡充するべきだ。現在に至るまでそうした製品は、新彊で強制労働を行う企業が生産するのが支配的だった。

トランプ、バイデン両政権は、中国によるウイグルへの行為をジェノサイドと分類した。カナダ、英国、オランダ、リトアニアの議会もこれに同意している。国連のジェノサイド条約の調印国は、ジェノサイドが起きたときこれに歯止めをかけ、加害者を処罰する義務を負う。ただ依然としてやるべきことがあまりにも多いため、打ち続く新疆の恐怖に取り組む段階には今なお至っていない。

これは自由な国際秩序の法的、道徳的核心にかかわる話だ。輸入禁止と国内投資の二重戦略は万能薬でこそないかもしれないが、間違いなく有意義な手段であり、方向性は正しい。生涯にわたり中国による人権侵害を目の当たりにした後で、そうした動きは少なくともかすかな希望の光を私に与えてくれる。ウイグルの人々の命が、国際社会にとって単なる決まり文句以上に重要なものであることを願う。

ヌリー・ターケル氏は米ハドソン研究所の上級研究員で米国際宗教自由委員会(USCIRF)の副委員長。非営利団体リニュー・デモクラシー・イニシアチブ(RDI)が進める「自由の最前線プロジェクト」の研究員も務める。記事の内容は同氏個人の見解です。

※編集部注:中国政府は、強制労働や強制不妊といったウイグルや他のチュルク語系民族に対する犯罪行為のあらゆる申し立てを繰り返し否定している。ウイグルの人々には「職業訓練センター」での教育を提供し、過激思想からの脱却を支援していると主張。いわゆるテロリズムと戦うための取り組みだと強調する。

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