OPINION

パレスチナ人にイスラエル人と同等の安全、平等、祖国への権利を

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ガザ地区でイスラエル軍による空爆の被害を確認するパレスチナ人の人々/Mahmud Hams/AFP/Getty Images

ガザ地区でイスラエル軍による空爆の被害を確認するパレスチナ人の人々/Mahmud Hams/AFP/Getty Images

(CNN) 勝者のいない戦闘が現在、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの間で繰り広げられている。双方で人命が失われている(数に偏りはあるが)ことに心が痛む。16日夜の時点で、パレスチナ側の死者は197人。このうち15日に死亡した子ども8人は、住居としていたガザの難民キャンプがイスラエル軍の空爆で破壊され、犠牲になった。イスラエル側は、ハマスの発射したロケット弾により、5歳の男の子1人を含む少なくとも10人が死亡している。

ディーン・オベイダラー氏
ディーン・オベイダラー氏

しかし歴史を手掛かりとするなら、両者が停戦にこぎつけた後、対立は徐々に報道の見出しから消えていき、世界は平常に戻るだろう。そしてパレスチナ人はほとんど忘れ去られる。その繰り返しだ。公正かつ永続的な中東和平を切望する人々にとって、今回は流れを変える必要がある。世界は、とりわけバイデン政権は、目をそらすことなくパレスチナ問題に取り組まなくてはならない。2021年になっても、パレスチナのキリスト教徒とイスラム教徒にはいまだ祖国と呼べる場所がない。パレスチナ人の安全や平等についても同様だ。

パレスチナとイスラエルの紛争は、物心ついた時から筆者の人生の一部であり続けている。パレスチナ人である筆者の父は、1930年に当時のパレスチナ(48年まで英国の委任統治領だったパレスチナ)で生まれた。現在のヨルダン川西岸地区に当たる地域だ。筆者が子どもだった70年代後半、父はイスラエルとの対立についてよく語ってくれた。政治にまつわる議論というよりも、筆者の身内をはじめとするパレスチナ人がイスラエル軍占領下でどのような暮らしをしているかという内容が中心だった。移動の自由に対する制限。無数に存在するイスラエル軍の検問所で起こる、個人の自己決定への拒絶。イスラエル人入植者に土地を奪われた祖母。そうした話をいくつも聞かせてもらった。

その後の数十年間、選挙で選ばれた米国の公職者がパレスチナ人の人権を最優先に掲げることは、党派にかかわらずほとんどなかった。幸い、バーニー・サンダース上院議員が2016年の大統領選で状況を変えてくれた。同議員は「パレスチナの人々への処遇は敬意と尊厳を伴うものでなくてはならない」と宣言。イスラエルの生存権を擁護しつつも、米国には対立における「一方への肩入れ」をやめるよう呼び掛けた。

10年前には考えられないことだが、先週は多様なメンバーからなる民主党の下院議員25人がバイデン政権に向け、超国家主義的なユダヤ人グループによるパレスチナ人排除の取り組みを非難するよう要求した。このグループは東エルサレムに住むパレスチナ人に立ち退きを迫っている。上記の下院議員らにはマリー・ニューマン氏、アヤンナ・プレスリー氏、マーク・ポカーン氏、ジュディ・チュー氏らが名を連ねた。

そして13日には、民主党下院議員の一団が議場に集まり、パレスチナ人の人権に対する支持を表明した。アレクサンドリア・オカシオコルテス議員は、バイデン大統領がイスラエルの自衛権を認めていることを念頭に置きつつ「パレスチナ人にだって生き延びる権利があるのではないか」と問いかけ、「そうであるなら、我々にはそのことについて負うべき責任がある」と主張した。

プレスリー議員は熱のこもった演説で、人種差別への抗議運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」とパレスチナ人の人権問題を関連付けた後、「我々はこのまま何もせず共犯者のように立ち尽くすわけにはいかない。パレスチナ人に対する占領と抑圧が続くのを許すことはできない」と宣言した。

このほかパレスチナ系米国人のラシダ・タリーブ議員も演説に加わり、「パレスチナ人はどこにも行かない」との言葉で自らの考えを総括してみせた。

タリーブ氏は正しい。パレスチナ中央統計局(PCBS)によると、現在ヨルダン川西岸地区には300万人超、ガザ地区には210万人のパレスチナ人がいる。イスラエル人権協会(ACRI)は、エルサレムに約35万8000人のパレスチナ人がいるとしている。

ただ現実には、イスラエル人の方もどこかへ行くわけではない。イスラエルはその総人口900万人以上のうち、ユダヤ人が700万人近くを占める。プレスリー氏が13日にいみじくも述べたように、「イスラエル人とパレスチナ人は一蓮托生(いちれんたくしょう)」だ。

しかし、両者の未来がつながっているのだとしても、それぞれの人々が平等なわけではない。資源や政治力、苦難の度合いで双方には差がある。たとえばガザでは95%の人々が清潔な水を入手できず、住民の80%は国際的な援助に頼らなくては生きていけない。また国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、最近公開した213ページの報告書の中で、イスラエル政府が「アパルトヘイト(人種隔離)」的な治安維持システムを採用していると非難。イスラエルと占領地の両方でイスラエル人がパレスチナ人より好ましい扱いを受けているとした。(今年1月にはイスラエルの人権団体も同様の糾弾を行っていた)

忌憚(きたん)のないところを言えば、現状での広範な和平協定はリーダーシップの観点からほとんど不可能に思える。イスラエルの当局者は、ハマスの誰と対話ができるのか? 逆の立場では、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人にとって誰が和平のパートナーになり得るのか? 現イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフ氏は、自分が目を光らせている間はパレスチナ国家の樹立はあり得ないと明言し、ヨルダン川西岸地区の広範な地域を併合すると約束している人物だ。

パレスチナ人のことを忘れずにいるというのは、単に和平を進める行為にとどまらない。それは米国がパレスチナ人の人権擁護の立場をとるということだ。例を挙げれば、問題はパレスチナ人が迫られている住居からの立ち退きや、「広範にわたって何十年も続く移動の自由の制限、基本的人権への規制」だけではない。ヨルダン川西岸地区やガザ地区に住むパレスチナ人に対するこのような扱いはHRWが詳細を明らかにしているが、同時に警戒すべきはイスラエル人の過激派の台頭だ。彼らは街頭に繰り出し、威嚇するような態度で「アラブ人に死を」とうたっている。

停戦にこぎつけたなら、バイデン大統領はパレスチナ人がイスラエル人と同等の安全、平等、祖国の地を手にしてしかるべきだと明言しなくてはならない。パレスチナ人の人間性を否定する日々には、終止符を打たなくてはならない。そして極めて重要なことだが、バイデン氏は自らの意思として以下の内容を宣言するべきだ。つまり米国がイスラエル政府に対し毎年行っている38億ドル(約4140億円)規模の支援を、上記の目標達成に活用するつもりだと述べるのである。達成に向けては資金面だけでなく、国際社会を主導する役割も担うものとする。こうした公平な手法を足掛かりとし、永続的かつ公正な和平協定への基盤が整うのを期待したい。

ディーン・オベイダラー氏は元弁護士で、現在は衛星ラジオ「シリウスXM」の番組司会者やニュースサイト「デイリー・ビースト」のコラムニストを務める。記事の内容は同氏個人の見解です。

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