氷河の保全助ける驚きの自然現象、温暖化の影響抑える効果 ヒマラヤで観測

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ヒマラヤにある国際観測所の観測データから、気候変動の影響を遅らせる可能性のある現象が発見された
/Franco Salerno/The Institute of Science and Technology Austria

ヒマラヤにある国際観測所の観測データから、気候変動の影響を遅らせる可能性のある現象が発見された /Franco Salerno/The Institute of Science and Technology Austria

(CNN) 世界最高峰が連なるヒマラヤ山脈の氷河は急速に融解が進んでいる。しかし、気候変動の影響を抑えて氷河の保全を助ける驚きの自然現象が起きていたという研究結果がこのほど発表された。

4日の科学誌ネイチャー・ジオサイエンスに発表された論文によれば、温暖化が進んで一定の標高の氷河に到達すると、冷たい強風が斜面を吹き降りる驚きの現象が観測された。

論文を発表したオーストリア科学技術研究所(ISTA)の研究者によれば、ヒマラヤ山脈で気温が上昇すると、氷河の上空にある大気と氷河に接する表層部の大気との温度差が大きくなる。それによって氷河の表面で乱流熱交換が増え、表面の大気の冷却効果が強まる。

地球温暖化によって起こる大気冷却の仕組みを表した図/Salerno/Guyennon/Pellicciotti/Nature Geoscience
地球温暖化によって起こる大気冷却の仕組みを表した図/Salerno/Guyennon/Pellicciotti/Nature Geoscience

冷たく乾燥した表面大気は、温度が下がって密度が濃くなると下降する。この大気が斜面を下って峡谷に流れ込み、低い場所にある氷河や周辺の生態系の冷却効果をもたらす。

ヒマラヤ山脈の氷雪は12の河川に流れ込み、16カ国で約20億人の水供給源となっている。この地域は今後何十年にもわたって気温の上昇が予想されることから、ヒマラヤ山脈の氷河が自らを保全するこの冷却効果が持続するかどうかを見極める必要がある。

エベレストにある観測所では約30年にわたり気象データを1時間ごとに記録している/Franco Salerno/The Institute of Science and Technology Austria
エベレストにある観測所では約30年にわたり気象データを1時間ごとに記録している/Franco Salerno/The Institute of Science and Technology Austria

今年6月の報告によると、2010年代にヒマラヤ山脈の氷河が融解したペースは、その前の10年に比べて65%加速していた。

ISTAの研究者によると、今回ヒマラヤ山脈で観測された氷河の冷却現象は、条件が整えば世界各地の氷河で発生している可能性もある。ただ、「もっと大きな気候変動の影響を克服して氷河を完全に保つためには、それでも不十分かもしれない」と別の研究者は指摘している。

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