海面上昇したら歴代COP開催都市はどうなる? ビジュアル比較
(CNN) アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が開かれる中、ドバイを含む歴代の会議開催都市が海面上昇時にどのような風景に変わるのかを示す新たな分析が登場した。
地球温暖化の汚染が進み、厳しい干ばつや犠牲者の出る洪水、氷河の急速な融解が世界各地で発生している。科学者によれば、気温の上昇につれ、世界の海面は数十年にわたり着実に上昇していくという。
非営利組織(NPO)「クライメート・セントラル」は急速な温暖化を止められない場合のリスクをビジュアル化した。最近の国連の報告書では、世界は現在、気温が最大2.9度上昇する見通しとなっている。
査読済みの海面上昇予測とクライメート・セントラルのモデルによる各地域での上昇を利用して得られた結果からは、地球が産業革命前より3度上昇して海面上昇した場合の未来と現在の大きく異なる姿が描き出された。
今回のCOP28の開催地ドバイの超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」周辺、1.5度の温暖化の場合/Climate Central
温暖化が3度に達した場合/Climate Central
COP20を開催したペルー首都リマにあるレアル・フェリペ要塞、1.5度の温暖化の場合/Climate Central
温暖化が3度に達した場合/Climate Central
クライメート・セントラルの首席科学者で最高経営責任者(CEO)のベンジャミン・ストラウス氏は「COP28での決定は、ドバイを含む地球上の沿岸都市の長期的な未来を形成する」と語る。
気候学者によると、世界の気温は現在、産業革命前より約1.2度高く、数年で1.5度を突破する見通し。科学者は1.5度を超えると人類や生態系が適応するのが厳しくなると警告する。
2015年のパリで開かれたCOP21では、2度より十分低く、1.5度に押さえる努力をすることを掲げる「パリ協定」が190以上の国・地域によって結ばれた。
COP17を開催した南アフリカ・ダーバンの市庁舎付近、1.5度の温暖化の場合/Climate Central
温暖化が3度に達した場合/Climate Central
世界が現在向かう最大2.9度上昇の経路では、沿岸の町、海抜の低い国、小さな島嶼(とうしょ)国では人間が居住することができなくなる。
こうした場所が生き残れるかは「1.5度に気温上昇をとどめるための激しさと急速さを伴う炭素汚染の削減に、政府と産業界の首脳が合意できるかにかかっている」とストラウス氏は語る。
先月30日に世界気象機関(WMO)が発表した報告書によると、2023年は過去最高に暑い年となるのが確定的だ。6~10月の各月は世界の月間気温の記録を大幅に更新。海水温も記録的高さだ。
COP8を開催したインド。写真は開催都市である内陸のニューデリーではなく、商都ムンバイの様子。1.5度の温暖化の場合/Climate Central
温暖化が3度に達した場合/Climate Central
こうした気温の上昇で、氷河や氷床が警戒すべきペースで融解を始め、最も遠く離れた南極でも前例のない融解の事象が起きている。一部の大型氷河の融解は避けられない可能性があり、世界の海面上昇に大きな影響を与える可能性がある。
現在、地球温暖化汚染が劇的に減少したとしても、約3億8500万人が高潮時に浸水被害の起きる地域に暮らす。最近の研究によると、もし気温上昇が1.5度に収まった場合は5億1000万人、もし3度に到達したら8億人余りが海面上昇により浸水被害などの影響を受ける。
こうしたシナリオが現実となるのは数百年先かもしれないが、科学者はゼロコンマの気温上昇により結果が悪化すると警告する。
COP15を開催したデンマーク・コペンハーゲンのクリスチャンスボー城、1.5度の温暖化の場合/Climate Central
温暖化が3度に達した場合/Climate Central
COP28では、都市が海面下に沈む将来の可能性が高まることを避けるため、地球温暖化につながる化石燃料の削減に向けて議論が進む。今年の会議は各国の「記録表」をもとに交渉が進む初の機会となる。記録表は各国の目標に向けた進捗(しんちょく)状況を示すとともに、温暖化対策を行う猶予が「急速にせばまっている」現実も示すことになる。