皇帝ネロの劇場を発掘、文献で言及もこれまで未発見 伊ローマ
ローマ(CNN) 紀元1世紀のローマ皇帝ネロが所有していた私設劇場がイタリアの首都ローマで発掘され、専門家から「類いまれな」発見と呼ぶ声が上がっている。発見場所はバチカン市国からわずか数メートルの場所だった。
ローマ市の特別監督官であるダニエラ・ポッロ氏が発表した。ここはネロが詩や音楽の試演を行っていた場所で、現在のサンピエトロ大聖堂の近くに位置する。
劇場の存在については大プリニウスによって書かれたローマ時代の文献で言及されているが、これまで場所が確認されておらず、歴史家を困惑させていた。
ネロは第5代ローマ皇帝として紀元54年から68年まで統治した人物。指導者としては不人気であり、贅沢三昧(ぜいたくざんまい)と放蕩(ほうとう)で有名になった。
遺跡には大理石の柱や金箔(きんぱく)による装飾、ネロの演劇で使われた衣装や舞台背景の遺物を収めた保管部屋などが残されている。
二つの顔を持つヤヌスの像の頭部なども発見された/Andrew Medichini/AP
今回の発掘は、コンチリアツィオーネ通りに面した建築物「パラッツォ・デラ・ローベレ」の改修の一環として実施された。
本プロジェクトでは、ルネサンス時代の建物である「パラッツォ・デラ・ローベレ」をフォーシーズンズのホテルに改修する計画だ。ホテルは数百万人がローマを訪れると見込まれる聖年(ジュビリー)の祝賀行事に備え、2025年オープンを予定している。
特別監督官のポッロ氏は声明で今回の「類いまれな」発見について、ネロの治世から15世紀にかけての時代が垣間見える希少な機会になると指摘した。
これまでの発掘ではネロの治世から15世紀までの時代の遺物は杯7点しか見つかっていなかった。ポッロ氏によると、今回の発掘でさらに7点の杯が見つかったという。
発掘現場で作業する考古学者/Andrew Medichini/AP
20年に始まった発掘作業を統括する考古学者、マルツィア・ディ・メント氏は「考古学者であれば誰もが夢見るような素晴らしい発掘」「建物が密集する歴史豊かな地域で発掘を行えるのは貴重な機会だ」と評している。
ディメント氏によれば、すべての遺物の調査や年代特定を行うには何年もかかる見通しだという。